表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱属性の俺、空気を圧縮したら一撃で最強になった~空気魔法から始まる異世界魔法革命~  作者: 百花繚乱


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/108

第61話 戦闘開始

最初の一撃が交わった時点で、この戦いは単純ではないと分かっていた。

風は流れている。だが、その流れが“自然”ではない。

森の中であれば、風は木々にぶつかり、枝葉に裂かれ、温度差に引かれて乱れるはずだ。

ところが、目の前の空気は違う。乱れているように見えて、一定の規則を保っている。

作られている。そう認識した瞬間、次の変化が来た。

「……来る」声に出すより早く、身体が動く。

踏み込み、半歩だけ軸をずらす。

その直後、頬の横を何かが掠めた。音は遅れて届く。乾いた裂音。視界の端で、木の幹が薄く削がれているのが見えた。

風刃。だが、さっきまでのそれとは違う。

「……浅いな」思わず呟く。

威力が足りないわけではない。むしろ、精度が高すぎる。

必要な分だけ削る。無駄に深く斬らない。だからこそ、空気の抵抗が少なく、次の動きに繋がる。

「また来る!」リナの声が背後で弾ける。

次の瞬間、空気が左右から同時に圧を持った。

挟み込まれる。直線ではない。左右から流れを絞り、逃げ場を限定する形。

「……いいな」思考が冷える。恐怖ではない。解析が優先される。

右の流れは強い。左はわずかに遅い。なら、抜けるのは「左」

身体を滑らせる。完全に避けるのではなく、圧の弱い側へ体重を流す。

接触の瞬間に、空気の層をずらす。衝撃を逃がす。

だが「……?」抜けたはずの先に、もう一枚の層があった。

遅れて追いかけてくるような風。

「二段構えか」舌打ちを飲み込む。

対応はできる。だが、判断が一手遅れる。その一瞬が、積み重なる。

「エアショット」反射的に放つ。

圧縮した空気を、追従してくる流れに叩きつける。

衝突。拡散。視界がわずかに白く揺れる。「……」

崩れた。だが、完全ではない。

「残ってる」リナが低く言う。

「普通なら消えるのに」

「残すように作ってる」

言いながら、前を見る。木々の間に、四つの影。動きは少ない。

だが、空気は確実にそこから発生している。

「中心はどこだ……」

目で見るのではなく、空気で捉える。

流れの起点。干渉の重なり。わずかな歪み。

「……そこか」

一人。後方寄り。他の三人よりも動かない。

だが、周囲の流れを整えている。

「制御役か」なら「崩す」

踏み込む。直線ではなく、流れに沿って斜めに入る。

相手の視線が動く。反応が速い。だが「追いつく」

空気を掴む。圧縮。細く、鋭く。

「エアブレード」放つ。

一直線ではない。わずかに軌道を曲げる。

木の幹を避け、枝の隙間を通し、影に向けて収束させる。

「……!」影が動く。

回避。だが、余裕がない。

その瞬間、別の影が割り込む。風の層が重なる。「守るか」

予想通りだ。制御役は優先して守られる。

「なら」手を変える。一点突破ではなく、分散。

複数の圧を同時に走らせる。「エアショット」三連。

それぞれ角度を変える。一つは囮。二つ目で流れを歪める。三つ目で、本命を通す。

「……!」空気がぶつかる。層が乱れる。わずかに。ほんの一瞬。

「今だ」踏み込む。距離を詰める。近い、だが。

「――!」横から、別の流れが差し込まれる。

速い。予測していない角度。

「っ……!」肩に衝撃が走る。

完全には当たっていない。だが、体勢が崩れる。

「……」着地。息を整える。視線を戻す。相手の位置は変わっていない。

だが「配置が……」。微妙にズレている。

さっきまでとは違う。連携の形が、更新されている。

「……早いな」崩したはずの構造が、もう組み直されている。

しかも「さっきより精度が上がってる」リナが息を呑む。

「学習してる……?」

「いや」首を振る。

「最初から持ってる」

必要に応じて、形を変えているだけだ。

「……」一瞬、思考が止まる。

いつもなら、ここで次の手が浮かぶ。

だが。「……」遅れる。半拍、そのわずかな遅れが。

「来る!」誰かの声。

次の瞬間。空気が、縦に裂けた。今までとは違う。

広がるのではなく、集中する流れ。一直線。

だが、その中に複数の層が重なっている。

「……」避ける。だが、完全には外れない。肩を掠める。

衝撃。「っ……!」踏みとどまる。血が滲む。深くはない。

だが。「……」

視線を上げる。相手の動きは変わらない。淡々と無駄なく。

「……いいな」思わず、そう呟く。

強い。だがそれ以上に。「完成されてる」

対して自分は。「……まだ、組み立ての途中か」その差が、少しずつ広がっている。

リナが横に並ぶ。距離が近い。「どうする?」短い問い。

迷いはない。「崩すしかない」それしかない。

だが、その方法がさっきよりも一歩、遠くなっている気がした。

空気が、わずかに重くなる。

次の一手を考える時間が、確実に削られている。

その感覚が、じわりと広がっていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