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騎士志望の伯爵令嬢ですが、小さな紳士の公爵令息のもとで恋と仕事に邁進します!  作者: 風見ゆうみ


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4  息の根を止めるつもりですか!

 ルイス様は私とアットンを交互に見たあと、慌てた顔になる。


「ああ、キーファ、立たせていてすまないな」

「いえ、僕は勤務中ですからお気遣いなく」

「こっちの席が空いているから、キーファも座ってくれないか」


 ルイス様にお願いされ、アットンは少し困った様子だった。

 騎士が仕事中に座るのは褒められることではない。アットンが躊躇する気持ちは理解できた。

 ルイス様もそのことに気がついたようで「座ってくれ。これは命令だ」と言い直した。


 命令と言われてしまえば仕方がない。アットンは一礼してルイス様の隣の席に座った。 


 ルイス様はアットンの隣に座り、彼について話し始める。


「知っていると思うが、キーファは公爵令息だったんだ。今は、キーファの兄上が公爵の座についているんだよな?」

「はい。両親が早くに亡くなりましたので、兄が公爵位を継ぎ、私は父が複数持っていた爵位のうちの一つの伯爵の爵位を譲り受けました。ですが、騎士でいる間は親戚が仕事を請け負ってくれています」

「どうして騎士の道を選んだんですか?」


 伯爵として生きていったほうが、騎士よりも楽な生活が送れるはず。それなのに、どうしてこの道を選んだのか気になった。


「子供の頃の夢でね。兄が夢を叶えろと背中を押してくれたんだ」

「……そうだったんですね」


 騎士が夢だったなんて、私と一緒だから、勝手に親近感を覚えてしまう。

 アットン伯爵……いや、屋敷にいる間な騎士仲間だからアットンのままでいこう。前に聞いた時、本人もそれでいいと言っていたしね。


 普段の彼は口数が少ない。それなのに、今日は話を続けた。


「小さい頃に伯爵の爵位を譲ってもらったものだから、当時は叔父に領地を管理してもらうことになって、今もその状況だ。あと数年後には騎士をやめて、伯爵の仕事に専念するつもりだよ」

「……そうなんですね」


 憧れて騎士になった自分が言うのもなんだけど、どうしてアットンはわざわざ騎士の道を選んだのかしら。

 子供の頃の夢と言うのだから、何かきっかけがあったんでしょうね。もしかして、私と同じで誰かを守りたかったとか?


「キーファは俺と同じ公爵令息だから、あんな男とは違う!」

「何の話ですか?」

「余計なお世話かもしれかいが、 俺はフィリアに幸せになってほしい。だから、キーファとお付き合いするのはどうだろうか!」

「ありえません!」


 ルイス様は「名案を思いついた!」という感じで、とんでもない提案をしてきた。気持ちはありがたいがアットンにも悪いし、すぐに却下した。


 ルイス様は首を傾げて私を見つめる。


「どうしてだ? フィリアとキーファはお似合いだと思うんだが……」

「そんなわけがないじゃないですか! それに、そんなことを言ったら、ミュウ様に怒られてしまうのではないですか?」


 ルイス様が無理に婚約させようとしているわけではないことはわかっている。だが、断る理由は彼が納得できるもののほうがいいと思った。


 ミュウ様はアットンのことを恋愛対象として見ていることは、ルイス様もよく知っている。


「キーファはミュウに興味はないだろう? ミュウは5歳になったばかりだし、アットンとは十歳以上離れているんだから」


 たしか、アットンは私より一つ上の二十歳だったと思う。

 ということは15歳差。

 これが二人共、大人なら許されるだろうが、ミュウ様はまだ子供だ。

 アットンと美男美女の年の差カップルになったとしても、あと十年後くらいじゃないと、世間からの目は厳しいでしょうね。


「どうだ、二人共? キーファには婚約者はいないし、フィリアももう浮気男は嫌だろう? キーファは絶対に浮気なんてしないぞ」

「む、無理です! アットン卿は、私のことを嫌ってるんですよ? そんな人と付き合ったりしたら息が詰まりそうです!」

「そ、その時は、キーファに人工呼吸をしてもらえばいい!」

「嫌ですよ、そんなの! 私の息の根を止めるつもりですか!」

 

 ケーキを食べる手を止めて叫んだ時だった。


「本人の前でよくもまあ、言いたいことを言ってくれるね」


 アットンは貼りつけた様な笑みを浮かべて言ったあと、大きな息を吐いた。


「ご、ごめんなさい」

「別にいいよ」


 一つにまとめた金色の髪を揺らして、かぶりを振る。


「ルイス様、僕もお断りさせていただきます」 

「キーファ、なぜフィリアには、そんなに刺々しい態度をとるんだ? 彼女は良い子だぞ?」

「……ミュウ様からの命令でして」

「ミュウから? どういうことだ?」


 ルイス様が眉根を寄せて尋ねると、アットンは苦笑して答える。


「ミュウ様から、屋敷内ではノイズ嬢とは必要以上に話さないこと、彼女には近付かないこと、出来れば目も合わさないように、と命令されております」

「はあ? フィリアと話すなって? しかも、目も合わすなって、どういうことなんだ」


 ルイス様が大きな声で聞き返した。


 ミュウ様はどうしてそんなことをアットンに言ったのかしら。

 もしかして私、ミュウ様に嫌われてる?

 ミュウ様に何かした覚えは一切ないんだけど!?

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