ネルソンSide 真っ黒な白の子
今回はネルソンSideです、本編少しお待ちください!
僕は嫌われやすい人間なのだと気がついたのは、物心がついたくらいの頃だった。
生まれつき何故か白い髪は気味が悪いと言われ、泣いていると女々しいと言われ、普通に話すと胡散臭いと言われた。
何をしても駄目だと突きつけられるような日々の中で、僕は次第に陰鬱な人間になっていった。
学園には、父上に強制的に入れられた。もとより貴族の子息令嬢は誰しも強制的にそこで三年を過ごすらしいが、僕は行くつもりはなかった。
入学式だけ出て、あとは全て自室で暮らそうと心に決めていたのに、その入学式で僕は出会ってしまったんだ。
ミレーナ・グリーンランド伯爵令嬢に。
彼女との出会いは些細なことだった、僕と同じく入学式に参加していた彼女と、たまたま隣の席に座ったのだ。
席が自由であったので、本当に偶然と言うしかない。彼女は隣りに座る僕にニッコリと笑って、「これから3年間よろしくお願いしますね」と言ったんだ。
僕は、きちんと話しかけられることがあまりなかったものだから、ドギマギしてきちんと返事をすることができなかった。
そうしているうちに式が始まり、隣の彼女にドキドキしているうちに式が終わり、彼女はお辞儀をして去っていった。
呆気ないものだった。
でも僕は、目立つ白髪をしているからすぐに再会できるだろうと思っていたんだ。そしたら、その日に限って、目立ちたくないと茶色のウィッグを被っていたのを忘れてしまっていた!
彼女はきっと、何の個性もない茶髪の男子生徒に話しかけたことなど忘れてしまうだろう。だから僕は、その日からウィッグを被らず白い髪のまま登校し、彼女に話しかける隙を伺ってはうまくいかない日々を過ごした。
話す練習もした。僕の話し方は胡散臭いらしいが、それでも彼女に覚えてもらう個性としては十分だ。
勉強もした。彼女は優秀な方だったが、より優秀だったら目に止まりやすいかと思った。成績優秀のため生徒会にも誘われ、生徒会にも入った。彼女の目により止まりやすいかと思って。
しかし、長く彼女を観察してわかったのは、彼女は結構周囲の情報をスルーするタイプの人間だったということだ。
スルーするというか、あまり情報が入っていない気もする。皆が知ってる噂も知らないし、生徒会のメンバーもあまり知らない。大人しく本を読んでいたり、仲の良い子と話したり、学園生活は楽しそうなのに、少し浮世離れしていた。
かと思えば小動物のようにわたわたと焦ったり、泣いたり。可愛らしいなと思うようになった。
…話しかけられはしないけど。
そんなある日、生徒会の仕事のために夜間にクラスで作業をしていると、忘れ物をした彼女と遭遇した。
「わ…!失礼しました、忘れ物しちゃって…!まさか人がいるとは思わなくて、ガラッと開けてしまいました…!」
わたわたと謝る様子に癒されながら、
「気にしなくていいですよ、僕も僕みたいな人がいたらびっくりすると思いますからねえ」
と返すと、彼女はキョトンとした顔をする。
そしてすぐに納得が言ったような顔をして、
「たしかに、真っ白できれいな髪ですものね、夜に出会うと女神様がいらっしゃったのかと思いました」と笑って言った。
彼女は忘れ物を見つけると「ではごきげんよう」と一言残して帰って言ったが、それ以来僕は髪を伸ばすことに決めた。どうしょうもないくらいに、顔が暑かった。
しかし、学園生活で彼女と話すことができたのはその限りだった。
なぜなら宿敵ユリウス・ジルコニアートが、知らぬ間に彼女に懸想をしていたからだ。ユリウスジルコニアート会長が彼女を見るたびに、腑抜けた顔を(他の人から見たら愛しいものを見る顔だったらしいが)見せるので、それはもうわかりやすかった。
だがまあ、僕はそれを当然のことだと思った。同じ生徒会でユリウス会長と同学年のマリア・スターリーはどうしてあんな小娘に、と憤っていたが。マリアは外面は良いが、生徒会の中では一番気性が荒く、会長のこともアクセサリー感覚で狙っていた。
