198 海岸で
初めてこちらを見つけていただいた方へ。
ありがとうございます。
1話がとても短いものになっております。あっという間に負担なく読み終えてしまう短さです。ですので3日に一度、朝7時更新という短いスパンです。(土日の場合はお休みです)
たまに遅れまる場合が(^0^;)
ちょっとの暇な時間の穴埋めになれたら嬉しいです。
ちらほらと、あらすじが挟んでおります。もし興味がありましたら、そちらをちょこっと覗いていただければ、なんとな~くわかっていただけるかとw
よろしくお願いしますm(_ _)m
では、どうぞ!
その後、皆海岸に移動し、割り当てられたエリアの警備をしにバラバラに散っていった。残されたリュカとジンはどうしたものかとバルターの指示を待っていると、
「2人は全体を見てくれ」
と以外な答えが返ってきた。
「全体ですか?」
ジンは首を傾げて聞く。
「ああ」
するとリュカが言う。
「何も情報がない状態で1度見てみろということですね」
「その通りだ。俺らはここの海岸のことは熟知している。それに対しお前達はまったく知らない2人だ。そんなお前達の目から何か気付くことがあるかもしれねえ。だから1度海岸全域を見て回って何か気付いたことがあったら報告してくれ」
「なるほどね」
「しかしリュカ、よく気付いたな。将来有望だな」
感心しながら言うバルターにリュカは気まずい顔を向け、ジンは苦笑する。
「そりゃそうだろ。こいつはこの前まで魔術師団団長をしていたんだ。そのぐらい朝飯前だろうよ」
ジンはリュカしか聞こえない小声で突っ込む。案の定バルターには聞こえなかった。
「じゃあ俺は部下の見回りに行く。リュカ、なんなら島を見てきてもいいぞ」
「!」
目を見開くリュカにバルターは笑顔を見せ、
「よろしくな。何か気付いたら言ってくれ」
と言い離れて行った。その背中を見ながらジンが言う。
「あれはお前の能力のことに気付いているということだよな」
「ええ」
――さすが元魔術師団長だな。俺が島まで行けることを知っている。
「魔術師団団長になる者は、みんな何かと凄いんだな」
ジンも感心の声を上げる。やはりユーゴやオーエンの上に立っていた人物だとリュカは改めて感心し頷く。
「そうですね。俺以外は皆凄いです」
するとジンは目を眇め言う。
「どの口が言うんだ? 前世で『冷酷な大魔術師様』という大それたあだ名が付いていたやつが言う言葉ではねえな」
「別に俺が付けたわけじゃないですから。勝手に誇張されたあだ名なんで」
不満げに言うリュカにジンは鼻で笑う。
「あのなー、火のない所に煙は立たないって言うだろ。お前の桁外れの魔力量が大それたあだ名を産んだんだよ」
「魔力量だけで付けないでもらいたいですね」
「まあ、『冷酷』と言うのは、いつも無表情で無口の1人狼だったのが原因だろうけどな」
「……」
それにはリュカも反論の余地がないと黙る。
「自覚があるようだな」
「そうですね……」
素直に認めたリュカにジンは笑った。
その時だ。小さな地震が起った。今日は朝から震度1ほどの地震が頻繁に起っている。
「こりゃ、1週間もしないうちにまた噴火しそうだな」
「ええ」
そう言いながら回りを見渡していると、3台の車が海岸沿いの道に止まるのが見えた。すると先頭の車の後部座席から貴族らしき身なりがしっかりした男性2人が降りてきた。後ろ2台の車からもずらずらと魔力持ちの者達が降りて来て2人の後につく。護衛か臣下のようだ。そして2人と護衛の者達は、少し離れた場所にいるバルターの所へと一直線に向かって歩いて行く。
「誰だ? あの貴族みたいなやつらは」
「さあ」
男達はバルターの元へとやって来ると何やら話し始めた。そこへ走ってくる者がいた。ライナーだ。慌てた風情でやって来ると話に加わった。
「ライナーの知り合いか?」
すると近くにいたバルターの部下の1人がジンの言葉を聞き応えた。
「ああ、あれはライナーの父親と兄ですよ」
「え?」
「ライナーの家は由緒ある魔術師の家系なんですよ。父親は元魔術師団員にいたらしく、ボスの同級生なんです」
「同級生ねー」
バルターの表情からして、同級生が挨拶をしにやって来て談笑しているようには到底見えない。反対にバルターは不機嫌そうだ。
「何しに来たのかわかる?」
ジンは教えてくれた部下に尋ねる。
「いつものやつだと思いますよ」
「いつもの?」
「ボスの対応に文句を言いにきたんじゃないんすかねー。今回はテプラの件だと思いますよ」
部下はいつものことだと呆れた顔を見せる。
「ライナーはそこまでじゃないけど、あの2人はプライドが高いですからねー。ましてや娘さんを意識不明の状態にしたテプラが許せないんじゃないんすかね」
