173 前世のユーゴとの記憶③
初めてこちらを見つけていただいた方へ。
ありがとうございます。
1話がとても短いものになっております。あっという間に負担なく読み終えてしまう短さです。ですので3日に一度、朝7時更新という短いスパンです。(土日の場合はお休みです)
たまに遅れまる場合が(^0^;)
ちょっとの暇な時間の穴埋めになれたら嬉しいです。
ちらほらと、あらすじが挟んでおります。もし興味がありましたら、そちらをちょこっと覗いていただければ、なんとな~くわかっていただけるかとw
よろしくお願いしますm(_ _)m
では、どうぞ!
ユーゴは剣先を両手で頭上に向けて突き刺すと詠唱する。
「我、ユーゴ・グリフィスの名において水魔法の至高神に告ぐ」
すると空の頭上に大きな魔法陣が現れた。その後水色に輝く白い大きな扉が出現。それを見たブレッドが目を見開き驚きの声をあげた。
「儀礼召喚魔法『王の扉召喚』! じゃあこれは水魔法の至高神の扉!」
そしてユーゴは続ける。
「扉よ開け」
扉がゆっくりと観音開きしていく。だが中から何かが出てくるわけではない。ただ中は水の中のように水面が光り輝ぎ漂っている感じだ。それを確認しユーゴは更に告げる。
「水魔法の至高神の下に水魔法、至高魔法シリューレン発動」
すると扉の中から巨大な水柱が魔獣へと繰り出された。
ズドーン!
爆音と共に水色の柱の魔法が魔獣を直撃。するとそのまま氷へと変化していく。ユーゴが繰り出した氷魔法の比ではない透明度と威力で一瞬にして氷り、白く覆ったと思った瞬間、粉々に割れ散りと化した。その瞬間門は閉まり、そのまま頭上の魔法陣へと消えて行った。
「す、すごい……。初めて見た……。あれが儀礼召喚魔法!」
ブレッドは興奮が収まらない感じで胸が高鳴る。まず儀礼召喚魔法は出来ない。精密な魔術式の理解と膨大な魔力量と質、それらすべてが兼ね備えられた者しか出来ない魔術だ。
アイラも初めて見る儀礼召喚魔法に見とれた。
「凄い……。あれが水魔法の至高神……」
門の中の水の中に人魚のような形をした銀色の髪のウェーブがかった長い女性が見えた。水の中のため顔ははっきり見えなかったが、あれが水魔法を司る至高神なのだろう。
そしてユーゴを見れば、その場に膝を突いていた。
「!」
――魔力切れ!
そりゃそうだろう。魔力を全解放した上で、水魔法の至高神を呼んだのだ。魔力切れになって当たり前だ。
ユーゴは今にも倒れそうな体をどうにか手を地面につき支える。
「儀礼召喚魔法がこれほどきついとは……」
オーエンの説明を思い出しながら儀礼召喚魔法を初めてした。
――これを先輩は簡単にしたのか。
あの時のオーエンは、
「儀礼召喚魔法『王の扉召喚』で火魔法の至高神を召喚して倒したんっす。その後残りの魔獣を倒して終わった形ですねー」
と軽く言い、
「門が開いてそこから男性が出てきた。あれが至高神だったんでしょうね」
とも言っていた。だがユーゴにはその姿は見えなかった。至高神が見えるのは魔術を極め、且つ、至高神に認められ者のみ。
――やはり僕には至高神の姿は見えなかった。
分かっていたが、オーエンとの差が目に見えた瞬間だった。
そこへアイラがユーゴの元へと走ってきた。
「団長! 大丈夫ですか!」
アイラはすぐに回復魔法をかけようとすると、ユーゴが手を上げアイラを制する。
「僕のことはいい。君はすぐに離れなさい。ここに来ては駄目だ……。まだもう一体いる」
だがアイラはユーゴの手を払い退けると、
「いえ」
と首を振りユーゴに回復魔法をかける。
「駄目だ。すぐに離れるんだ」
だがアイラは止めない。
「精霊魔法士としての仕事をするか、この場を離れるか、団長は私に聞きましたよね? それで私は精霊魔法士の仕事をすると応えました。ならばこれは正当な行為です」
「……」
困った顔をするユーゴにアイラは更に言う。
「大丈夫です。団長の足枷にはならないようにしますから。自分の身は自分で守ります」
するとユーゴは更に困った顔をして言う。
「さっき、そう言う意味で君に聞いたわけじゃないんだけどね」
「え?」
「本当はここに残ってほしくなくて聞いたんだ」
「はい?」
「普通、王宮勤務1年ほどの精霊魔法士の者は、経験がない分、恐怖からこの場に留まりたくない者がほとんどだ。だが上司に言われると断り切れないから残ると言ってしまう」
