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あの娘は発電機(She Is Electric Generator)  作者: 枕木悠
第五章 ジェネレート
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第五章⑬

 錦景市は八月十四日の日曜日。

 その深夜二十四時にスクリュウが加速すると、パイザ・インダストリィは公式の声明を出した。

 その五時間前。

 錦景市は夜の七時。

 ハルカの欠けたトワイライト・ローラーズの四人、それから占い師のマシロと風の魔女のカノコはアキラのテラノに乗ってスクリュウに向かっていた。

 車内のBGMは錦景女子高校軽音楽部、シナノのロックンロールだった。アイナがCDを持っていてテラノのステレオに入れて回転させた。車内は凄く賑やかだった。

 最初にミアが歌い始めて。

 いつの間にか、全員で歌っていたからだ。

 シナノのロックンロールを。

 怒鳴るように。

 叫ぶように。

 濁声が響いていた。

 それに心が震えていた。

 体中が熱くなった。

 沸き上がるように声が出た。

 これから来る景色は、どんなものだろう。

 全く想像が付かない。

 なんとなく分かるのは。

 綺麗なことではないだろう、ということ。

 決して優雅ではないだろう、ということ。

 赤いテラノに響く歌のように、お世辞にも素敵だなんて言えない景色。

 イカレちまった景色がそこにはあるのだろう。

 スクリュウを。

 日曜日に破壊する。

 曲が変わる。

 この曲はシナノの歌でもあるけれど。

 ミヤビの歌でもある。

 その歌詞はミヤビが書いたのだ。

 卒業してしまう彼女に向けて歌詞を書いた。遠くに行ってしまう人に向けて歌詞を書いた。離ればなれになってしまう悲しみを書いた。悲しみとは何かを変えるエネルギアになる、ということを書いたんだ。

「着いたわ」

 アキラのテラノはスクリュウの袂にある駐車場に滑り込み、きちんと白線に沿って停車した。駐車場には警備員が沢山いて厳戒態勢、という感じだった。中に入れない可能性もあると思ったけれど、アキラが社員証を見せると簡単に中に入れた。ミヤビたちがどんなことをしたって、スクリュウは壊せない、というイリスの判断なのだろう。

 駐車場には様々なメディアの報道関係者が集まっていた。バズーカみたいなカメラを肩に乗せた人が沢山いる。テレビで見るニュースキャスタの顔も見える。スクリュウの加速は、メディアの注目度も高いようだ。スクリュウは下から強くライトアップされ、雲が疎らに散って薄汚れた夜空に、不気味にその巨大な体躯をさらしている。

 ミヤビはテラノの後部座席から降り下からスクリュウを見上げ、とても大きいと感じた。よくこんなものを山中に作り上げたものだと思う。周りは濃い緑だ。

「大きいだけね」ミアがミヤビの隣に立ち、言う。「大きいだけだわ」

 ミヤビはフェンダのギターケースを背負い直し頷く。「うん、大きいだけ」

「私たちなら、きっと出来るわ、トワイライト・ローラーズに不可能はない、そうよね?」

 ミヤビとミアとアイナとニシキの四人はテラノの後ろで円陣を組んだ。

 そして気合いを入れるために「みゃあ!」と叫んだ。

 なぜか「みゃあ!」と叫んだんだ。

 そのタイミングで。

 テラノのクラクションが強く鳴った。

 アキラが強く叩いたのだ。

 不協和音が響いて。

 報道陣の注目が赤いテラノに集まった。

 カメラが一斉にこちらを狙う。

 報道陣に囲まれ、取材を受けていたパイザ・インダストリィの社長の大森が朗らかな笑顔で言った。

「あ、皆さん、遅ればせながら到着したようです、我らがスクリュウのプロジェクト・リーダである、里見アキラ博士です!」


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