32 無理よ
メイディは聞こえないふりをしようとしたみたいだが、近くにいた人が彼を止めてくれた。
立ち止まって振り返った彼は、明らかな作り笑顔を浮かべる。
「どうしてお試しもせずに断ろうとするのかわからない。少し考えてからでもいいだろ。また改めて会って話そうよ」
「あなたの女性癖について調べてから考えさせてもらうわ」
「フィリアは僕の言葉よりも知らない女性の言葉を信じるんだ?」
「私が信じているのはルイス様よ。ルイス様が駄目だと言うなら、あなたは駄目」
はっきり答えると、メイディの顔から笑みが消えた。
「そうだ。駄目だぞ、フィリア! それにメイディ卿、フィリアにはキーファがいるんだ。だから、お前と付き合うことは出来ん。フィリアのことは諦めて、身の丈の合う女性と結婚しろ。そして、浮気はするなよ」
ルイス様が言うと、メイディは一瞬、笑顔を引きつらせたけれど、何とか取り繕って、ルイス様に答える。
「フィリアには僕では駄目だということでしょうか」
「お前は相手がフィリアじゃなくてもいいんだろう? 俺はフィリアには彼女が好きだと思う男性と一緒になってほしいし、その男性はフィリアだけを好きでいてほしい」
ルイス様がメイディを見上げて、強い口調で言った。
こういうシーンをラナに見せてあげたら、あの子もルイス様を好きになるんじゃないかしら。
あの子は年上が好きだと言っているから、大人っぽい人が好きだろうし、今のルイス様なら……って、そんなことを考えている場合じゃない。
「悪いけど、さっきも言ったように、あなたとお付き合いするつもりはないから、本当にごめんなさい」
私は深々と頭を下げた。
彼に誠意が見えるならまだしも、どこか胡散臭い感じがするのよね。
私が感じた通り、彼はへらへらと笑う。
「そんなに冷たくしないでくれよ。みんなの前だよ?」
「多くの人がいる前で私に付き合おうと言ってきたのはあなたでしょう」
「つれないなぁ」
彼は苦笑しながら両手を合わせて懇願する。
「頼むよ。一回だけ、一回だけデートしてくれないかな。絶対に後悔させない自信があるからさ」
「無理よ」
どうして、メイディはこんなに私にこだわるの? ここまでしつこいと、何か理由がありそうね。
胸の前で腕を組んで考えていると、アットンに耳打ちされる。
「彼は賭け事が好きらしい。だから、君を落とせるか誰かと賭けをしてるのかも」
「何ですって!?」
それが本当だったら泣きたくなる。
どうして、私の周りにはろくな男が集まらないのよ!?