そこでジンは訊ねる。
「その事故があった時って、あの2人は海岸にいたのかい?」
「ええ、いましたよ。まあ不運だったと言うしかないですけどね」
「不運?」
「はい」
部下はその時の様子を話した。
部下の話によると、その日は海岸で漁師が主催する催し物がやっていたそうだ。その時に島の噴火が起きた。その直後、興奮したテプラの大群が海岸へと襲ってきたということだった。
「住民はライナーの家族にテプラをどうにかしてくれと懇願したんすよ。ライナーの父親と兄、そしてライナーはテプラの駆除に乗りだした。最初、母親と妹は住民と一緒に安全の場所に移動していたんすが、妹が自分も役に立ちたいと海岸に1人で走り出したそうです。それに気付いたライナーが妹を止めに行ったが間に合わず、妹はテプラの角が左肩に刺さり、意識不明になったんすよ」
説明を聞き、リュカとジンは、「やはりそうか」と納得する。
――妹が自ら海岸に行き、目の前でライナーはやられるのを見てしまったというわけか……。
ジンは眉根を寄せる。
――俺と似てるな……。
自分は後から後悔した。もし一緒にいたら父と兄を助けることが出来たのではないかと。ライナーは目の前で妹がやられるのを見ていたのだ。
――間に合っていれば助けることができただろう。それは後悔しきれねえだろうな。そしてその気持ちは、父親や兄もそうだろうな。
「だからボスの対応に不満があり、あのように抗議をしに来たのか」
「でしょうね。では俺は持ち場につかないといけないのでこれで」
「ありがとう」
「いえ」
部下は頭を下げると持ち場に戻ると去って行った。
「リュカ、お前の意見はどうみる?」
「? と言いますと?」
「ボスの対応だ。お前ならどうする?」
2人はバルター達へと視線を向けたまま話す。
「俺もたぶん今はボスと同じ対応をしたと思います。海岸に来ているテプラは10匹といない。ならば下手に刺激するよりは、その都度対応したほうがいいと」
「さっきは納得いかないって言ってたじゃねえか」
「不満はありますが、上の者が出てきたら、従わないほうが後々面倒ですからね」
それは前世の経験からだ。それを聞いて驚いたのはジンだ。
「お前、前世の時、他のやつの意見、聞いてたのか?」
「俺をなんだと思っているんですか。ただ無表情で無口だっただけで、後は他の団長と変わりませんでしたよ」
リュカはムッとして言うが、
「でも従うのは最初だけですが」
と付け足し悪戯な顔をし笑う。
「そこも他の団長と同じじゃねえか」
ジンは間髪入れずに突っ込みを入れると、
「でもまあ、あまり今は先走らねえほうが良さそうだしな。この地震が気になるからな」
そう言いながらテプラの産卵場所の島の噴火した山へと視線を向ける。
「ええ。噴火が起きた後は地震は収まるはずですが、まだ群発地震が続いていますからね」
そう言い終わらぬうちにリュカの目に魔法陣が浮かぶ。探索魔法の目を探索眼にしたのだ。
そして島へと向ける。
「見た感じ、熱が溜まっている。やはりいつ爆発してもおかしくない状態かと」
「そんなことまでわかるのか?」
「隠れた人を見つける熱感知の応用です。でも細かいところまでは近くに行かないと分からないですが」
「さすが元密偵部隊だな」
リュカは前世で1年間密偵部隊にいた。そのため探索や密偵でのノウハウは朝飯前だ。
「それにしてもお前、ここ最近また魔力が多くなったんじゃねえのか?」
「はい。大分前世に近づいては来てます」
「は? 早くねえか?」
「多分、誰かさんに色々こき使われてるからだと思います」
リュカは口角を上げてジンに嫌みを言う。
「お前、性格変わったな。冗談を言うようになったんだな」
ジンは目を眇めて意趣返しをすると、
「冗談ではないですよ。本当にそうなんです。やはり経験が物を言うんだと思います」
「なら俺に感謝してほしいもんだな」
「そのままその言葉返しますよ」
間髪入れずに言い返すリュカに
「お前、やっぱり性格変わったな。可愛さがなくなったぜ」
と苦笑しながら言い海岸へと視線を戻す。確かにテプラが海岸の近くにはいるが、あまり近づいてこず、様子を見ている感じだ。
「この感じならまだ俺達は何もしなくてよさそうだな」
「はい」
「触らぬ神に祟りなしってやつだな」
そうジンが言った時だ。バルターがいる方向から大きな魔力を感知した瞬間、大きな爆発と共に海面に巨大な水柱が立ち上がった。
「!」
見れば、ライナーの父親が海に向かって手を翳している。父親がテプラを狙って魔術を使ったのだとすぐにわかった。
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