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純平と坂本は菊地に誘われ3人だけの2次会をこじんまりとしたシガーバーで行っていた。
「いや参ったね。加藤さん。カクテル2杯であんなんなる?」
純平は苦笑いで言う。
「お酒だめなんだね。ネクタイでふんどし作った時にはどうしようかと思ったよ。」
菊地が笑いながら言うと二人もつられて笑う。
「色んなもんがはみ出してたよ。あいつおもしれーわ。」
坂本は葉巻をカットしながら言った。
「この3人で飲むなんて初めてだね。アキ君は、まぁ…。色々あるんだろ?」
菊地は丸くて大きな氷が一粒入ったグラスにI.W.ハーパーを注ぐ。
「まーねー。結構シビアな感じなんすよ。あの二人。まぁ真理ちゃんは何にも悪かないんだけど。うーん、でも誰が悪いってわけでもなくて…。」
前屈みで両肘を足に預けてる純平が頭をボリボリと掻きながら答える。
坂本はどっしりと深く革のソファに身を埋め、天を仰ぎながら口内に渡った煙の味を吟味する。
「乾杯。」
菊地がグラスを差し出すと二人もグラスを上げた。
「いやね、ほんとはアキ君にも居てほしかったんだけど、実は今後のリジンの事。皆には展望とか野望とか、何かほら、えー、将来的な事とか、どんなビジョンなのかなぁと思って。」
「君達はほら、人気とか売上とか地位とか名誉よりももっとほら、違う次元のバンドってゆーか。」
「正直言うとリジンは世界でも通用するバンドだと思ってる。君達の演奏技術と爆発力は世界でもトップクラス。いや、世界でも類い稀。私はそう思ってるんだが。」
「まぁ何が言いたいかっていうと、世界進出も視野に入れて今後どうかなって。その為なら私もね、出来る限りの協力をさせてほしいと思って。」
菊地は片手でグラスの氷をカタカタ転がしてる。
「ありがとうございます。菊地さんにそんな事言ってもらえると心強いです。」
純平は少しはにかんだ笑顔を浮かべる。
「菊地さんに言われっと説得力が違うな、やっぱ。世界なんてもんは元々視野に入ってたわけだし、アキも純平ももちろん俺もそのつもりでリジンを結成してる。日本のバンドもオーディエンスも確かに大事かもしんねーけど、正直眼中にねーのね。」
坂本が鋭い眼光で菊地に言う。
「アキがよく言うんですよ。言葉は国によって違うけど音は万国共通だって。世界中の人々が共通して共感できるものが、言葉の先にある圧倒的な音なんだって。」
菊地はリジンというバンドのポテンシャル、3人の向かうベクトル、そもそもの方向性が巷に溢れる数多のバンドとは一線を画している事を再認識して、ニヤリと笑んだ。
「でも今後の動き方は全てアキ次第です。リジンにおいては何事もアキの決断なんです。俺は基本的に菊地さんのお話には大賛成ですけど、こういった話はアキの居ない場ではナンセンスです。すいません。」
「うん。分かってる。ただ君達二人の意見も私は尊重したいからね。リジンはあくまでバンドだから。たった一人の意気込みだけで渡り合える程世界は甘くない。とりあえず二人の意向を知れて良かったよ。」
菊地は一気に酒を流し込む。
純平は携帯電話を取り出し電話をかけた。
「ちょっとアキに電話してみます。」
右手に携帯を持ち左手人差し指でトントンとテーブルを叩く。
「ダメだね。繋がるけど出ねーわ。」
一旦切ると今度は絵里香に電話をかけた。
「もしもし?絵里香?どうなってんの?」
純平は相づちを打ちながら静かに聞いている。
「で、アキは?」
「うん、うん、そうか。分かった。気を付けて。うん。また。」
純平は電話を切ると大きくため息をつく。
「なんかよく分かんないけど、あんまり思わしくないみたい。絵里香は真理ちゃん送ってこれから帰るみたいだけど、家着いてアキ居たらまた連絡くれるって。」
「そうかぁ。じゃぁ私達もこれ飲んだら帰ろうか。」
「えっ?もう帰んの?ダーツやってからにしようよ。」
坂本は葉巻を消しながら不満気に言う。
「純平、勝負しろよ!」
「あん?まぁいいけどよ。菊地さんにも時間あるだろ。」
菊地は微笑みながら首を横に振り
「私なら大丈夫。坂本君、私と勝負する?」
「あっ、マジで!やりましょうよ!」
二人は立ち上がると店員にダートを借りてゲームを始めた。
純平は葉巻に火を付けぼーっと考え事をしてる。
「世界かぁ。」
ぼそりと呟いた。




