↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
騎士志望の伯爵令嬢ですが、小さな紳士の公爵令息のもとで恋と仕事に邁進します!  作者: 風見ゆうみ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/41

36  そんなことをするんですよ

 ……どうして、私の仕事が遅いことになってるの?


「ちょっと」


 文句を言おうとすると、エレストさんは私を睨む。


「ノイズさんは黙っていてください。急ぎですから、よろしくお願いしますってお願いしたのに、こんなに遅くなるなんて、どういうことなんですか! ああ、キーファ様、申し訳ございません」

「ありがとう。リストは受け取るよ」


 事情を知っているアットンは苦笑しつつも、リストを受け取る。


「ノイズさんが本当に申し訳ございませんでした」

「ちょっと待って、エレストさん。あなたが頼まれた仕事を代わりにやっただけなのに、どうして私のせいになるのよ!」

「黙っていてくださいと言ったじゃないですか! それに、人のせいにするのはおかしいです!」

「それはあなたでしょう!」


 つい声を荒らげると、エレストさんは俯き、被害者面を続ける。


「酷いわ。何でもかんでも私のせいにしようとするんですね」

「はい?」


 何なの、この人。どうせ嘘だとバレるのに、平気な顔をしていられる理由がわからない。というか、平気で嘘をつける神経が理解できない!


「ノイズ嬢、君はルイス様の部屋に戻るんだろう? 僕はルイス様に用事があるんだ。一緒に行こう」

「わかったわ」


 アットンに促されたおかげで気が紛れ、怒りを鎮めて頷く。すると、エレストさんがアットンに話しかける。


「あ、あの、ノイズさんがご迷惑をおかけしたお詫びに何かさせていただけませんか」

「お詫びなんて必要ないよ。君は仕事に戻ってくれたらいい」


 アットンが手を横に振ると、エレストさんはがっかりした顔をしたが、それ以上は何も言わなかった。

 彼女を置いて歩き出すと、アットンが片方の手でリストを指さす。


「これ、ありがとう」

「言われたことをしただけよ。それにしても、何なのあれ!」

「手柄は自分のもの。自分にとって良くない場合は人のせいにしようとするタイプみたいだね」


 アットンが呆れた顔をして言うので、気になって聞いてみる。


「男性の多くは彼女の外見に騙されているみたいだけど、アットン卿はどうなの?」

「何が?」

「彼女のこと、他の男性みたいに可愛くて仕事が出来ると思ってるの?」


 なぜか、答えを聞くのに緊張してしまう。反応がどんなものなのか、ドキドキして答えを待っていると、アットンはきょとんとした顔で答える。


「彼女のことをよく知らないから、絶対とは言い切れないけど、仕事ができるタイプというより、どれだけ楽できるかを考えるのが得意なタイプかな」

「……彼女のことをそこまで良く思っていないってこと?」

「目の前で平気で嘘をついている場面を見たんだから、信用はなくなるよね」


 良かった。アットンは顔で判断しないタイプだった。


「ルイス様は誰とも分け隔てなく接しようとするけど、彼女は苦手なタイプだと思う。近付けないほうがいいだろうね」

「それがもう手遅れなの。勝手にお茶を淹れに行っちゃったのよ。別に他のメイドがお茶を淹れることはあるから、追いかけずに行かせたんだけど駄目だったかしら」

「なら、早くに謝りに行ったほうがいいね。きっと、ご立腹だと思うよ」


 そう言って、アットンはルイス様の部屋の手前で立ち止まる。


「どうしたの?」

「いや。このリストを渡しに行かないといけないから戻る」


 アットンはそう言うと、踵を返して歩き出す。


「ルイス様に用事があったんじゃないの?」

「終わったから大丈夫」


 ……もしかして、私があの場を立ち去りやすくしてくれたんだろうか。

 そんなことを考えると、また落ち着かない気持ちになる。

 かといって、いつまでも部屋の前で立っているわけにもいかない。

 ルイス様の部屋の扉をノックする。すると、珍しく不機嫌そうな返事が返ってきた。


「誰だ?」

「フィリアです。不快な思いをさせてしまっていたら申し訳ございません」

「フィリアなら良い。入っていいぞ」


 部屋に入ってルイス様の姿を探す。彼は部屋の奥にあるティーテーブルの椅子に、苦虫を噛み潰したような顔で座っていた。

 

 子供がする表情ではないわね。


「あの、何かありましたか?」

「……さっきのメイドは見ない顔だったが新人か?」

「あ、はい。そうです」

「お茶を淹れるのに不慣れなのは多めに見るが、フィリアから意地悪をされて、俺の好きなお茶について何一つ教えてもらってないって言うんだ。もし誰かに俺のお茶を淹れるのを頼むなら、フィリアは俺の好みを教えるだろう? それに、そんな意地悪をするような人間じゃないことはよくわかってる」


 ルイス様はそこまで言ってから、眉間のシワを深くする。


「なぜ、そんな嘘をついたのかがわからないんだ」

「そのことなのですが……」


 先程までの話をルイス様にしてみたら、彼は難しい表情のまま確認する。


「ふむ。彼女は面倒なことは人にやらせて美味しいところだけ持っていくということだな?」

「そうかと思われます」

「そんなことを平気でできる奴がいるのか? 他の人が頑張って手に入れたものを横取りするようなものだろう?」

「自分のことしか考えていない人間は平気でそんなことをするんですよ」


 実際にいたので、そう断言した。ルイス様は「信じられんな」と呟き、カップに入っていたお茶を一気に飲み干した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。