32 ジークとシーグ
お読み下さりありがとうございます!
身に覚えのない熱い歓迎とやらを引き合いに出されても困る。格闘系の挨拶が好きなの?
困惑していると隣王子が言葉を重ねた。
「こんなに官能的な香りでもてなすなんて我が国に一体何を要求したいんだ?」
「あれはただの事故だ。チハヤを外交に差し出すつもりはない。」
「事故?では神が与えたもうた幸運なのか?やはり運命の番か?」
話が見えないんですけどー。
「何の話をしてるの?」
「ん?つまりだな。チハヤがこうやっただろう?」
うん。こういう風に隣王子の顔を脚で挟んだよ。
「これがとても幸せなんだ。」
「何で!?」
「チハヤの匂いが1番強く感じられる所だからね。」
あぁ、フランケンシュタイナーの別名は「幸せ投げ」だったっけ…。
って!どさくさに紛れて何させるの!!
説明しながらちゃっかりと太ももに顔を挟ませてくんかくんかされてる。そんな所の匂いを嗅ぐなぁ!!!
「バカ王子!」
耳をぎゅうっと引っ張ってやるといてててて、と言ってボクを押さえつける力が緩んだ。すかさずオロフに救出される。
「オロフぅ、王子が変な事するー!」
「殿下、恐れながら申し上げます。チハヤ様をあまりいじめないで下さい。」
「いじめてなどいない。可愛がってるだけだ。」
「それ意味同じじゃない!?」
「チハヤ…もう一度その匂いを嗅がせてくれ…」
「イヤです!!」
カオス…
なんでこう簡単に色々バレるんだろう?
人間だってバレたらどうなっちゃうのかなぁ?
「オロフ…かのこちゃん、部屋に帰りたい…」
何だか悲しくなって来ちゃった…
「待て!チハヤの種族を教えてくれ!魔族でもエルフでもドワーフでもない…ましてや獣人でもないだろう。」
「……………猿の獣人です。」
「嘘をつけ!!南国よりやって来た猿の獣人と謁見した事があるが匂いが全然違う!」
「だったら何だと?」
「…ニンゲンだろう。」
うわぁぁぁぁぁん!!
バレてるぅぅぅぅ!
「も、もし! にっ人間だったらどうするの!?」
「ニンゲンだったら!!
………可愛がる?
………甘やかす?」
「考えてないの?」
「…ニンゲンの存在なんて妄想の上でしかないと思ってたからなぁ。」
悪い人ではないようだ。
「ところでその者は護衛か?」
「そうだよ。可愛いでしょ。」
「全く可愛くない。」
「可愛いもん!」
「もっと獣性の薄い者がいるだろう!」
「そんなの可愛くない!」
「シーグ、チハヤは獣性が濃い者を好むんだ。」
「なんだと!それでは王族なんて論外じゃないか!」
「だが、馴れれば徐々に懐いてくれるんだ。」
「…懐いてないし。」
「そうか?」
きらきらエフェクト付きの笑顔で微笑まれたけど、それは全然効果ないよ。
「チハヤ、頼む。この国にいる間だけでも良い、共に過ごしてくれないか?」
「えー?王子達はもふもふが足りないからなぁ。」
「これから行く視察は獣性が濃い者達の仕事場だぞ?」
「行く!」
ぜったい行く!
「王子!行きたい!行って良いでしょ!?」
王子は少し困った顔で考えた後、両手を広げておいでのポーズをする。仕方ないなぁ。
オロフの首から手を放し、王子に抱っこ。ロイヤルスマイルが台無しー。
わざとらしく危険だとか心配だとか言って引き延ばすので、けも耳に唇を寄せてため息を添えて囁いた。
「いっしょに、いきたい…」
ビクーンッ!となってけも耳と尻尾がぶわってなった。よしよし、尻尾がそわそわしてるぞ。えっちっぽい言い回しは有効らしい。
「こっ!子供がなんて事を!!」
隣で聞いてた隣王子がおかしな事を言う。内容は全く普通だし、むしろ子供がよく言うセリフだ。ただ少しえっちっぽい言い方をしただけで。
「ボク、変な事言った?」
とぼけて見せると王子は楽しそうにニヤニヤしながら何もおかしな事は言ってないな、と笑った。
…隣王子、意外と純情説。
王族なんだから色々経験積まされているんじゃないのかな?
おもしろ〜い!
もふもふワンダーランドに行ける事になったので王子達と一緒の馬車に乗る。6人乗りの馬車なので3人ずつ並んで座れるんだけど、乗る人は3人。僕を挟んで奥が隣王子で手前がうちの王子。進行方向に向かって座った方が酔わないよね!
「私の事はシーグと呼んでくれ。」
「シーグ殿下?」
「呼び捨てで構わない!」
「ダメでしょ!!」
「私もジーク、と呼び捨てにしてくれ。」
「ボクが何様!?ってなっちゃうじゃん!」
「特別扱いができて良いじゃないか。妖精や精霊のように国の理から外れるだけだ。」
…そう言われると、そんな立場にすごく憧れてしまう。
でも勝手に決めていいの?
ニンゲンに関する法律は無い!条約も無い!!
だそうです。ラッキー!王様の許可もらってね!
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