172 前世のユーゴとの記憶②
初めてこちらを見つけていただいた方へ。
ありがとうございます。
1話がとても短いものになっております。あっという間に負担なく読み終えてしまう短さです。ですので3日に一度、朝7時更新という短いスパンです。(土日の場合はお休みです)
たまに遅れまる場合が(^0^;)
ちょっとの暇な時間の穴埋めになれたら嬉しいです。
ちらほらと、あらすじが挟んでおります。もし興味がありましたら、そちらをちょこっと覗いていただければ、なんとな~くわかっていただけるかとw
よろしくお願いしますm(_ _)m
では、どうぞ!
「では行きます」
ブレッドはもう一体の魔獣へと拘束をするため移動する。それを見送っているとユーゴが声をかけてきた。
「君は何しにいる? 今君がすることはなに? 見ているだけかい?」
「あ……」
今負傷者がいる。そしてこの場に精霊魔法士は自分1人だ。
――治療しなくちゃ。
「すみません!」
そう謝り負傷者のところへ行こうとした時だ。ユーゴに腕を掴まれ引っ張られると腰を抱かれ後ろに大きく飛び退いた。刹那、今アイラがいた場所が爆発した。
「!」
驚いていると、ユーゴの呟きが聞こえて来た。
「もう僕の氷を解かしたか」
「団長!」
ブレッドが叫ぶ。
「大丈夫だ」
ユーゴは戻って来そうになったブレッドを手で制し、手前の魔獣を見る。
――この魔獣は見たことがないな。新種かな? これも厄介そうだね。だがやるのはやはり奥のエンバルアからだな。
右手を翳すと、手前にいる魔獣に向かって魔力を放った。すると今度は紐状の魔力が手前の魔獣を何重にも占めつけ拘束した。
「ブレッド、手前のも気をつけなさい。見たことがない魔獣だ。一時的に拘束はしたが、すぐに解かれる。だから君の拘束魔法で二重にして時間を稼いでくれ」
「はい!」
ブレッドはユーゴの拘束魔法の上から拘束魔法を手前の魔獣にかける。ユーゴは強度が強くなったのを確認すると、胸に抱き抱えているアイラへと視線を落とす。アイラの体は小刻みに震えていた。
「大丈夫かい?」
ユーゴの声かけにアイラはただ小さく頷くことしか出来なかった。自分の置かれた状況を認識した瞬間、恐怖が押し寄せたからだ。
――魔獣が魔法を放ったことに、まったく気付かなかった。もしユーゴ団長に助けてもらわなかったら死んでた……。
初めて死を間近に感じたことで体の震えが止まらない。
そんなアイラを見てユーゴは目を細める。
――イライザが言っていた去年入った子か。こういう現場は初めてだったか。
精霊魔法士はまず戦いの現場に赴くことはない。あったとしても経験豊富な上の者のみだ。アイラのように入って1年足らずの者がこのような戦いの現場に来ることはまずなかった。
「初めてだから恐怖を感じるのは仕方ない。だが君は入って1年足らずかもしれないが、王宮に選ばれ、ある程度訓練をしてきた名のある精霊魔法士だ。守る存在の一般市民じゃない」
「!」
「言ってる意味は分かるよね」
ユーゴが何を言いたいかわかったアイラは震える体を止めようと力を入れながら頷く。それを見てユーゴはアイラを離す。
「どうする?」
「はい?」
「精霊魔法士としての仕事をするか、この場を離れるか、君はどうする? 正直な気持ちを応えなさい」
――それは精霊魔法士の仕事をするか、逃げるか、どちらかを選ばさせてくれると言うこと?
