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あの娘は発電機(She Is Electric Generator)  作者: 枕木悠
第五章 ジェネレート
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第五章⑭

 時間がゆっくりと流れているような気がした。

 アキラは報道陣に囲まれ、容赦なく飛んでくる質問に律儀に答えていた。その答えは全部、嘘だった。

「すいません、これから最終チェックがあるので」

 アキラはそう言って報道陣から離れた。そしてスクリュウを取り囲む、研究所の方に向かった。ミヤビたちもアキラに続く。大森はその様子を優しい表情で見ていた。アキラがやろうとしていることを知っているのに、その表情だった。

 簡単に魔女たちは研究所の中に入れた。詰め所にいる警備員のおじいさんはミヤビたちの素性を確かめようともしなかった。アキラの社員証だけ見せればよかった。

「拍子抜けね、」カノコが肩を回しながら言った。今日のカノコは黒いポロシャツに、チェック柄のロングスカートに、茶色のブーツ、というステージ衣装だった。「私が暴れる必要はなかったわけだ」

 研究所に人は大勢いた。通路を歩いていると白衣を纏った人に何度もすれ違った。彼らはスクリュウの加速に向けて忙しそうに歩いている。しかしアキラに挨拶をすることを忘れなかった。溌剌とした表情で、スクリュウが順調だと言った研究員もいた。彼らは魔女たちのことに無関心だった。それどころではない、という感じだった。チェンジ・エネルギアの思想に溢れ、その目的の完遂のために、視界と思考の幅は極端に狭まっているのだろう。

 ミヤビたちがスクリュウを壊そうだなんて、ここにいる、誰一人として気づいていないはずだ。

 いや、ここにいるであろう、魔女たちを除いて。

 通路は曲線を描いていた。スクリュウの内部に入るためにはエレベータに乗る必要がある。そのエレベータの扉の前に魔女が姿勢良く立っていた。

 静かに佇んでいた。

 煌めくブロンドの髪。

 光の魔女だ。

 全員に緊張が走った。

「マルガリータ」

 彼女を見てミアが名前を呼んだ。

 マルガリータはミアのことをじっと見て、微笑んだ。「久しぶりね、ミア」

「そこを退いて」

「ええ、もちろん、」マルガリータはエレベータのボタンを押した。すぐに扉が開く。「さあ、どうぞ、皆さん、こちらへ」

「何のつもり?」アキラがマルガリータを睨み見て言った。

「イリスのところに案内します、イリスは塔の中にいます」

「何のつもり?」アキラがもう一度言う。

「イリスに会いに来たのでは?」

「スクリュウを壊しに来たのよ」

「それならこのエレベータに乗る必要がありますね」

「それは分かってる」

「乗るわよ、」ミアが言ってエレベータの中に入る。「乗らなきゃしょうがないでしょ?」

 エレベータは狭くて、ミアとミヤビとアイナとニシキが乗ったら一杯になった。マルガリータが外からボタンを操作した。「私たちは後から向かいますので」

 エレベータの扉が閉じて、動き出した。

 体感的に凄いスピードでエレベータが動いていることが分かる。

 階数表示は一階と、二階だけだった。二階がスクリュウの中枢。塔の天辺なのだろう。

「……急に止まったりしないよね?」

 沈黙の中、ニシキがそう言ったタイミングでエレベータが静かに止まり扉が左右に開いた。入って来た方と反対側の扉が開いた。

 ミヤビは夢かと思った。

 エレベータを出るとそこは。

「教室?」アイナが声を上げる。

「教室だわ」ニシキが言う。

「教室だ」ミヤビはミアの後に続き教室に足を踏み入れる。

 どこの教室の再現か、分からないけれど、ここの風景は紛れもなく教室だった。

 教室の前方の黒板から遠い方の扉がエレベータの扉になっていた。

 木製の机がきちんと整理整頓され、並んでいる。

 エレベータの扉の反対には窓があり、錦景市の夜景が広がっていた。

「ようこそ、我らがスクリュウへ!」

 声がしてそちらを見る。

 黒板の前、教卓の上に座っている金色の魔女がいる。

 彼女の声だ。

 少女の声だ。

「イリス」ミアが彼女を見て、静かに言う。

 ミヤビはイリスに会うのは初めてだ。

 子供じゃないかって思う。

 普通の少女だ。

 その普通の少女の横に。

 紫色のドレスを纏ったハルカが佇んでいる。

 ハルカは髪を掻き上げ、四人を見て、表情が消えていたところから。

 ゆっくりと得意のハルちゃんスマイルを見せた。

「ハルちゃん!」アイナが叫ぶ。

「ハルカ!」ニシキも。

「ハルカ!」ミヤビもがなった。

「ハルカ!」ミアが怒鳴る。「あなた真実を知ったのね!?」

「真実って言うのは、世界が四つあって、これから世界が終わる、ということ?」

「信じたのなら!」ミアは怒鳴り続ける。「どうして笑っているのよ、笑っていられるのよ!?」

「やっと分かったんだよ」ハルカは笑顔を崩さない。

「分かった?」

「そう、マヨちゃんの夢のことについて」

 ハルカは窓の傍に行き、星座を眺めた。「マヨちゃんの夢の舞台はここだった、アリスはスクリュウにいたんだよっ!」


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