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第二章 星見の町編 一発

夏の日差し。吹き抜ける乾いた空気。

日陰に入れば涼しい。

夏は好きだ。

気持ちがいい。


私たちはジャックの"筋肉痛"が完治するのを待ち、ようやく新しい仕事を受けることになった。

前回の件でペナルティ、『ヒロ同伴が絶対条件』を課せられてしまい、ヒロがいないときは暇になってしまう。

なんて心配をしていたけど、急を要する仕事がないということで私たちに同行してくれることに。

さらにはクラスレッドの同伴ということで、事実上"紫級"の仕事を受けられる。

まぁ今回は無理せず、"青級"の「ビスカス近郊のオークの駆除」を受けることにした。

ビスカスはミレニアム東の街道を南に行ったところにある小さめの町。

この前行ったルゥマよりは少し大きい。ルゥマが村として大きすぎるというのもあるけどね。


「モニカ~来たぞ~荷物積め~」


ヒロの魔導車が私の家の前に停車し、トランクルームを開けている。

予定では1週間はかかる見積らしい。

昨日今日で詰め込んだ荷物は既に玄関に置いてある。

フフン。私は準備がいいのだ。


ジャックとホムラは既に積み終わり、車に乗り込んでいた。

荷物を抱えて車のトランクを除くと、大きめの布袋が3つ。

…

あれ?


「お前に持つ多すぎんだろ…どこに行く気だ?」


ジャックが怪訝な顔で私の荷物を見る。

一体何が入っているんだという顔だ。

大きいがケース二つ。


「まぁまぁ。女の子なんだから男より持っていくもんが多いんだよ」


ヒロがフォローしてくれたが、私にとっては男女以前に、この袋に何が入っているのかのほうが謎だ。

いったいどんだけのミニマリストなんだ??