僕は会長が彼女に近づこうとする度に、マリアをけしかけたり、仕事を押し付けたり、さり気なく足を引っ掛けたりして妨害していた。
会長は彼女の関することになると非常にポンコツになるので、妨害もやりやすかった。恋は盲目と言うが、あそこまでポンコツになるとは思わなかった。
その甲斐あって、会長は彼女と話すこともなく卒業をしていったのだ。
僕と彼女も残念ながら話すことなく翌年卒業したが、僕はすぐに両親、主に父上にミレーナ・グリーンランド伯爵令嬢を妻にしたいと申し出た。
父子家庭で唯一の親である父上は猛反対をしてきた。せっかく引きこもることをやめて、学園にも毎日通えて、生徒会にも入ったんだから、伯爵令嬢なんて家の得にならない身分の者ではなくて、もっと上の令嬢を狙え、ということだった。
僕は彼女がいない学園には行かなかったし、今後パーティーや社交界にも参加しないと主張した。最初は半信半疑だった父上も、本当にミレーナ・グリーンランド伯爵令嬢がいる場にしか参加しないと思い知ったらしい。
次第に条件付きで認めようとしてくれていたので、あと一押しかなと思っていた。
ところが、だ。
そんなことをしている間に、あの憎きユリウス・ジルコニアートが卒業後騎士団に入り、騎士団長になり、あろうことか彼女に婚約を申し込んだのだ。
正式には彼女の叔父から話があったらしいが、元々ユリウス・ジルコニアートは騎士団としての功績の報酬として、彼女との婚約を申し入れていたらしかった。
当然彼女は承諾し、婚約者として名前を連ねることになり、あれよあれよという間に結婚をしてしまったのである。
僕は寝込んだ。
一週間朦朧としながら考えた結果、とことん邪魔してやろうと思った。
僕ごときの妨害で破綻する関係なら、それはその関係を構築した会長が悪い。
そう思って、愛と憎しみを原動力に色々やった。
まずは騎士団に入った。コネで。
参謀として重宝してもらって、すぐに第一騎士団に入ることになった。騎士団にはマリアもいて、どうやら衛生兵として活躍しているらしかったので、彼女との噂を立ててやった。
そしてできる限り仕事を押し付けた。家に帰れないくらい。
あと、ユリウス・ジルコニアートが騎士団長でいることに不服な貴族の団員が何人かいたので、根も葉もないゴシップネタをこっそり広めていたら、その内本当に信じるやつがでてきた。
社交界のパーティーで、彼女を一人で見かけることが増えた。
一人の彼女があまりにも寂しそうだったのと、一度女遊びの激しい騎士団員に絡まれているのを見たので、見かけるたびに頑張って話しかけに行っていた。
自分のせいで彼女が傷ついてるのは流石に申し訳なくて。でもよくよく見たら彼女の名前すら読んだことが無さそうなユリウス・ジルコニアートに腹が立ってきて。
僕は会うたびに彼女に、
「(僕が流した)噂の騎士団長の奥方ですか、それはそれは……(近寄れもしない会長は)気の毒ですねえ」
「(僕が仕事を押し付けるので)家に帰ってこないのではないですか?…図星でしょう?何をしていると思います?(噂はどこまでご存知なのかな?)……あ、口止めされてるんでした(一応仕事内容だから話しては駄目だった、危ない危ない)」
「(あいつがポンコツだって)もう分かってるのではないですかね?伯爵夫人。…グリーンランド伯爵家に、戻りたいとは思いませんかね(さっさと別れましょうよ)」
あとは、僕と婚約しないか、乗り換えないかをそれとなく言っていたが、ますます困る顔を見せるので、僕もどうしたものかと思っていた。
例えば、「名前も知らぬ者に恋い焦がれるなど、愚かとは思いませんか?」(ユリウスはあなたの名前も呼んでくれませんよ)
「私ならさっさと見切りをつけて、新しい恋に行きますがね」(ユリウスより僕はどうですか?)など。
ユリウスの愚痴を吐きやすいように誘導してみたけど、それも全然だめだった。
やり方を変えたほうが良いのかと思案していると、突然の訃報が舞い込んできた。
彼女が、崖から落ちて亡くなったと言うのだ。
次回もネルソンSide続きます!




