第三話 死からの…脱出?
黒服の奴は一つ、ミスを犯していた。
それは、急ぐあまり拾ったカードの枚数を確認せずにその場を立ち去ってしまったこと。
ばらまかれたカードを拾い集めるだけの、なんの間違えようもない作業だったのだが、そのうちの一枚がちょうど血だまりに浸かって完全に見えなくなってしまっていた。
その一つの、たった一つのミスのせいで、この、”ゲーム”の結末が大きく変わってしまったのかもしれない。
〈カードを所持するプレイヤーの死亡が確認されました。〉
近くを通る車のタイヤとエンジンの音だけが聞こえる夜道に、合成音声のような声が響き渡る。
〈EXカード「死からの脱出」を消費し、プレイヤーの身体を再生成します。〉
声が止んだと思うと、闇と血だまりに溶け込んだ一枚のカードが、まるで月の光でも反射したかのように鈍く、しかし妙に存在感のある光を放ち始めた。
だがそんな光に対抗するかのように、夜の道路に耳障りとしか言いようのない雑音が鳴り始める。
ザザ…ザ…ザ…
Error発生…Error発生…
〈カード所有者がゲームプレイヤーではありません〉
再度合成音声のような声が響き渡る。だが今度の声は大量の雑音が混じっている。
〈カードの内容の書き換えを行います…完了まで3、2、1、、、〉
次こそは、とでもいう様にカードからまた、光が放たれる。
カードは相変わらず鈍く光を放っていたが、その色は空に輝く月を思わせる白から、何か恨みを感じるほどのどす黒い物に変わっていた。
〈書き換えが完了しました。もう一度カードを行使します。〉
〈EXカード「死からの逃避」を消費し、プレイヤーの身体を再生成します。〉
夜道は再度、静寂に包まれた。
その十分ほど後のことだった。
現実であり得ることはなく、禁忌であり、ほとんどの人類が望み、そして時と共に諦めてきた事象が、
そこに起きた。
道路の端で血にまみれて倒れていた男、入鹿が目を覚ます。
今、死者の蘇生が成功した。




