44 味方ですよ!
アンケートの件については、閣下が上手く処理してくれ、私自身は特に困ることもなく日は過ぎた。
ラナの件も心配することはなくなったが、学園行事がなくなるわけではない。
多くの親は自分の子供の学園生活の一部をのぞいてみたいものらしい。普段、大人が入れない学園内に子供と一緒なら入れるということで、スポーツ大会の日は、たくさんの保護者が来園する。
スポーツ大会への参加は個人の希望なので、ラナの件が落ち着いたため、ルイス様は出場しないことを決めている。
でも、お友達の応援に行きたいと言われたので、参加しない人は学園が休みの日ではあるけれど、ルイス様は登園することになった。というわけで、私たちが護衛に付くことになった。
学園内に入る際に身分確認はあるが、平民も多くいるため、身分を証明するものを持っていない人が多く、本人確認はあってないようなものだった。
となると、ルイス様の身の危険が高くなるということだ。
ルイス様の身の安全をお守りするように、公爵閣下から、メイドの姿で付き添うように指示があった。
さりげなく彼を守り、危険を気づかせないことで、その日は楽しく過ごしてもらいたいらしい。
私の両親も弟のリングスが出る競技があるからと、リングスが出る時間だけ見学しに行くらしい。
公爵はその話を知っていて、その時間は私もリングスを観に行っても良いと言ってくれた。
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当日の日の朝は空は晴れ渡り、気温も心地よい日になった。
自分は競技に参加するわけではないからか、朝からルイス様は浮かれていた。
応援することがそこまで楽しみなのか。気持ちは分からないでもないが、浮かれすぎている気がする。
「ご機嫌ですね」
「ああ! ラナ嬢は兄上を応援に来るのだよな?」
「ええ。両親と一緒に来るみたいです」
笑顔で頷いたあと、以前に伝えておいたことだが、再度伝えておく。
「申し訳ございませんが、私もその時間は弟を応援したいので仕事を抜けますね。公爵閣下からは許可をいただいています」
「もちろんだ。……というか、俺も一緒に行こう。未来の義理の兄上を応援しなければならないからな!」
「未来の兄上かどうかは知りませんが、ほとんど面識のない公爵令息に突然応援されても、私の弟は困惑するだけでしょうね」
「では、今日はしっかりとご挨拶させてもらうとしよう。もちろん、ご両親にもな! そして、あわよくばラナ嬢との婚約を許してもらうんだ!」
学園に向かう馬車の中で、瞳をキラキラさせて言うルイス様を生温かい目で見ながら、私は静かに首を何度も縦に振った。
「そうですね。上手くいくといいですね」
「なんだ、フィリア、その可哀想なものを見るような目は!」
「頑張っていただきたいな、と思いまして」
「そんな風には見えないが……」
「私はいつだって、ルイス様の味方ですよ!」
この言葉は嘘じゃない。
ルイス様の恋を応援しているし、ルイス様が義理の弟になるのも嫌じゃない。だけど、私よりも先に結婚してほしくない。これは、なんというか、結婚願望がある人間のワガママというか……!
そんなどうでも良いことを考えている間に、私たちを乗せた馬車は学園に着いた。
見学者の家族は私服。学園に通っているが、今日は応援だけという人間は制服。競技に参加する人はスポーツウェアを着ているので、誰が競技の参加者かはすぐにわかる。
学園の運動場はとても広く、あらゆる競技会場になっていて、体育館でも競技は行われている。
ルイス様のお友達は運動場で団体でやる球技に出られるらしく、予選はすでに始まっているらしい。
団体戦は14歳以下と15歳以上のチーム分けがされているらしく、チームのメンバーも年齢や体格などが均等にばらけるように編成されているらしい。
今日の騎士隊はアットンがいるチームがルイス様付きになっていて、人でごった返しているというのに、集団で動くものだから、他の人には邪魔で仕方がないといったところか。
私の場合は、騎士たちがルイス様の前後左右をがっちり固めてくれているので、他人にぶつかる心配もなく歩きやすい。
周りの人間は何事かと不思議そうな顔で騎士たちに視線を向けている。しかし、帯剣している鞘に公爵家の紋章が入っているのを見て、納得した様ような顔をしていた。そして、何もなかったかのように、各々が進みたい道へ進んでいく。
普通の人は貴族も含めて、そんな反応だった。けれど、そうではない人物もいた。
運動場を横切っている際に、強い視線を感じ、思わず足を止めて振り返る。すると、私を見つめていた彼と目があった瞬間、声を上げそうになった。
「どうした、フィリア?」
「あ、いえ、申し訳ございません」
足を止めてしまっていたらしく、ルイス様に声を掛けられた。慌てて、少し先で待ってくれていたルイス様に追いつく。
「何があった?」
「いえ。知り合いがいたもので……」
「挨拶したかったのか?」
「大丈夫です。向こうは私を覚えているかどうかわかりませんし」
「そうだったか? フィリアのことを見つめている男がいただろう? 知り合いのように見えたが違うのか」
どうやら、ルイス様も彼の視線に気がついていたらしい。もしかして、私を見ていたんじゃなくて、ルイス様を見ていた?
「今の男ですが、連れてまいりましょうか」
騎士の1人に聞かれ、ルイス様が無言で私を見てくるので首を横に振る。
「私は特に用事はありません」
「ならいいが、あの視線、ただの知り合いに送るようには思えなかったがな」
ルイス様は訝しげな顔で私にそう言いつつも、止めていた歩みを再開した。