「よし積んだな。出発だ!」

「あの~」

「ん?どした?」

「トイレじゃねーの」


くっ…

違うんだジャック君。

とても言いづらい。

しかしアレはどうしても譲れんのだよ少年…


「もう一個…バッグがあるんだよね…」


ガクッと頭をうな垂れるジャックとホムラ。

そしてヒロも車のステップをズルッと足を踏み外した。


確かに減らす努力は怠った。

私の落ち度だ。

これだけは言わなきゃならない…


すまんかった


―――


今回の車は前に乗ったオープンカーではなく、ちゃんと屋根のついた箱型の魔導車。

車高が高く大きいホイールを履いている。

悪路でもしっかりと走るオフロードタイプだ。

ミレニアムから出て少し走ると土剥き出しの街道が続く。

整備された町の道とは違い、やはり揺れが大きい。

ガタガタとユサユサという二種類の振動に揺られながら、窓を全開にして走る。

屋根があっても窓を開ければ風は抜ける。

日差しが強い夏は屋根があった方がいいね。


ヒロは一体何台車を所有しているのだろうか。

気になるところだ。


「オークっていうのはどんな魔物なんだ?」


やはりホムラはオークを知らなかった。

私たちにとっては当たり前の知識が彼には欠落している。

彼の話では、森で目覚める前の記憶が”無くなって”いるらしい。

言葉や剣術に関しては問題なかったのになぜだろうか。

他のロストの人達もこんな感じなのかな。


「オークっていうのは豚と獣人族の間みたいな魔物で、知性が著しく低く、危険な特性を持つ魔物だ」

「危険な特性?」

「群れを成し、武器も粗雑だが使う。数も多いからさながら軍隊だな。

そして死体を喰って、その対象の力を手に入れる特性を持っているんだ」

「力を?」

「例えば一匹の力を1としよう。ンで、1の力を持つ者を喰らう。

するとソイツの力は2になる。当然五匹で分けて喰ったら一匹が1.2になるわけだ」

「喰ったら喰った分だけ強くなるってことか」

「あぁ。だから俺のこと喰ったら伝説級のオークが生まれちまうわけだ」


ハッハッハと豪快に笑うヒロだが、もしそうなったらシャレにならない。

とんでもねぇ化け物が生まれちまう~。

なんて青い顔をしているホムラを見て私も少し笑ってしまった。


「んで、オークが強くなりすぎる前に殺す必要がある訳だ。それに加えて今年は最悪でな」

「というと?」


おっと。何やら不穏な空気が流れてきました。


「10年に一度の大繁殖期と飢餓期が重なっちまうんだ」


オークの繁殖は年中無休だが、どういうわけか10年に一度、数が大量に増える時期があるのだ。

そして飢餓期はオークの主食の"マッシブボア"が縄張りを変える周期と被ってしまった。


「ただでさえ数が増えれば食糧問題が付きまとうのに、食料が全く取れない時期と重なる。そうなるとどうなるか分かるか?」

「人間を襲うようになる?」


ホムラの答えにヒロは首を横に振る。

なんだろう?食べ物を求めて人間を襲いに町に来るのかと思ったけど。


「共喰いを始める」

「なるほどな。喰い物は目の前にたくさんあるってことか」


ジャックがヘッと笑い、辟易した顔で窓の外を眺める。

悍ましい光景が目に浮かび、吐き気を催す。

人間も百数十年前の大飢饉では、どこかの村で人間を食べたという話もある。

彼らを糾弾する筋合いは人間にはないだろう。

極限まで追いつめられればそうせざるを得ない。

まぁ人間はその時の教訓によって急速に工業が発達し、農耕の大規模化を図ったという背景もある。

今ある暮らしを作ってくれた先人達に感謝だ。


「それで増えすぎたオークは食い扶持を減らし、食料を得て、強くなる。

生き残ったオークは"ブラッディオーク"と呼ばれる。返り血が皮膚に染み込むのかどうかは知らんが、そいつらの表皮と目は赤くブヨブヨしていて刃が通りづらい。

もっとも、そうなる前に数を減らすのが今回の仕事ってわけだ」


なるほど。確かに理に適っているようには聞こえる。

まだ急増したという報告は上がっていないから、まだ出産前なのだろう。

妊娠している野生動物は気性が荒くなったり、凶暴化するという話をよく聞く。

それが魔物にも適応されるのかはわからないけど、警戒しなければならないだろう。

オークは訓練された人間の兵士一人よりも弱いが、ある程度喰らったオークなら兵士一人よりも強い。

割と力はトントンなのかもしれない。

豚だけに。

……

なに?


