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最弱属性の俺、空気を圧縮したら一撃で最強になった~空気魔法から始まる異世界魔法革命~  作者: 百花繚乱


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第77話 空気の死んだ領域

通路の幅が、いつの間にか狭くなっていた。

天井も低い。圧迫感がある。だが、それ以上に気になるのは、呼吸の浅さだった。

吸えないわけではない。肺に空気は入る。だが、満たされる感覚が弱い。

「……なんか、息が重くないか」前衛がぼそりと言う。

その言葉に、無意識に自分の呼吸を意識する。

確かに浅い。一定のリズムで吸っているはずなのに、どこか足りない。

「酸素が薄い……わけじゃない」補助役が静かに呟く。

「苦しくはないからな」

「でも、違和感はある」感知役が続ける。

三人とも、同じものを感じている。つまり、気のせいではない。

「……空気が循環してない」言葉にする。

歩きながら、手を軽く動かす。空気を撫でる。だが、やはり反応が薄い。

「普通なら、ここまで閉じた空間でも流れはある」

人が動く。温度差が生まれる。わずかな隙間から空気が入れ替わる。

それが積み重なって、流れになる。だが、この空間にはそれがない。

「動かしても、すぐ止まる」

指先に魔力を込め、空気を押す。わずかに流れる。

だが、次の瞬間には消える。広がらない。続かない。

「……固定されてるみたいだな」前衛が言う。

その表現は、妙にしっくりきた。

「流れが、広がらない」補助役が続ける。

「拡散しないってことか」

「たぶん」頷く。

空気はある。だが、動かない。動いても、維持されない。

それはつまり「……死んでる」小さく呟く。

自分でも、その言葉が妙に重く感じる。

空気が死んでいる。流れを持たない空気。

それは、今まで前提としていたものとは全く違う。

「前方、反応」感知役の声。

思考が切り替わる。

「一体。大きい」単体だが、サイズがある。

「来る」短い言葉。

次の瞬間、影が現れる。大型の個体。

鈍い動きに見えるが、踏み込みは速い。

「……止める」前衛が踏み出す。それに合わせて、空気を動かす。

足元を支える。踏み込みを補助する。

だが「……弱い」支えきれない。流れが薄い。

前衛の動きが、ほんのわずかに鈍る。

その一瞬。敵の一撃が先に届く。

「っ……!」前衛が受ける。衝撃が走る。体が後ろにずれる。

完全には崩れない。だが、押し込まれる。

「補助!」補助魔法が入る。今度は間に合う。前衛が体勢を戻す。だが、流れは繋がらない。

「……合わせる」声に出す。意識を集中する。

一点だけ。踏み込み。そこだけを支える。

空気を押し固める。一瞬だけ、流れが成立する。

「今!」

前衛が踏み込む。斬撃。当たる。だが、浅い。決定打にならない。

「……硬いな」前衛が低く言う。

敵の体は、空気の影響をほとんど受けていない。

圧も、誘導も、効きが弱い。

「エアショット」短く呟き、魔法を放つ。いつも通りの圧縮。

だが「……軽い」威力が落ちている。衝撃が弱い。敵の体が、ほとんど揺れない。

「……なんだこれ」思わず声が漏れる。

空気を圧縮しているはずなのに、密度が上がらない。圧が乗らない。

「空気が……締まらない?」補助役が言う。

「いや……違う」首を振る。

「圧縮はできてる。でも、維持できない」

形成した瞬間に、崩れる。圧が逃げる。いや、そもそも“溜まらない”。

「……まずいな」指揮官が低く言う。

状況を理解している。

「押し切る」判断は早い。

連携は捨てる。個人戦で仕留める。

前衛が踏み込む。補助がそれを支える。感知が位置を読み切る。俺は最低限の妨害だけ入れる。

それでも、時間がかかる。決定打が出ない。削るしかない。

数十秒。短いはずの戦闘が、妙に長く感じる。

ようやく、敵が崩れる。重い音を立てて倒れる。

静寂。誰もすぐには動かない。呼吸が、少しだけ荒い。

「……今のは」前衛が言葉を探す。

だが、続かない。

代わりに、補助役が言う。

「明らかにおかしいな」

「……ああ」頷く。

これは単なるやりにくさじゃない。

「空気が機能してない」はっきりと断言できる。

「流れが作れないだけじゃない」

続ける。

「魔法そのものが弱くなってる」

それが一番の問題だ。戦術ではなく、根本。

「……深くなるほど、悪化するか」感知役が静かに言う。

その視線は、さらに奥を向いている。

「する」即答する。

さっきよりも、今の方が確実に悪い。

「……進むか」指揮官の問い。

全員が一瞬だけ沈黙する。

だが「進む」。結論は同じだ。ここで止まる理由はない。

まだ戦える。ただし「前提を変える必要がある」そう言って、前を見る。

空気に頼る戦い方は通用しない。少なくとも、この先では。

「……分かった」短い返答。それで十分だった。

四人で再び歩き出す。ダンジョンの奥へ。

空気は、さらに静かになる。流れない。揺れない。そして、さっきよりも確実に薄くなっている。

「……」言葉にはしない。

だが、確信は強まる。この先にあるのは、ただの難易度上昇じゃない。

戦い方そのものが通用しない領域。そこに、足を踏み入れようとしている。

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