表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水月鏡花 ―冷たい当主と、静かに灯る恋とほどけていく心―  作者: 麻倉ロゼ
第二章「花心、光にほどく」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

135/137

第十話「内緒の相談」4

第十話「内緒の相談」は5分割で更新していきます。これは4つ目です。

 薬局の仕事を終えて屋敷に戻った春燕しゅんえんは、ずっと

胸のあたりが落ち着かなかった。

――私からどう誘えばいいのだろう…。


みんながいる前だと、なんとなく恥ずかしい。

だから春燕は考えた。


(夕方、帳場の仕事が終わった頃なら……!)

凌偉りょういはいつも帳場で一日の決済をまとめ、そのあと本邸へ帰る。

その時なら自然に誘えるはず――そう思って、帳場の仕事を

手伝いながらそのタイミングを待っていた。


だが。


「凌偉様! 今よろしいですか!」

帳場に、運送番の使用人が慌てた様子で飛び込んできた。


「どうした」

凌偉は軽く眉を寄せ、そのまま呼ばれていってしまう。


そして――結局、春燕は夜まで一度も顔を見ることができなかった。


(さっ……誘えなかった……)

本邸の厨房で後片付けを手伝い終えた春燕は、肩を落としながら廊下を歩く。

気づけばもう寝支度をする時間だった。


その時――ふと、薄灯りの廊下の先に、長身の影が揺れた。


「凌偉様!」


声が自然と漏れる。


「春燕。まだ起きていたのか?」

気づいた凌偉が歩み寄ってくる。


「凌偉様はお仕事でしたか?」


「ああ。遠方の取引先で問題があってな。

連絡を待っていたんだ。……なんとか解決した」

疲れの色を隠しきれない声。

春燕は胸が少し痛んだ。


「そうでしたか……」

こんなに忙しいのに。

やっぱり私から誘うなんて、迷惑じゃ――。


引き下がろうと視線を落とした時、ふと以前凌偉に

言われた言葉が胸に浮かぶ。


“春燕に、心のままに自由にやりたい事をやってほしい”

“やりたい、と心が動いたのならやるべきだ”


……私は。

私は凌偉様のことが知りたい。

もっと近づきたい。

そして自分で――決めたい。


「もう遅い。早く休め」

凌偉が歩き去ろうとしたその時。


――行かないで。


春燕は気づけば、凌偉の袖をそっと、けれどしっかりと掴んでいた。


「……春燕?」

振り返る凌偉の声が、少しだけ低く変わる。


「凌偉様……」

春燕は顔を上げる。


背の高い凌偉を見上げるのは、どうしても自然に上目遣いになる。

灯りに照らされた頬は緊張で赤く、吐息はかすかに震え、声は囁くように細い。


「お願いが……」


「なんでも聞こう」

凌偉は即答で答えた。

※作者より

「水月鏡花」の更新は【週2日/月・金 21時頃】です。


春燕と凌偉、それぞれの心の距離が、

少しずつ近づいていく時間を、

見守っていただけたら嬉しいです。


続きが気になりましたら、

ブックマークで見守っていただけますと励みになります。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