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最弱属性の俺、空気を圧縮したら一撃で最強になった~空気魔法から始まる異世界魔法革命~  作者: 百花繚乱


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第38話 ダンジョン異変

朝の空気が、どこかおかしい。寮を出た瞬間、そう感じた。

風は吹いている。温度も、湿度も、普段と大きくは変わらない。だが密度が、わずかにずれている。

「……軽い」

無意識に呟く。空気の流れが一定ではない。場所によって微妙に抵抗が違う。まるで、空間そのものが均一ではないかのように。

「おはよー」

後ろから声。振り向くと、リナが手を振っている。

「……どうしたの、その顔」

「空気が変だ」

「朝一でそれ?」

苦笑する。だが、歩き出してすぐに足を止めた。

「……あれ?」

自分でも気づいたらしい。

「なんか……変じゃない?」

「気づいたか」

「うん、なんか……息しにくいわけじゃないんだけど、変な感じ」

胸元に手を当てる。

「軽いところと重いところがあるっていうか……」

「密度が均一じゃない」

言い換える。

リナは一瞬だけ黙り、そして顔をしかめた。

「それ、昨日のやつと関係ある?」

「可能性はある」

否定はできない。むしろ似ている。昨日の実験で感じた違和感と。

「……やっぱりやばいやつじゃん」

リナが小さく息を吐く。

そのまま学園へ向かう。門をくぐった瞬間、ざわめきが耳に入った。いつもより明らかに騒がしい。

「聞いたか?」

「ダンジョンでまた……」

「戻ってきてないって話だぞ」

断片的な会話が交差する。視線が集まり、すぐに逸れる。不安が広がっている。

「……なんか普通じゃないね」

リナが小声で言う。

「ああ」

情報を拾う。ダンジョン。異常。戻っていない。それらが一つに繋がる。

掲示板の前に人だかりができている。近づくと紙が貼られている。

ダンジョン立ち入り制限

短い文面。だが、その重さは明らかだ。

「……本格的にやばいやつだ」

リナが呟く。

教師たちの動きも慌ただしい。普段なら見せない緊張が、隠しきれていない。

「ただの魔物増加じゃないな」

「分かるの?」

「空気が違う」

それが一番分かりやすい。現象として現れている。

なら、原因は「……」

思考が止まる。昨日の実験。真空。空気の消失。

そして“何か”。そのときだった。ピシ、と。小さな音がした。

足元。石畳の一部。その上の空気が、わずかに歪む。

「……?」

次の瞬間。音が消えた。一瞬だけ。完全な無音。

そして、引かれる。

「っ!」

リナの髪が一気に引き寄せられる。服が吸い込まれるように揺れる。周囲の紙や砂が一点に集まる。

「何これ!?」

誰かが叫ぶ。だがその声は途中で消える。空気が、ない。ほんの一瞬。だが確実に。

そして、戻る。ドン、と鈍い衝撃。

空気が一気に流れ込む。小さな爆風。砂が舞い上がる。

「……っ、今の……!」

リナが息を整える。

周囲がざわつく。だが、俺の意識はそこにはない。今の現象。間違いない。

「……同じだ」

「え?」

「昨日の実験と」

真空の生成。圧力差。流入。完全に一致している。

「じゃあ……」

リナの顔が引きつる。

「ダンジョンでもこれが起きてるってこと?」

「規模が違う」

即答する。

「俺のは局所的だ。だが」

視線を掲示板に向ける。

「向こうは広範囲だ」

だから、戻ってこない。だから、異常が続く。

「……それってさ」

リナが小さく言う。

「自然に起きてるの?」

「分からない」

だが、違和感がある。自然現象にしては、精度が高すぎる。タイミングが揃いすぎている。まるで、

「誰かがやってるみたいな感じ?」

リナの言葉が重なる。

「可能性はある」

否定はしない。むしろ。

「……」

あの教師の顔が浮かぶ。発表会での一言。

あまりにも的確だった質問。知っていた。あるいは、経験している。

「……」

そのとき。

「静粛に」

低い声が響く。振り向く。教師の一人が立っている。発表会のときのあの男だ。

周囲のざわめきが収まる。

「現在、ダンジョン内部において異常現象が確認されている」

簡潔な説明。

「詳細は不明。だが危険性は高い」

言葉が重い。

「これより調査隊を編成する」

空気が張り詰める。生徒たちの視線が一斉に集まる。

「選抜された者は後ほど通達する」

それだけ言って、教師は一瞬こちらを見る。視線が合う。数秒。そして。

「……来い」

小さく、口だけが動く。

「え?」

リナが戸惑う。

「今の、呼ばれた?」

「……ああ」

間違いない。意図的だ。

「行くの?」

「当然だ」

即答する。ここで止まる理由はない。むしろ、

「確認する必要がある」

「何を?」

リナが問う。

視線をダンジョンの方向へ向ける。まだ見えない、その奥。

「……これは偶然じゃない」

空気の歪み。真空の発生。そして、あの違和感。すべてが繋がっている。

「――あれは、“外”だ」

小さく呟く。この世界の内側ではない。別の何か。その境界に、すでに触れている。

風が吹く。だがその流れは、もう以前のようには感じられなかった。

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