43 何が悪いんです?
「悪い、悪い。わかってるって。一応、聞いてみたかっただけだよ」
アットンの友人は苦笑しながら、アットンを指差す。
「こいつも君はそういうタイプじゃないって、強く否定するから……いって! 何するんだよ!」
話の途中でアットンが友人の足を蹴ったので、脛を押さえつつ抗議の声を上げた。すると、アットンがしれっとした顔で応える。
「先輩、申し訳ございません。足が当たってしまいました」
「いや、どういう状況だよ。……ってか、こういう時だけ先輩呼びか」
「何のことでしょうか」
アットンは惚けたような表情から、厳しい表情に変化させると、私に視線を移す。
「ノイズ嬢に伝えておきたいんだけど」
「……何でしょうか」
「君が何も悪くないなら、君は今まで通りにすればいい。嘘はいつかバレるし、嘘を信じ続ける馬鹿なんて相手にしなくていいと思う。下手に暴れると、相手に良い材料を与えるだけだからやめたほうがいい」
「うっ……!」
どうして、アットンは私の性格をよくわかっているんだろうか。
アットンの言葉に言い返すことが出来ず、言葉をつまらせる。そんな私を見たアットンの友人は笑う。
「はは! 本当にわかりやすいな! ノイズ嬢、君と直接話ができて良かったよ。わざわざ聞きにいくわけにもいかなかったしさ」
「私も話せて良かったです。噂は噂ですから、自分の目で確かめてから判断していただけると助かります」
「そうだよな。キーファにもそう言われた」
うんうんと頷く彼から、アットンに視線を移して尋ねる。
「あなたは噂のことを信じてなかったの?」
「君に確認しようとは思ってたけど、どうせ作られた噂だろうと思ってた」
「なら、どうして聞いてくれないのよ」
「君、僕のこと嫌いなんだろう? なら、話かけてほしくないんじゃないの?」
「べ、別に嫌いなわけじゃ……」
否定しようとしたけれど、何故か恥ずかしくなってやめた。
嫌いじゃない。なら、好きなのか。そう問われたら、なんて答えたらいいかわからない、
口ごもった私を見て、彼の友人はニヤニヤと笑う。
「へえ。そういうことかあ」
「そういうことって何です?」
「いや、なんだかんだいって、女なんだなあと思って」
馬鹿にされたような気がして、怒りを鎮めながら尋ねる。
「女で何が悪いんです?」
「悪いとは言ってないだろ。そんなにカッカするなよ」
「彼女を侮らないほうがいいですよ。少し前に騎士の二人を相手にして勝ってますから」
焦った表情で言う友人に、アットンは冷ややかな目をして続けた。
「彼女は騎士として雇われたんです。仲間を侮辱しているように聞こえる発言はやめたほうがいい」
「……そうだったな」
眉尻を下げる友人を呆れた目で見つめたあと、アットンは私に視線を戻す。
「許してあげてもらえるかな」
「……謝罪してもらってないわ」
「だ、そうですよ」
「すまなかった」
嫌がる様子もなく、すんなりと謝罪してくれたので受け入れてから、頭を下げる。
「こちらこそムキになってしまい申し訳ございません」
「いや、こちらこそ本当に悪かった」
本当に反省している様子だったので、私の気持ちも和らぐ。
世の中、嫌な人ばかりじゃなくて良かった。
「そうだ。ルイス様から連絡があったと思うけど、学園行事の護衛は僕も行くからよろしくね」
「学園行事って、スポーツ大会のこと?」
「そう。また君が変な人間に絡まれないように、君の監視役も兼ねるように言われてるから」
「自分の身は自分で守るわよ」
「そういうわけにはいかない」
微笑むアットンが私のことを馬鹿にしているのか。それとも、本気で心配してくれているのかわからない。
「迷惑をかけないようにするわ」
辺に意識していることを悟られないよう、私は必死に平静を装った。