「二足歩行している生物のメスや子供を殺すことになるが…躊躇するなよ?」

「子供だからと見逃せば、そいつが大人になったときに殺した人間を間接的に殺したも同然。魔物狩りの基本だ」


ジャックが補足する。

魔物には容赦するな。というのがガーディアンの基礎部分にある訓示だ。

明確に人間と敵対しているからこそ、徹底的に潰し切る。

人々を護ることが私たちガーディアンの仕事なんだから。


ビスカスへ向かう道中は凹凸の激しい道が続く。

先代王が公共事業として大規模な街道舗装計画を立て、雇用の確保と文明の発展を推進していたけど、現王はそれを白紙にし、いろいろと問題が出ている。

しっかりとした舗装は、大きめの町や都市近郊、主要な街道にしか整備されていない。

流通が発展しているとはいえ、車の普及率が高くないのも原因だろう。

そんなわけで車はガタガタと揺れている。

舌を嚙まないようにするためか、いつしかみんな口数が減っていた。


畑の間を進む生活道路という感じかな。

蒸気式の大型農耕機械とすれ違えるくらいには広い。

轍に溜まる水でぬかるみもある。

のどかな田舎の風景だ。

私はこういう景色をガーディアンになるまで知らなかった。

とても美しくて優しい雰囲気に包まれている。


しばらく進むと、建物が密集した場所が見える。町だ。

町の中心に位置する聖堂は、遠くからでも目印になる。

広い麦畑に浮かぶ城のようだ。

ビスカスの町の聖堂は、星の神「ヴィドウェル・デ・キストル」を祭っている。

高い建物や城壁なんかもなく、周りに視界を妨げられることなく美しい星空が視れる静かな町だ。

聖堂の最上階は一般に公開された展望室。

この街に二つ名をつけるとすれば「学問の町」だろう。

有名な天文学者がこの町を拠点にしたという話や、数学者、物理学者の聖地なんて呼ばれている。


「静かだな」


車が町の冒険者ギルドの前で止まり、降りたホムラがそうつぶやいた。

町中はミレニアムのように活気はなく、まばらに人が足早に歩いているだけ。

どこか閑散としている。

そういう町なのだろうか。


「一応避難推奨は発令されている。他の町に知り合いの家がある人はそっちに避難したんだろう」


避難か。

オークの大群が押し寄せてくれば、私たちやこの町に滞在する冒険者たちでも守り切るのは難しいだろう。


ともあれ、まずは手続きだ。

さびれた酒場のような雰囲気の建物だが、れっきとした冒険者ギルドだ。

この町にはガーディアンギルドはない。

なので手続きはここで行う。

冒険者と手続き内容はほぼ変わらないから問題ない。


扉を開けると中の人間たちの視線が一気に注がれる。

子供の私たちを見てヘラヘラと笑う。

新顔を試すような顔だ。

しかしそんな連中もヒロの二の腕に巻かれた赤いスカーフを見ると、ギョッとした表情で彼を二度見三度見する。

ヒロに睨まれたチャラチャラした男はサッと目をそらし飲み物を口に運んだ。

ここの冒険者はどうやらチンピラ系が多いらしい。

この町は美しい星が視れるし、高度な数理学の教育を受けられる学校まである。

しかしどちらも興味ない人間にとっては何もない退屈な町でしかないのだろう。

不良がたむろするのは必然かもしれない。


「ガーディアン、クラスレッドのヒロだ。オーク駆除の依頼を受けて来た。手続きを頼む」

「あいよ。手続きしてる間何か飲むかい?」

「そうだな。こいつらに果実水を頼む。俺は水でいい」

「あいよ」


優しそうな受付のおじさんはクーラーからピッチャーを取り出し、それぞれのコップに注ぎ入れた。

カウンターにことりと置かれたガラス製のコップは結露で濡れている。

果実水は口に含むとスッとした酸味が広がり、のどを越せば口の中に甘さが残る。

とても美味しい。


「いやぁ助かるよ。オークの大繫殖期が来るから依頼を掲示してるんだがね。ここの連中はもっと楽な仕事ばっかり取りやがる」

「確かに。骨のあるやつは一人もいなさそうだ」


おじさんとヒロが後ろで酒を飲む冒険者たちを見て苦笑いする。

予想だけど、いつもだったら今の発言を聞いたら激高して喧嘩になっていたに違いない。

しかし発言者がクラスレッドということで誰も何も言わない。

いや、言えない。

しかし、言わなくても空気がピリッとした。

機嫌を損ねたのは間違いないだろう。


「おいおっさん。でけぇ態度に生意気なこと言いやがって。なめてんじゃねーぞ!あ?」


と思ってたら一人の男がガタッと乱暴に立ち上がりこちらへ向かってきた。


「!お、馬鹿ッ!!よせルィンキー!」