――ああ、そういうことか。
そこでアイラはユーゴが何が言いたいのか理解した。アイラを逃がすために言った言葉だったのに、アイラは逃げずに残ると言ったことがユーゴの想定外だったのだ。ユーゴの優しさは嬉しいが、だからといって、今にも倒れそうなユーゴを残して逃げようと言う考えは今のアイラにはなかった。
「ありがとうございます。まだ私は一兵卒に過ぎませんが、自分の責務は分かっているつもりです。だから私は逃げません」
もう一度きっぱり言う。本心からの言葉だが、体は恐怖で小刻みに震え止まらない。そんなアイラにユーゴは苦笑しながら指摘する。
「震えているけど?」
「こ、これは、さ、寒さで震えているだけです」
咄嗟に着いたが、嘘だと丸わかりだ。今の季節は温かいのだ。
「そういうことにしておくよ。どちらにせよ、もう遅いみたいだから」
「え?」
どういうことだと聞き返そうとした時だ。
ドスンとアイラとユーゴの目の前に影が落ちた。
「え?」
見れば、そこにはもう一体の魔獣がアイラとユーゴの目の前にいた。
「なぜ……」
確かブレッド達がこの魔獣を拘束していたはずだとブレッド達がいた場所を見れば、全員その場に倒れていた。すると隣りのユーゴが呟く。
「まいったな、こっちはさっきのエンパイアより強かったか……」
「え?」
どういうことだとユーゴを見れば、
「こっちが親玉だったようだ。まんまと騙された」
次の瞬間、アイラの体が浮き、後ろに移動する。同時、今アイラが居た場所に魔獣の鋭い爪が宙を横に切るように動かされていた。そこでユーゴに助けられたことに気付く。
ユーゴは恐怖で硬直しているアイラをその場に下ろすと、
「君はできるだけ走ってここから離れるんだ。ここからは自身の身は自身で守ってくれ。悪いが今の僕では君を守るだけの力はない」
「! ま、待ってください! その体で戦うのですか?」
「それしか今選択肢はないし、逃げるつもりも毛頭ない」
ユーゴは魔獣へと歩みを進める。
「団長!」
だがユーゴは振り向かずに一気に魔獣へと間合いと詰め剣で攻撃する。アイラは眉根を寄せる。
――もう団長も魔力切れなんだわ。
そりゃそうだ。治癒魔法をかけたが、それは動けるぐらいになっただけだ。魔力までは回復は出来ない。ましてや戦うことなど出来る状態ではないのだ。だがそれでもユーゴは魔術師団団長としての責務で挑んでいる。
――どうしたら……。
このままユーゴに言われたとおり逃げるのか? そうしたい衝動に駆られる。本当は今すぐにでもここから走って逃げて安全な場所に行きたい。だがどうしてもそれができないでいた。
――頭ではわかってる。でもこのままユーゴ団長とみんなを残して自分だけ逃げていいの?
倒れているブレッド達を見れば、微かに動いている。死んではいないのだ。アイラはキッと顔を引き締める。
「ここで逃げたら絶対に一生後悔する!」
そしてブレッド達へと走った。魔獣に攻撃をしながら視界の片隅でアイラを捉えたユーゴは驚き見る。
「何をしてるんだ!」
ユーゴの叫びにアイラは応えず、ブレッドの元へとくると、すぐに治療を始める。
「副団長、大丈夫ですか?」
「僕のことはいい……。君は早くこの場から逃げなさい……」
だがアイラは治療をやめない。
――ユーゴ団長があの状態である以上、今ブレッド副団長を治療して加勢してもらうのが唯一の勝算だわ!
「団長は魔力切れです。お願いです。団長に加勢してください」
アイラはそれだけ言うと治療に専念する。その意図を知ってブレッドは、
「すまない」
とだけ言い、それ以上言うことはなかった。だがそれは頭が新種の魔獣も同じ考えだった。自分に不利だと気付いた新種の魔獣は、ユーゴを横に叩き付け吹き飛ばすと、ブレッドとアイラへと攻撃対象を変える。吹き飛ばされたユーゴは、受け身が取れず背中から壁に激突する。そしてその意図に気づき大きく目を見開き立ち上がろうとするが、体力もなく、激痛から動くことが出来なかった。
「ブレッド! 逃げろ!」
いつもと違う切羽詰まったユーゴの叫びに、アイラとブレッドは顔を上げた。そこでユーゴの意味を悟る。だがもう遅かった。新種の魔獣が口を大きく開け魔法をアイラ達目がけて放つ瞬間だった。
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