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テスト?知らない子ですね  作者: 型破 優位
第一章  常識と非常識
8/25

デート?誤解ですね

以前、前書きや後書きは書きませんと言いましたが、少し小説の書き方についてのことなのでこちらで。


全話少し見やすくなるように工夫してみました。

内容の変更はないです。


それでは、本編です。



 いきなりだが、成程高校には長期休暇が存在しない。学校のシステム上必要ないからだ。

 つまり、土曜日、日曜日も当然必要が無いわけであり、世間が休日、祝日だったとしても来たい人は学校に来てもいいのだ。

 そんなわけで世論は今、校門の前で人を待っている。




「おい、誰だよ九時集合って言ったの。もう三十分は過ぎてるぞ」




 待ち合わせ相手は天沢だ。

 昨日テニスへ行こうとしたところへ呼び止められ、どういう訳かいきなり『明日付き合って!』と言われたからである。

 勿論、男女の関係としての付き合ってでないことぐらいは世論にも分かっているため、浮かれているわけではない。

 寧ろ、警戒しているくらいだ。



 昨日の今日で、しかも二人っきりなのだから警戒しないわけがない。しかし、何に対して警戒すればいいのかは、世論にも分かっていない。

 一応前日の夜に向こうから連絡があり、『朝九時に学校の校門の前集合! 制服で来てね!』とのことだったので、世論は制服を着ている。



 坂田は例の研究室へ行くと言って、八乙女と石田は何をするかは知らないが『邪魔はしない』と言っていたため、何が起きようとからかわれることはない。当然、何か起こすつもりは毛頭ないのだが。