別のテーブルに座ってた知り合いと思われる男が体を押さえ止めようとする。

他に飲み食いしてた男たちも顔面蒼白で、手が止まっている。

意外にこれを口火にみんなで喧嘩かと思ったけど。

私の隣には呆れた顔で書類を作っているヒロとおじさん。

そして今にも喧嘩を買いそうなジャックと果実水を美味しそうに飲むホムラ。


「どこの誰かは知らねぇけど、ガキ連れて旅行気分か?なめやがって!なんでお前ら皆黙ってんだ?言われっぱなしでいいのかよ?」

「いいから!やめとけって!」


ルィンキーと呼ばれた男が座っていたテーブルを見ると、露出度が高く派手な格好をした女がいた。

なるほど、格好つけたい、格好いいとこ見せたい!ってことね。

ゲプッ。


「なんとか言ったらどうだ!そんなやっすい仕事なんざ受けて。しけた野郎だな!あ?なんか言えよ。ビビってんのか?」

「どんなに安い仕事でも、誰かがやらなけりゃ誰かが死ぬ」

「あ?」

「お前さん。女に格好つけたいんなら、こんなことしてねぇで颯爽とゴブリンでもミニヤーガでも狩ってきたらどうだ?」

「ブフッ…」


誰かが笑った。

ゴブリンとミニヤーガは初心者冒険者が最初に受ける討伐クエストの魔物とモンスターの定番だ。

つまり初心者の代名詞。

ヒロの最高に馬鹿にした言い方も相まって誰かが噴き出した。

いやもしかしたらその場にいた皆笑っていたのかもしれない。


「てんめぇ!!!」


それが男を切れさせてしまった。

顔を真っ赤にした男が押さえる男を押しのけ、ズンズンと迫ってくる。

怒り心頭だ。

一方ヒロは大きくため息を吐きながらペンを置いて振り返る。

お?喧嘩か?

と内心ワクワクしている自分がいた。


男が拳を構え振りかぶる。

そこは流石冒険者といったところか、ただ振りかぶっているだけではなさそうだ。

シュッと拳が繰り出される。

それはヒロの顔面目掛けて鋭く飛んでいく。


ガッ


ヒロは相手の腕を手で軌道をそらし、体を相手の背中側へ傾ける。

そして右手で振り抜かれた腕を掴んで強く引き、カウンターへ叩きつけてそのまま左手で首根っこを掴み動きを封じた。

一瞬である。


「こんなんで喧嘩売ってきたのか?新米(ルーキー)」

「!!!」


相手の動きを封じ込めたままドスの利いた声で煽る。

ルィンキーは顔を真っ赤にして怒りが収まらない。

むしろ火に油を注ぐ形になってしまった。


「だぁ!ふざけんな!」


ルィンキーは右手と首をヒロに押さえつけられている。

フリーの左手を使ってどうにか抵抗しようとし始めた。

とはいえ人間の骨格的にヒロを掴んだりすることはできない。

危ないなぁ。

なんて思っていると。


ガンッ!

「痛ッ!」


カウンターにあったグラスを手で弾いたのか、それが私の左目の上にぶつかった。

グレズリーに吹き飛ばされた経験からすると大した痛みではなかったが、油断していたのでビックリした。

顔に熱いものが伝っていることに気が付く。

血だ。

グラスが当たった時に切ったのだろう。

マジか…

まぁ、目に当たらなかったのは良かった。


「あっ!あのバカ!!」

「ヤッベェ!!」


取り巻きの不良たちが私が流血するのを見ると、顔を真っ白にさせざわつき始めた。

これくらい簡易治癒で治るのに大げさだなぁ。


ガッシャーン!!!


飛んだ。

人が飛んだ。

人がいなくなった空間に空気が流れこみ、建物の中に風が吹く。

飛翔した人体は5メートルくらい離れたテーブルに背中から叩きつけられ、一本足のテーブルは折れて上に載っていた料理などをまき散らした。

言うまでもなく飛ばされたのはルィンキー。飛ばしたのはヒロだ。


「言わんこっちゃねぇ!」


取り巻き達は汗を流しながら狼狽している。

焦りと恐れで顔をゆがませる地元民とは裏腹に、ジャックとホムラは嬉々とした表情で若干椅子から腰を浮かせ、臨戦態勢だ。

乱闘でも期待しているのだろうか。


ガチャガチャと音を立てながらルィンキーが上半身を起こす。

なにで切ったのか額からは血が流れていた。

するとヒロが無言でズカズカと歩み寄る。

ルィンキーはそんなヒロを怯えの混ざる表情で見ていた。


「なにしやがんだテm…」


言い終わる前にガシィ!と男の胸ぐらが掴まれ、起き上がらされる。

いや持ち上げられていた。

ヒロは不良を片手で持ち上げたのだ。

表情は無。

真っ直ぐと不良の目を見据えている。


「ひぅ…!」


ルィンキーは小さく情けない悲鳴を上げた。

そして男がブレる。


ズゴッ!!

