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最弱属性の俺、空気を圧縮したら一撃で最強になった~空気魔法から始まる異世界魔法革命~  作者: 百花繚乱


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第39話 調査隊

呼び出しを受けたのは、その日の午後だった。簡潔な通達だった。

選抜生徒は、第一会議室へ。理由は書かれていない。だが、分からない者はいない。

ダンジョン異変。それに対する調査隊。扉を開ける。室内は静まり返っていた。

円形に配置された机。その中央に立つ教師。そして、すでに集まっている数名の生徒たち。空気が重い。ただの緊張ではない。

“何かを知っている者の空気”だ。

「……来たか」

低い声。視線を上げると、あの教師がこちらを見ていた。発表会のときに言葉を交わした男だ。

「座れ」

短く言われ、席に着く。隣にリナが座る。

「……やっぱり呼ばれたね」

小声で言う。

「ああ」

周囲を見渡す。見覚えのある顔がいくつかある。上位成績者。実技で目立っていた連中。そして

「……」

壁際に寄りかかるように立っている一人の男。風魔法の天才。あのライバルだ。

こちらの視線に気づいたのか、ゆっくりと顔を上げる。一瞬、目が合う。

「……遅れるなよ」

それだけ言って、視線を逸らす。相変わらずだ。

「……何あいつ」

リナが小さく呟く。

「気にするな」

短く返す。やがて全員が揃ったのか、教師が一歩前に出る。

「これより、ダンジョン異変に関する調査任務について説明する」

部屋の空気がさらに張り詰める。

「現在、第一ダンジョンにおいて魔物の異常増殖、及び空間異常が確認されている」

淡々とした声。だがその内容は重い。

「空間異常……?」

誰かが小さく呟く。教師は続ける。

「具体的には、空気密度の不均一、音の消失、局所的な圧力変動」

その単語に、反応する。完全に一致している。

「さらに」教師が一瞬、言葉を区切る。

「調査に向かった学生数名が帰還していない」

ざわめきが走る。

「帰ってないって……それって」

「死亡ってことか?」

ざわつく声。だが教師は首を振る。

「確認されているのは“消失”だ」

静まり返る。

「痕跡はない。魔物による捕食でもない。装備も残されていない」

つまり。“存在そのものが消えた”。喉の奥がわずかに乾く。

「……それってさ」

リナが小声で言う。

「どういうこと?」

「……分からない」

だが、一つの仮説が浮かぶ。消失。空気異常。圧力変動。――真空。

「……」

もし。空気が一瞬で消えたらどうなる。そこにあるものはどうなる。

「……おい」

低い声が横から飛んでくる。振り向くと、ライバルがこちらを見ている。

「顔色悪いぞ」

「問題ない」

短く返す。

「怖いのか?」

わずかに口元が歪む。挑発だ。だが、

「未知なだけだ」

淡々と答える。

「理解していない現象に対して警戒するのは当然だ」

数秒、沈黙。そして。

「……つまらない答えだな」

そう言って、視線を逸らした。そのとき。

「続ける」

教師の声が割って入る。

「本任務は調査が主目的だ。無理な戦闘は避けろ」

だがその言葉の裏には別の意味がある。戦闘では対処できない可能性。

「異常の原因は不明。だが通常の魔法では対応できない可能性が高い」

視線がこちらに向く。一瞬だけ。だが、確かに。

「……」

理解している。少なくとも、この男は。

「よって、本任務には“特異な適性を持つ者”を選抜している」

それ以上は言わない。だが、十分だ。俺は選ばれた理由を理解する。

会議は短く終わった。詳細な配置、行動方針、撤退条件。だがどれも、確定した答えではない。

未知に対する手探り。それだけだ。部屋を出る。廊下を歩きながら、リナが息を吐く。

「……やばくない?」

「やばいな」

「軽く言うね……」

「軽く言っているつもりはない」

むしろ。かなり危険だ。

「でもさ」

リナがこちらを見る。

「行くんでしょ?」

「当然だ」

即答する。

「確認する必要がある」

「何を?」

少しだけ、間を置く。言葉を選ぶ。だが、隠す意味はない。

「この現象が、どこから来ているのか」

そして。

「俺の仮説が正しいのか」

リナは少しだけ目を細める。

「……責任感じてる?」

「感じていない」

即答する。

「まだ証明されていない」

だが。

「……可能性はある」

それは否定しない。

夕方。ダンジョン入口。

巨大な石の門が、沈黙している。いつもと同じはずの場所。

だが、違う。空気が、動かない。風が止まっている。音が、遠い。

「……ここ」

リナが小さく言う。

「もう変だよ」

「ああ」

間違いない。ここから先は“内側”ではない。

別の何かが、侵食している。背後で足音。振り向くと、ライバルが立っている。

「逃げるなら今のうちだぞ」

「その予定はない」

「……だろうな」

短く笑う。そのまま前を向く。門の奥。暗闇。

だが、それはただの闇ではない。“何か”がある。

「行くぞ」

教師の声。一歩踏み出す。空気が、変わる。明確に境界を越えた。

「……戻れないな」

誰かが呟く。その言葉に、誰も否定しなかった。

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