 そこへ、昨日何度も聞いた明るい声が寮がある方向から聞こえてきた。




「ごめーん! 遅れちゃった!」



「どんだけ遅刻してんだよ。時間決めたのお前だろ」



「こっちにだって事情があったんですぅ。察せないと女子にモテないよ?」



「あ、そう。それで何処行くんだ?」




 相手のペースには乗せられない。

 少なくともこれが世論のできる最大限の警戒だ。




「……とりあえず立ち話もなんだし、中へ入ろっか」




 そんな世論の心情を知ってか知らずか、天沢も追及することはせずに校内へ入ろうと提案してきたため、それには乗った。

 彼らが向かったのは、教室棟の隣にある三階建ての建物。

 そこには飲食系や日常用品系、理容系など多種多様な店舗が並んでおり、ちょっとしたショッピングモールみたいになっている。



 教室棟は生徒、先生以外立ち入りが禁止されている。だが、その施設は研究区の人たちも立ち寄るため、制服ではなくスーツの人もチラホラ、私服の人も少数だがいる。

 そして、校内にあるため当然生徒の交流の場としても使われる。現在もたくさんの生徒――ほとんどが一年生――が施設の中で友人との交流を楽しんでいる。

 その一つであるカフェに、世論と天沢は入った。




「よりにもよって、こんなに人の多いところなのか?」



「話ならこういうところが定番かなって思ったんだけど、違った?」



「いや、間違ってはないが……」



 店内を見渡すと、女子数人のグループや、男子数人と女子数人のグループ、男子や女子一人など様々な人数分けがされている。

 だが、ここは全国から集まる高校だ。

 当然、彼氏持ち彼女持ちは入れど、男女二人きりでカフェにいるような強者はまだいない。



 というよりも、この学校のシステム上。いや、普通の学校ですらそういう関係になるのはもう少し日にちが経ってからだろう。




「もしかして、意識したとか?」



「意識してるんじゃなくて、落ち着かないだけだ」



「意識してくれてもいいんだけどなあ?」



「したくても、昨日の今日じゃ出来ねーよ」




 あくまでも自分のペースを守り抜き、基本正直に答える。

 それが世論の天沢に乗せられないための方法だ。




「……警戒してる?」



「してる」



「本当にバカ正直なのね」



「バカは余計だ」




 最初は良い作戦だと思ったが、これには一つ欠点があるのを世論は見つけてしまった。

 ボロを出さないように自分からは何も言うつもりはないのだが、向こうから本題に入らないから話が全く進まないことだ。



 本題を聞くだけならボロも何もないものだが、最近はそういうことは全て坂田が請け負ってくれたがために世論にその選択肢が無くなってしまったのかもしれない。

 実際に、世論は()れったい気持ちを抑えながらカフェの中を見渡していた。

 そこで、たまたま目に入った女子グループの一人と目が合ってしまう。




「やべっ」



「え? いきなりどうしたの?」




 いきなり目を伏せた世論に対し驚く天沢。

 天沢も同じように見渡すと、女子の一団がこちらに向かってくるのが見えた。




「あら、やっぱり比亜里君じゃない。貴方のような方がどうしてこんなところへ?」




 話しかけてきたのは、女子五人グループのリーダー的存在。名前を東雲(しののめ) 藍沙(あいさ)と言う。所謂(いわゆる)

お嬢様だ。




「成り行きだ。お前が気にすることじゃない」



「あらそう。今日は坂田君とは一緒じゃないのね――もしかしてお邪魔だったかしら?」




 東雲が横目で見たのは、天沢。

 天沢は天沢で目を伏せている。

 いきなり知らない人に囲まれれば誰だってそうなるに違いない。




「坂田とは常に一緒にいるわけじゃない。後、お前じゃなければ邪魔じゃなかったが、お前は邪魔だ」



「あら、相変わらずの減らず口のようね」




 会話の通り、世論は東雲を嫌っている。

 彼女の父親は成程高校を支援している大企業の社長なのだが、別にそこは気にしていない。それを自分の成果のように語って自慢されるのが嫌なのだ。



 坂田は相変わらず上手く合わせてはいるが、世論には出来なかった。

 入学して三日目に坂田と東雲は挨拶を済ませていた。しかし、いろいろあって世論と東雲が口論となり、彼女がその時に発した『この高校の設備は私のお父様のお陰なの。もう少し私に感謝の気持ちはないのかしら?』という言葉に対して、『別にお前が何かした訳じゃねーだろ。お前に感謝することなんて一つもないね』と言ってからこんな感じである。




「これ以上話してるとバカが移りそうね。お邪魔して悪かったわ」



「安心しろ。お前は俺とは別の意味でバカだ」




 お互いに捨て台詞を吐いて、東雲は一緒にいた女子達を引き連れて出口へと向かい、世論はそれに睨み効かしながら見送った。




「世論君が私に苦手意識を持ってるのは知ってたけど、まさかあそこまで(きら)ってる人がいたなんて知らなかったわ」



「天沢は苦手といっても少し違う。でも、あいつは俺には絶対に合わない。向こうも分かってるだろうよ」




 世論も別に東雲の率いる女子グループが嫌いなわけではない。入学して三日目に挨拶をしたもう一つの女子グループのリーダーとは、世論も普通に接している。

 だが、東雲だけは無理なのだ。

 ふと、天沢を見てみると、また目を伏せてしまっていた。

 彼女も今ので何か思うところがあったのだろう。




「とりあえず、なんか飲もう。俺はカフェオレにするけど、天沢は何がいい?」



「……あ、うん。同じのをお願い」



「分かった」




 せっかく無料なのだ。

 何も頼まないのは勿体ない。

 カウンターには誰も並んでいなかったため、すぐ注文をすることが出来た。




「すみません。カフェオレ二つ……と、イチゴのショートケーキとチョコのショートケーキ、チーズケーキを一つずつお願いします」



「承りました。少々お待ちください」




 本当はカフェオレ二つだけのつもりだった。だが、天沢は女子ということもあり一応甘いものでも、ということで、世論の考える中にあるケーキの中でも、二大政党であるイチゴとチョコのショートケーキ、さらに女子が好きそうなチーズケーキを注文した。友達付き合いの関係上、それくらいの気配りはできるのである。

 勿論、無料だからこそできたのもある。

 注文した物を運び机に置くと、案の定天沢の目が一瞬にして輝きだした。




「わぁケーキだ! 世論君気が利くね!」



「俺にもこれくらいはできる」



「どれ取っても良いの?」



「どれでもどうぞ」




 世論はカフェオレを手に取り、一口飲む。

 無料とはいえ、とてもまろやかで美味しいものだった。




「いっただきまーす!」




 一方の天沢というと、チーズケーキを美味しそうに頬張っていた。

 ここだけ見ると甘いものが大好きな活発系女子なのだが、これがここの学校の生徒なのだから癖が強い。




「美味しい♪ 世論君は食べないの?」



「いや、全部食べれるなら食べてもいいぞ。余ったのを貰うから」



「そっか。なら全部貰うね!」




 こういうとき、彼女の空気を読んでくれる力は本当に有難い。本当に余った時だけ食べると言っても、謙遜して一個だけ残す人がいるが、意図も何も無しに言ったのに謙遜されると、少し気まずいのだ。