ガッシャ―ン!!


男は顔面に拳を受けて吹き飛んだ。

またテーブルを壊し、上に載っていたものを散らかす。


「うっ…が…はっ…や、やめ…」


口と鼻からも血を流し、顔面はもう血だらけ。

表情はもはや恐怖へと染まり、さっきまでの威勢のよさは見る影もない。


「言う事があんだろ?」


真顔で男に迫りながら、ヒロはドスの利いた低い声で言う。


「す、すびませんでひた…!!!」

「何に対してだ?」

「生意気な口きいて……ぐぅっ!!?」


ヒロはルィンキーの髪を掴み起こすと、みぞおちに重い一撃をくらわす。

正直ドン引きするくらい顔を真っ赤に染めたルィンキーは気の毒なほどだ。

ヒロはこんなことで怒るような人ではないと思うのだが。なぜこんなことをするのだろうか?

するとヒロはルィンキーの耳元まで顔を寄せる。

恐怖に染まり、死を間近に感じている人間の顔をしている。


「ンなことで俺は怒らねぇよ。分からねぇか?」

「んぇ…?」


間の抜けた声を上げて首をかしげる不良。

もう泣きそうだ。

でも同情はしない。

喧嘩を売る相手を間違えたというのはあるけど、じゃあ相手がヒロじゃなかったらやってよかったのか。

そういうわけじゃない。

自業自得という奴だ。


ん?

周りに視線を移すと、場にいる全員が私を見ている。

あれ?私なんかした?


「お前が暴れて、この子の顔ににグラスが当たった。で?どうすんだ?」

「!!す…すびませんっした!!!」

「次からは?」

「もうしません!」

「何を?」

「生意気な態度取って、喧嘩吹っ掛けて、他人に迷惑を、掛けるようなことはもう致しません!!」

「で、どうされたい?」

「か…勘弁してください…許してください…お願いします…」

「…と言ってるが?」


そこでヒロが私を見る。

あ。

これ私が許すか許さないかの分岐だ…

どうしてくれようか。

正直、既に簡易治癒で傷は跡もなく治してある。

さらにはヒロから制裁を受けている。

これでもなお許さない理由はない。


が、男が座っていたテーブルで心配そうな顔で固まっている派手な女が目に入ってしまった。

バカップルの彼氏が彼女に格好つけるためのパフォーマンスに巻き込まれたと思うと、胸の奥底に黒い感情が沸き上がる。

もっともヒロが公衆の面前でボコボコにしたおかげでそれも制裁済みとなっている。

なんかやり場のない感情が沸々と湧いて出てきてしまった。

うーん。


そうこう考えていると、謝罪受け入れ拒否と判断されてしまったのか、ウィンキーの目にみるみる涙が溜まっていく。

なんかこっちがいじめているみたいな構図だけど、相手が私たちじゃなかったらコイツがいじめている側だったのだろう。


「なんかスッキリしないなぁ…」


ため息と一緒に声が出てしまった。

ヒンッ…とまた情けない声が聞こえる。


「じゃあテメェの彼女に同じような傷でもつけるか?」

「そ!それだけは!!悪いのは俺だ!彼女は関係ない!!」


おいおい完全に悪役のセリフじゃん!

これは答えを決めあぐねている場合じゃない!


「じゃあ一発殴るわ」


私の一言に周りがざわつく。

ウィンキーの血濡れの顔に安堵の色が見えた。

そんなことでいいんですか?という顔。

子供の女のパンチなんて屁でもないとでも言いたそうだ。

それとは対照的に戦慄した顔をしているのはジャックとホムラ。

歯を見せてニヤッと笑っているのはヒロだ。


「わ、分かった。んじゃ…どうz…ッ!!!」


ドガシャン!と大きな音と共に男は消えた。


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