第3話 ギャラクシー・ヴィジョン・ネットワーク
わーい。はじめてのブックマークをもらったぁ。初読者。うれしいな。
「それで、コンペはシャンパリオンさんが勝ったって事ですね」
「まぁ、ここにいるのはそういうこと。しかし、勝ったと言うか」
「何か、問題でも?」
「そもそも、コンペになっていない気がするんだけどね」
コンドロワイエール司令官の机には、ふたつのチップ。
僕の攻略の作戦案を収めたチップ。
三日三晩かけた力作。
フレール参謀長の作戦のチップ。
ふたつのチップが置いてある。
司令官がまず見たのは、僕のチップ。
あら方見たところで、宣言をする。
「今回の攻略作戦は、シャンパリオン案を採用する!」
「ひどいと言えばひどい。参謀長の作戦案は、見てもいない」
「まぁ・・・参謀長の作戦案は見なくても分る、ってことじゃないかな」
「まぁ、そんなこんなで、僕の作戦に付き合う形になってしまい、ご迷惑をおかけします」
「なになに、私も楽しみにしているんですよ。噂の天才がどんな戦果をあげるか」
今、話している場所は、第17戦隊主導艦、巡航艦アルマダの艦長室。
シンプルな作りで、広さは12畳ほど。
ただひとつ変わっているな、思うはバーカウンターが付いていること。
そのバーカウンターで、話しているのが、シャンパリオンと、
艦長であり、第17戦隊司令を兼任しているマイク・ディルマン。
年齢は50歳前後、歴戦の勇士とはこんな感じか、という風貌をしている。
今回のエルナト星系攻略は、第20戦団の第17戦隊が担当する。
第17戦隊は、巡航艦戦隊で、
巡航艦8隻と護衛艦や哨戒艦等の補助艦24隻から構成される。
想定戦力においては、星系防衛部隊とほぼ同じ。
攻星エミュレータならば、レート1:1で、勝率は50%というところか。
「進攻方向に動力源探知!」
「なに!敵艦か?」
「小さいです。全長100メートル程度」
「なんだ、それは。タイプは分らないのか?」
「えーと、そうですね。ヴィジョン中継船かと・・・」
「なんで、こんな所にヴィジョン中継船なんて」
あ、本当にきたんだ。
今回の作戦、いろんなテクニックを使っている。
その中で、ギャラクシー・ヴィジョン・ネットワークは、
大きな要素として盛り込まれている。
銀河いたるところで取材をして情報を流し続けている報道中心の放送局が、
ギャラクシー・ヴィジョン・ネットワーク、略してGVN。
特に戦場の報道は得意で、平気で戦場に中継船を派遣することで有名。
「だいたい、こんなローカルな戦場、取材してもつまらないだろう?」
「すいません。これも、作戦の一部でして」
「そうなのか?じゃあ、ネットワークに我々の姿、見せつけてやりましょうか」
「お願いします」
「全艦、最大加速。進路、中継船の前方、1宇宙キロ」
おいおい、1宇宙キロって、下手したら衝突するかもしれないじゃないか!
まぁ、戦場報道の連中だから、大丈夫か。
戦隊は、移動フォーメーションを組んだまま、中継船に接近する。
ディルマン艦長は、GVNの中継ヴィジョンを映した。
「ごらんください。こちらに向かってきているのが、
第17戦隊主導艦アルマダ、その真っ赤な艦体から『赤い彗星』と呼ばれています」
ヴィジョンには、私たちの乗艦、アルマダが映し出されている。
「なかなか、ヴィジョン映えしているじゃないか」
「すみませんね。せっかくの漆黒カラーを変えてしまって」
「気にするなよ。この艦が漆黒キャヴァリィに属していたのは半世紀も前だ。
もちろん、私は乗っていなかったしな」
今回の作戦で、全ての巡航艦を深紅に塗り替えることを提案した。
残念ながら、設備と準備時間の関係で、アルマダだけしか赤くできなかった。
正直を言うと、今回の作戦。
こんなややこしいことをする必要はない。
普通に攻略すればいいだけのこと。
ただ、とことん複雑な作戦にしてしまったのは、
フレール参謀長との言い争い。
「天空の白龍さんなら、こんな攻星作戦簡単でしょう」
「エミュと実戦は違います」
「またまたぁ~。本物の天空の白龍さんなら、
『こんな攻星なんて3日で出来る』と宣言するよなぁ~」
「・・・・」
もちろん、天空の白龍は、攻星エミュの僕のバトルネーム。
フレール参謀長は、僕に負けたことがよっぽど悔しいらしい。
なにかにつけて、突っかかってくる。
本当に大人げない人だ。
もっとも、大人げないのは僕も一緒だけどね。
「3日もかかるはずはないでしょう。1日で終わらせますよ」
言ってしまった。
売り言葉に買い言葉。
ついつい、『1日攻星』宣言をしてしまった。
これが、第20戦団の将兵に伝わってしまって。
立案した作戦の期間想定が1日になってしまった。
だから、裏技使いまくりの作戦になった。
その最初の裏技が、GVN。
たぶん、防衛隊も見ているはず。
予定どおりの心理効果を及ぼしてくれればいいんだけどね。
もっとも。
赤くしたのは、それだけじゃない。
そのことを考えていると、ついつい、目がカマボコになる。
悪巧み顔っていうのかな。
「あ、シャンパリオンさん。バッチが光ってますよ」
「あれ、なんだ、これ」
「それは、警告です。あなたの参謀バッチが、今あなたが考えていることが、
仕事に悪影響を及ぼすと判断されました」
うわっ、このバッチ、そんな機能があるのか。
参謀タレントギルドの人が、つけてくれたバッチ。
このバッチをつけているときは、参謀として権限が与えられると説明してくれた。
僕、個人にチューニングされて、他の人には付けられないバッチ。
これをつけた瞬間、僕は参謀候補生から正式に参謀になった。
しかしまぁ。人の頭の中までチェックするとは・・・油断がならないな。
「いよいよ、始まりますね。100万ギャレットの男がどんな戦いを見せてくれるか。
楽しみですね、もちろんGVNでは最後まで密着取材を敢行します」
「100万ギャレットの男ですか。すごいですね」
「最近、言われるんるだよね。100万ギャレット。そんなにすごい数字なのかな」
「個人株が100万ギャレットと言ったら、うちの戦団司令官クラスですからね。
参謀長は、半分でしょう」
「ひええっ。参謀長がつっかかってくる訳だ」
「あと10分で想定戦闘エリアに進攻します。第一級戦闘配備が発令されました」
いよいよ、第17戦隊の戦闘が始まります。




