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最弱属性の俺、空気を圧縮したら一撃で最強になった~空気魔法から始まる異世界魔法革命~  作者: 百花繚乱


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第78話 対空気適応型

通路を抜けた先は、広い空間だった。天井が高い。

壁面は粗く削られ、自然洞窟に近い形状をしている。

だが、広さに反して圧迫感が消えない。空気が軽くならない。

むしろ、均一に貼り付くような感覚が強くなる。

「……広いのに、楽じゃないな」前衛が低く言う。

その声もやはり遠くへは届かない。広がらない。

「流れがないまま、空間だけ広がってる」補助役が答える。

違和感の正体をなぞるように。「……前方、反応」感知役が目を細める。

「一体……いや、違う」わずかに間が空く。

「動きが、変」その言葉に、全員の意識が集中する。

「来る」次の瞬間、影が滑り出るように現れた。

速い。だが、違和感がある。踏み込みが見えない。

空気の乱れがない。ただ位置が変わったように見える。

「……!」前衛が反応する。剣を構え、迎え撃つ。

だが、タイミングがわずかにズレる。

「速い!」斬撃がかすれる。敵は止まらない。滑るように横へ回り込む。

「右!」感知役の声。

今度は先に動く。空気を圧縮する。進路を制限する。

だが……抜けた?感触がない。

確かに圧をかけたはずなのに、敵の動きが変わらない。そのまま踏み込んでくる。

前衛が受ける。衝撃。だが、今度は押し返す。力は拮抗している。

「……なんだこいつ」前衛が低く吐き捨てる。

「空気を無視してる」思わず口に出る。

流れに影響されない。圧にも引っかからない。まるで、そこに空気が存在しないかのように動く。

「エアショット」即座に魔法を放つ。圧縮。衝撃。

だが……効いてない。敵の体が、ほとんど揺れない。

わずかに当たっているが、影響が薄い。

「もう一発!」連続で放つ。今度は強めに。だが、結果は同じ。

圧が逃げる。手応えがない。

「……まずいな」補助役が呟く。

「前提が崩れてる」

その通りだ。今までの戦い方が通じない。

「切り替える!」指揮官の声。

「個人戦で押す!」

判断は早い。迷いがない。

「了解!」前衛が踏み込む。今度は空気に頼らない。

純粋な速度と技術で距離を詰める。補助がそれを支える。

強化が重なる。動きが鋭くなる。敵が応じる。滑るように動く。だが、今度は読み合いになる。

「……」その様子を見ながら、違和感がさらに強くなる。

動きが、自然すぎる。空気抵抗がないかのように滑らかだ。踏み込みの“重さ”がない。

「……まさか」嫌な予感が走る。

もう一度、空気を動かす。今度は広く。敵の周囲全体に。

だが……通らない。流れが、届かない。正確には、影響が及ばない。

そこだけ、別の領域のように切り離されている。

「……空気が届いてない?」言葉にする。

自分でも信じがたい仮説。

「何だそれ」前衛が短く返す。

戦いながらだが、耳は向いている。

「分からない。でも……」視線を敵に固定する。

「こいつの周りだけ、空気の影響が薄い」

完全に無効ではない。だが、極端に弱い。

「耐性持ちか?」補助役が言う。

「いや……」首を振る。

「それだけじゃない」耐性なら、多少は影響を受ける。

だが、これは違う。「前提が違う」言葉が重くなる。

「空気の中で動いてない」

その瞬間、全員の意識がわずかに揺れる。理解しかけているが、まだ掴みきれない。

「……落とすぞ!」前衛の声。思考を切り替える。今は戦闘だ。

敵が踏み込む。今度は読み切る。剣を合わせ、軌道を逸らす。

補助が重なる。速度が上がる。一瞬の隙。そこに、刃が入る。

浅い。だが、確実に削れる。

「効いてる!」完全無効ではない。だが、効きが悪い。時間がかかる。

「……面倒だな」前衛が吐き捨てる。

その通りだ。効率が悪すぎる。

数十秒。長い戦闘。ようやく、敵が崩れる。倒れる瞬間ですら、音が小さい。静かに、消えるように倒れた。

沈黙。誰もすぐには動かない。呼吸を整える。

だが、安心はない。

「……今の、どう見る」指揮官が言う。

短いが、重い問い。

「空気が効かない敵」即答する。

それが一番近い。

「正確には、“影響が届かない”」

それが本質だ。

「……そんなの、どうするんだ」

前衛が言う。苛立ちはない。純粋な疑問だ。

「分からない」正直に答える。

「でも」視線を奥へ向ける。

この空間のさらに先。

「ここだけじゃない」

確信がある。

「この先、同じのが出る」

いや、それ以上かもしれない。

「……つまり」

補助役が言葉を繋ぐ。

「空気前提の戦いは通用しない?」

「そうなる」静かに頷く。

その言葉が、場に落ちる。重い。だが、避けられない現実だ。

「……進むか」感知役が聞く。

その声は、いつも通り冷静だが、わずかに硬い。

「進む」指揮官の答えは変わらない。

「まだ引く段階じゃない」

正しい。

だが、確実にラインは近づいている。

「……分かった」頷く。

だが、今までとは違う。この先は、“試す”段階じゃない。通用しない前提で進む領域。

四人で歩き出す、広い空間の奥へ。

空気は、相変わらず動かない。そして、さっきよりも確実に“存在感”が薄くなっている。

「……」何も言わないが、理解している。

ここから先は今までの延長では、戦えない。

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