40 見極める必要があります!
少しの沈黙のあと、我に返ったルイス様が口を開く。
「いや、そういう問題ではないだろう。ラナ嬢が決めることなんじゃないのか?」
「ラナはまだ子供です! 姉の私がデートの相手をしっかり見極める必要があります!」
ルイス様やラナちが通っている学園は、テストに受かれば、貴族だけでなく平民であっても、学園に通うことができる。
学園内では親の爵位のことは気にせず、学園生活を送ることができるということが有名だ。
下位貴族や平民が、高位貴族と知り合えるという、普通の状況ではありえないものだが、子供の頃は特に親の爵位なんて気にしていない。大きくなるにつれて、自分で上下関係がわかっていくシステムにもなっている。
普通は子供の頃に仲良くなってしまえば、高位貴族の子供は友人が平民であっても気にしない子も多い。
でも、平民の子は相手の父親の偉大さを知って萎縮してしまい、一足早く社会の縮図を知ることになる。
平民も多く通っているので、平民を馬鹿にしているような貴族は、この学園には最初から入学しない。
学園生活を共にして、平民や低位貴族の中から、信頼できて、仕事が出来る、将来の側近候補を探そうと考える親もいる。
もちろん、自分の家に雇いたい、なんてなったりした時は、改めて身辺調査をする。
というか、小さい頃からの付き合いなら、親が勝手にしているとは思う。
それにしても、ラナと勝手にデートをしようだなんて許さないわ。私に許可を取ってもらわなくっちゃね!
シスコンだと言われてもいいわ。年の離れた妹が可愛くても別におかしくないでしょう。
ラナは昔からワガママを言わないいい子だったから余計にだ。
意気込んでいる私とは違い、ルイス様はふうとため息を吐いて呟く。
「お前は姉だから、そういうことを言える権利はあるが、俺には言えない」
「……どういうことですか?」
「ラナ嬢は、言いたいことを言えない優しい女性だろう?」
「言いたいことを言う優しい女性もいると思いますが……」
「言いたいことを言うのが優しさなのか? それで相手の心は傷ついたりしないのか?」
ルイス様が眉尻を下げて私を見つめる。
この質問に答えるのはとても難しい。個人差や考え方の違いもあると思う。
私は少し考えてから、自分の考えを述べてみる。
「私の意見になりますが、正直に話をすることも優しさだと思います。ですが、絶対だとは言いません。相手や内容にもよると私は考えています」
「相手にもよるのか?」
「はい。正直なことを伝えるにしても、悪口になるようなことは言ってはいけないと思います。相手のためを思って話すことも大切だと思います」
「そうか」
ルイス様は深刻な表情で頷いた。
空気が重くなってしまったので、話題を戻す。
「ところで、ラナの件なのですが……」
「ああ、話題がそれてしまったな。どうやらラナ嬢は、エレスト弟に呼び出されて、彼がスポーツ大会で注目を浴びたり良い成績をおさめられたら、デートをするという約束を無理矢理取り付けられたみたいなんだ」
「無理矢理ですか……」
弱みを握られたとか、何かトラブルでもあったんだろうか。
「わかりました。とにかく、ラナに詳しい話を聞いてみたいと思います」
ルイス様がスポーツ大会に出るのも一大事だが、ラナが変な男とデートしないといけないなんて聞いた以上、黙ってなんていられないわものね!
しかも、相手はエレストさんの弟。絶対に何かあるに違いない。ルイス様のためにも、私にできることはないか確認しなくちゃ。




