第四話 コロ…コロコロ…
「いっつぅ…なんで俺コンクリの上で寝てるんだ?」
つい先程まで心肺停止状態だった入鹿は自分の血溜まりの中、何事もなかったかのように起き上がった。
「ん?なんだこの液体…」
ようやく作り直された体に感覚が慣れてきた入鹿は、自分の周りの真紅の液体に気が付く。
「え、血!?はっ、そういえばあの時…」
身体にまとわりつく液体が血液で、そしてそれが自分自身のものであることを察するのにはさほど時間を要しなかった。それに気付いた入鹿は反射的に立ち上がり、
そして同時に冷静になる。
「でも俺、なんで生きてるんだ?こんなに出血しているのに…」
入鹿の足元にあるのは誰がどう見ても出血多量で死んでいると判断するほどの大きな血溜まり。象などの大型動物でもない限り処置を行う前に死んでしまうほどの出血量だ。
ここまで出血したのになぜ自分は死んでいないのか。
なぜ自分はあの黒ずくめの奴に刺されたのか。
そしてなぜその傷はおろか痛みさえないのか。
入鹿がその多くの疑問点を考え、その理由を模索しようとしたその時、
ウィン
「何だ!?」
目の前に空中に浮く半透明の画面が現れた。
もとより多すぎる疑問によって頭を悩ませていた入鹿にさらに驚くようなことが起こっている。
だが入鹿が不思議に思っていたのはこのことではなかった。
「…ガチャ?」
画面に映っていたのは古びたガチャポン、中央部には「初心者ボーナス!」とでかでかと書かれており所々が錆びているが、背景はピンクや黄色のパステルカラーで彩られているというどこかミスマッチさを感じさせるものだ。
それが入鹿の目の前の空間に突如現れたのだった。
「初心者ボーナス…?まあ引いてみるか。」
入鹿は死ぬ前に新作ゲームがプレイできなかったことを悔やむほどのゲーム中毒を極めたような人間。
ガチャ画面が目の前に出てきた時の選択肢は
1、回す 2、無視する ではなく
1、回す 2、回してみる である。
ガシャン ゴロゴロ ゴロゴロ
いかにもな音を上げてハンドルが回る。
コロ…コロコロ…
三つのカプセルが排出口から、いや正確には画面から転がり出てくる。
カプセルは銀色が二つ、金色が一つと二種類のカプセルがあった。
「おお!ほんとに出てきたぞ!」
さっきの冷静さはどこへやら、空中に浮かぶ画面からカプセルが出てくるというこの超常現象を見て子供のように無邪気に喜ぶ入鹿。
「さてさて、まずは…これから開けるか!」
食べたいものは最後に食べる派の入鹿は、金のカプセルをポケットに入れ、最初に銀のカプセルに手をのばす。
「何が入ってるかな・・・」
パカッ
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「虎春ー!封筒来てるわよー!」
一階から母の声が飛んでくる。何やら自分宛ての封筒が来ているらしい。
ここは入鹿のカラオケ友達、虎春の家。虎春は二階の自室でまったりとポテチとゲームを堪能していた。
封筒?何か頼んだっけな…
ドタドタと階段を降りると、リビングの机の上には真っ白い封筒があり、血のように赤い蝋で封がされていた。
裏には「当選おめでとうございます」の文字。
虎春には応募した覚えはなかったが、まあ何かしらが当たったのだろうと封筒を開けると、一枚の紙が入っていた。
そこには蝋と同じくらいの赤い文字で大きく、こう書かれていた。
”初心者ボーナス!”