 ならば最初からハッキリそう言え、と言う人もいるだろうが、そうもいかないのが現実だ。

 天沢もケーキを全て食べ終えてカフェオレを一口飲み余韻まで楽しんだところで、ようやく本題に入った。




「そうそう。今日ここに呼んだのは当然理由があるのだけど、先に一つ質問するね。真緋流君とは昔からの付き合い?」



「坂田? 入学式の時が初対面だ」



「そっかー」




 何を聞いてくるのかと思えば、坂田のことだった。もしかしたら、恋愛相談なのかもしれない。

 世論自身、彼女が自分に恋心を抱くのは無いにしろ、坂田になら有り得るのだと思っているのだから。




「それならそれで別にいいんだけど……」



「……?」




 だが、その考えは一瞬にして消え去った。

 なんというか、世論でも分かるほど雰囲気が違う。少なくとも恋心に悩んでいる様子ではない。世論にもそういうことはわからないため予想でしかないが、間違ってはいないだろう。




「世論君はさ。真緋流君についてどう思う?」



「どうって言われても、普通に良い奴だよ」



「他にはない?」



「他にか……話しやすいし、コミュ力もあるな。基本的に誰とでも仲良く喋れてる」



「昨日の感じなら確かに納得できる……それで、もっと他にない? 例えば得意なスポーツとか趣味とか」




 これはこれで乗せられている気がしてきてはいるが、昨日のイメージから笑顔がチャームポイントであろう彼女がかなり真剣な顔をしているところを見ると、恐らく意図はないのだろう。

 最早勘でしかないが。




「スポーツは苦手だな。水泳は水か怖くて絶対にできないって言ってたし、バスケはシュートとその場でドリブルは出来てたけど、試合になったら全くダメだ。体力が無いからな」



「それは意外……スポーツ万能かと思ってた」



「それは俺も同じ。後は趣味か……そういえば、趣味かどうかは分からないけど、確か人の身体の構造に興味があるとかなん――」



「それよッ!」



「――うおっ!? いきなりどうした!」




 世論は聞いたとき特に何も思わなかったのだが、天沢は『身体の構造に興味がある』と聞いた瞬間にバンッ!と机を叩いて叫んだ。

 そのおかげで、店内の視線が一気に集まる。

 それにはさすがの天沢も堪えたのか、顔を赤くして一礼してから椅子に座った。




「ご、ごめんね……そ、それで真緋流君は人の身体の構造に興味があるんだよね?」



「そうらしいよ」



「なるほど。それでか……」



「ごめん。何の話?」




 天沢が一人でウンウンと納得してしまっているが、世論にとっては何に対して納得したのかさっぱりだ。

 天沢はそんな世論に気づいて、説明を始める。




「ごめんごめん。私は世論君も知ってる通り、話してるときの人の雰囲気で何となく言いたいことが分かるんだけど、真緋流君だけは全くって言って良いほど分からなかったの」



「……それで?」



「だからどう、というわけではないのだけど、私はこの技術を覚えてから、雰囲気からその人の言いたいことを理解できなかったことがないの。それで、気になっただけだよ」




 天沢はそこまで言うと、残っていたカフェオレを一気に飲み干した。ここまで言われると坂田について自分に何かを訴えている、というのは世論でも理解することが出来たのだが、その何を訴えたいのかが未だに分からない。