守る存在の一般市民ではないと言いながらユーゴはアイラに逃げても良いと言ってくれているのだ。だがアイラは、
「精霊魔法士としての仕事をします」
と応える。だがまだ震えが止まらず右手で左腕を掴み堪えながら応えるアイラに、ユーゴは更に言う。
「最後の確認だ。その返事は上司に言われたからかい?」
「え……」
「中途半端な覚悟では命を落とすだけで足手纏いだ」
「!」
ユーゴの目は今まで見たことがない威圧に満ちた目だった。始めて怖さを感じ、鼓動が跳ね、体が萎縮する。だがそんなことは今いらない感情だ。アイラは負じとユーゴをキッと睨むように見ると応える。
「違います! 精霊魔法士としての返事です!」
するとユーゴは怖い顔を緩め、なぜか困った顔をし嘆息するとアイラに防御魔法をかけた。
「この防御魔法は強力だが、一度きりのものだ。防御が発動すると消滅するから気をつけなさい」
「ありがとうございます」
「あの魔獣だと僕達は君を守ることはできない。だから自分で身を守るんだ。よく覚えておくんだ。結局最後は自分で自分を守らなくてはならないことを」
だから防御魔法をかけてくれたようだ。
「わかりました」
大きく頷くアイラにユーゴはいつもの笑顔を見せた。
「じゃあ部下をよろしく。そして無理はしないように。無理をしていいのは上司だけだから」
刹那、ユーゴの姿はその場から消えた。次の瞬間、奥のエンバルアの目の前に移動し攻撃をし始めた。
アイラは一度大きく深刻をする。震えはいつの間にか止まっていた。
「怪我人は……」
当たりを見渡し怪我人のいる場所へと走り治療を始めた。
ユーゴはエンバルアに攻撃をしながら分析する。
――なるほど。再生能力もかなり早いな。そして順応性も優れている。資料は間違っていなかったか。
エンバルアを倒した記録は1回だけだったため、エンバルアの情報はほとんどない。その1回がリュカの父であるオーエンだった。その時の会話を思い出す。
「エンバルアを倒した?」
報告を受けた当時の魔術師団長バルターが驚き声を上げる。
「ええ。たまたま出くわしたので」
オーエンは笑顔で応えた。だがその場にいた者は誰も信じる者はいなかった。ユーゴもそうだ。エンバルアは倒すことが出来ない魔獣で有名だったからだ。この国に1体いることは確認されていたため、出くわしたら逃げるのが最優先だった。だがそれをオーエンは倒したと言う。
「オーエン、嘘は良くないぞ」
やはりバルターは信じることなく笑いながら注意する。だがオーエンは、
「嘘じゃないですよ。本当に倒したんです」
と真剣な表情で訴え、事細かく戦った経緯を説明した。その説明は1ミリたりともおかしな所はなく、信じるしかない完璧な説明だった。
「本当にお前が……」
「だからそうだって言ってるじゃないですか」
そこでオーエンの強さが魔術師団全員に浮き彫りになった瞬間だった。
そんなことを思い出しながらユーゴは口元の両端を上げる。
「ほんと悔しいね。僕は能力を使って魔獣の分析するのに、オーエン先輩は感覚だけでやってしまう」
――さすが僕が唯一尊敬する人だ。
ユーゴの目がまたスカイブルーに光る。
――全力でいく。
ユーゴは両手に剣を出現させると、エンバルアの顔の前まで一気に間合いを詰め、2本の剣でそれぞれの目を一突きする。エンバルアは目を押さえ咆哮しながら暴れ始めた。それを見ながらユーゴはオーエンの説明を思い出す。
「エンバルアは頭が良く再生能力も早い。そして魔力に特化している。そのため動きは遅い。だから早さ重視でまず目を狙いました。何故目をって? そりゃあ目ん玉は相手が視覚出来る一番弱い場所だからですよ。あそこはどうやっても鍛えれないですからね。それに脳と体に情報を送っているのも目です。あの小さいものはけっこう色々な大事な機能と繋がっている。その中で目に一番近い場所にあるのが、再生能力を指示している脳だ。目を剣で潰せばその奥にある脳も一気に損傷させることが出来る。そうなれば再生能力はまず抑えらると考えたわけです」
再生能力が強い魔獣なら一瞬で再生するはずだが、エンバルアは時間が経っても絶叫し、のたうち回るだけで目の再生は行われずにいた。
「先輩の分析と一致。ならば!」
ユーゴは剣先を両手で頭上に向けて突き刺すと詠唱する。
「我、ユーゴ・グリフィスの名において水魔法の至高神に告ぐ」
すると空の頭上に大きな魔法陣が現れた。その後水色に輝く白い大きな扉が出現。それを見たブレッドが目を見開き驚きの声をあげた。
「儀礼召喚魔法『王の扉召喚』! じゃあこれは水魔法の至高神の扉!」
そしてユーゴは続ける。
「扉よ開け」
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