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最弱属性の俺、空気を圧縮したら一撃で最強になった~空気魔法から始まる異世界魔法革命~  作者: 百花繚乱


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第76話 連携の鈍化

ダンジョンの奥へ進むにつれて、空気の感触がさらに薄くなっていく。

存在はしている。呼吸もできる。だが、触れている実感が乏しい。

「……さっきより静かだな」前衛が言う。

その声は、やはり広がらない。すぐ近くにいるはずなのに、距離が曖昧になる。

「音だけじゃない」小さく返す。

「流れも弱くなってる」

足を進めるたびに、違和感が増していく。

本来なら、歩くだけで生まれるはずの空気の揺れがほとんど感じられない。

「前方、反応」感知役の声。少しだけ緊張が戻る。

「数は……五」

一瞬の間。

「密集してる」

単体ではない。小集団。

「試すにはちょうどいいな」補助役が言う。

軽く聞こえるが、意味は重い。ここで連携が機能するかどうか。それが、この先を左右する。

「……やる」短く答える。

試す価値はある。むしろ、ここで確認しておくべきだ。

「正面から行く」指揮官の指示。

前衛が踏み出す。それに合わせて、俺は魔力を広げる。空気を整える。

いつも通りのはずだった。だが「……遅い」反応が鈍い。

流れが立ち上がるまでに、わずかな遅れがある。その一拍が、やけに重く感じる。

「行く」前衛が踏み込む。

速い。だが、読みにくい。空気が動かないせいで、動きの前兆が掴めない。

敵が現れる。五体。ばらけず、まとまっている。連携前提の配置。

「左二、前三!」感知役の声。

それに合わせて、空気を流す。進行方向に誘導を作る。

だが「……乗らない」

前衛の動きが、流れに噛み合わない。ズレる。ほんのわずかだが、確実に。

斬撃が浅くなる。

「もう一度!」声を出す。

今度は強めに操作する。流れを押し付けるように。

遅れて、反応が来る。その瞬間に合わせて、前衛が踏み込む。

今度は当たる。一体、崩れる。

「一つ!」だが、次が続かない。

残りの敵が散開する。距離を取り、囲むように広がる。

「右、来る!」声が飛ぶ。

即座に空気を圧縮する。足場を重くする。だが、効果が薄い。動きを止めきれない。

「……効きが弱い」敵がそのまま踏み込んでくる。

前衛が受ける。衝撃が鈍い音を立てる。だが、押し込まれる。

「補助!」補助魔法が入る。速度が上がる。

だが、タイミングが噛み合わない。強化のピークと、踏み込みがずれている。

「くそ……!」前衛が一歩引く。

体勢を立て直す。その間に、別の敵が横から入る。

「左!」感知役の声。

今度は早めに動かす。先に流れを作る。その上に、動きを乗せる。

だが「……ずれる」完全には合わない。

流れはある。だが、薄い。支えきれない。斬撃がかすれる。決定打にならない。

「押し切る!」指揮官の声。

判断は早い。

このまま連携に拘ると崩れる。

「……分かった」

空気の操作を一段落とす。無理に整えない。最低限の補助に切り替える。

その瞬間、戦闘の質が変わる。個人戦に近づく。前衛が前に出る。

力で押す。補助がそれを支える。感知が危険を潰す。それぞれが独立して動く。

「……」悪くない。むしろ安定する。

だが「違う」小さく呟く。

これは、戻っているだけだ。さっきまでの戦い方に。

「右、落とす!」前衛の声。

一体、崩れる。残り三。

そのまま押し切る。連携ではない。だが、勝てる。

二体目、三体目。最後の一体も、時間をかけて処理する。

戦闘終了。静寂が戻る。呼吸が、わずかに荒い。消耗している、明確に。

「……どうだ」指揮官が言う。

短い問い。

「勝てる」

それは事実だ。問題はそこじゃない。

「でも、消耗が大きい」

続ける。

「連携が機能してない」

「途中で切り替えたな」前衛が言う。

「ああ」頷く。

「無理に合わせると崩れる」それが、さっきの結論だ。

「……原因は」補助役が問う。

「空気だ」即答する。

「反応が遅い。流れが維持できない」だから、繋がらない。

「……さっきより悪化してる?」感知役が静かに言う。

「してる」迷いなく答える。

確実に、深くなるほど状況は悪い。

「……進むか」

短い沈黙。誰もすぐには答えない。

だが「進む」指揮官が言う。

「まだ対応できる範囲だ」正しい判断だ。

撤退するほどではない。だが、楽観もできない。

「……分かった」頷く。

ただし、前提は変える必要がある。

「次は、無理に連携しない」

三人がこちらを見る。

「成立する条件が揃ってない」

それが現実だ。

「使える部分だけ使う」

完全な形には拘らない。できる範囲で繋ぐ。

「……妥当だな」補助役が言う。

前衛も小さく頷く。感知役は無言だが、否定はしない。方針が決まる。

だが。胸の奥に、嫌な感覚が残る。これは調整でどうにかなる問題じゃない。

もっと根本的な何かだ。

四人で再び歩き出す。ダンジョンの奥へ進むほどに、空気はさらに静かになる。

揺れない、動かない。そして、わずかに薄くなっている気がした。

「……」言葉にはしない。

だが、確信は強くなる。この先で、何かが決定的に崩れる。

そんな予感だけが、静かに積み重なっていた。

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