「つまり、何が言いたいんだ?」



「……率直に言うと、私は真緋流君を信用できない。恐らくそこは、恵哉君や直泰君も一緒ね」



「信用できない? 坂田が?」



「そう。なんとなくだけど、真緋流君は不気味なのよね」




 天沢の答えは、世論の考えていた物よりも遥かに上回っていた。

 恋心どうこうの話ではない。寧ろ逆だ。自分の知らないところでここまで関係がギクシャクしていたとは思わなかったのだ。




「それで、何でそれを俺に言うんだ? 八乙女や石田も同じ考えなら俺よりよっぽど話しやすいだろ」



「そこなんだけど、彼らは彼らで信用できないのよね……雰囲気で何を言いたいのかがある程度分かるだけ真緋流君よりは信用できるのだけど……いや、直泰君も分からないわね……」




 この話から行くと、一番信用されているのが世論と言うことになる。いつからそんな信用を勝ち取ったのかは知らないし坂田達には悪いが、案外悪い気がしない。人から信用されるのは嬉しいものだ。




「逆に、俺が信用できる理由は?」



「世論君はバカだけど――いや、バカだからこそ、裏表が無いじゃない? だからよ」



「ああ、はいはい。どうせ俺はバカですよ」




 前言撤回。

 悪い気がしないのは確かだが、全く嬉しくない。




「あのね、世論君。バカって言っても、いくつか種類があるの。確かにどうしようもないって場合もあるけど、世論君は違う。世論君は勉強が出来ないバカなのかもしれないけど、人の気配りがちゃんと出来る人よ」



『少しは人の事も考えろよこのバカ!』



「――!」




 人の気配りがちゃんと出来る。

 その言葉に、何かが世論の脳裏を(よぎ)った。




「……どうしたの?」



「いや、なんでもない」




 当然、その変化は天沢も感じ取り首を(かし)げる。世論はそれを取り繕うかのようにカフェオレを一気に飲み干した。




「とりあえず、私が話したかったのはその事。世論君と真緋流君の仲を壊したいわけじゃないし、私も仲良くしていきたいとは思うのだけど、一応、念のためね」



「そういうことね」




 理解の意味を示すと、話はこれで終わり、とでも言うように天沢は席を立ち、お皿を片付けに行った。世論もそんな彼女の後ろについていき、片付ける終わるのを待つ。

 お皿やカップを返却口から返した二人は、カフェから外へと出た。そして今頃ではあるが、実は世論には一つだけ、個人的に気になっていることがあった。




「天沢はさ、怒ってないか?」



「ん? いきなりどうしたの?」



「俺らがイカサマしたことだよ」




 例え遊びだったとしても、イカサマをされても良いという人は少ない。世論はよく使うため慣れているが、嫌な人は本当に嫌がるのだ。




「あー。別に怒ってないよ? 真緋流君に終始良いように動かされていたのは悔しいけどね――もしかして、心配した?」



「いや、別にそういうわけじゃねーけど」



「ふふふ。素直じゃないなー♪」



「だから違うって」




 さらに前言撤回。

 察しが良すぎるのも考えものだ。

 というよりも、世論はそれについて昨日、自己体験を持って知ってたはずなのに、その場の利便性だけで判断してしまったのがそもそもの間違いだったのだ。

 それから少し歩いて、二人とも今日はもう帰るということで校門でパネルをタッチし、外へ出た。

 ここからバス停への道と寮への道は完全に別れる。つまりは、ここで解散ということだ。




「今日はありがとうね。世論君」



「いや、別にいいよ」



「じゃあ、次会うのは来週の木曜日かな? 学校行ってもやることは無さそうだし」



「自由登校なんだから、そこは自由だろ」



「それもそっか。それじゃあまた来週ね」




 そう言って天沢は寮の方へと歩き出したが、彼女の去り際の顔をみて腑に落ちない事があった世論は、追いかける形で近づきながら彼女を呼び止めた。




「おい天沢」



「ん?なあ――いった!?」




 そして、振り向いたところに一発デコピンをかました。




「いったぁ……いきなり何するのよ」




 いきなりデコピンされた天沢はジト目で世論を見る。だが、世論の雰囲気から何かを察したのか、ジト目を止めてニッと笑顔を作り、デコピンを返した。




「イテッ」



「お返し♪ またね!」




 今度は笑顔で寮へと帰っていく天沢。

 予想より痛かったデコピンに額を撫でながら、世論も帰るためにバス停へと向かい、帰路へついた。



 そして、その日から『ゲーム大会』当日までの四日間。坂田からの連絡の一切が、途切れてしまった。

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