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合流

 打通戦には明里を筆頭に30名が選抜された。

 選抜基準は明里の戦いをフォローが出来る事、もしくは邪魔をしないように動ける者ということだった。仁志やジョージも選ばれた。

 そして交代要員や集団が敵に囲まれた時に、前に進む明里の後ろを守る為に必要な人数として30名となった。


 貴文としてはもっと人数を増やしたかったが、本隊側の戦力も残しておかなければならず、これがギリギリの人数であった。

 そして貴文は本隊の指揮を執る為に残留となった。


 「明里さん、すみません。こんな明里さん頼みな感じになってしまって・・・」


 今は仁志やジョージが敵を牽制していた。それで出来た僅かな時間に貴文は明里に謝った。


 「そんな謝る事じゃないですよ。今は皆が最善を尽くす時でしょ。貴文さんが一番成功率が高いと思った方法を取るべきよ」


 明里はそう言って貴文に笑いかけると、さやかの頭を撫でてから先頭に立った。


 「さあ、みんな味方の所まで敵を蹴散らしていくわよ!!」



 明里達は順調に進んだ。

 通常タイプは蹴散らし赤武者も同時に来ても5体までで、仁志とジョージに加え明里の三人で充分対処できた。

 特に明里の強さは目を見張るものがあった。


 「明里さん、スゴイデスネ」

 「ああ、鬼気迫るものがあるな。忠良さんの一件で忸怩たる思いがあるんだろうが、ただ大丈夫か?」

 「ダイジョウブネ。ちゃんと周りが見えてマスネ。感情まかせのアライ剣じゃないヨ」


 仁志とジョージが明里のフォローしながらそんな話をしていると、後方を警戒していた男から声が上がった。


 「後方にアシガロイドです!!」


 明里は眼前の赤武者を斬り捨てながら叫び返した。


 「数とタイプは?」

 「通常タイプが5体です!」

 「放置して、このまま進みます!」


 明里達が更に敵を排除しつつ進むと、前方から別の戦いの喧騒が聞こえてきた。


 「誰か軽そうな奴を肩に乗せて、前方を確認してくれ!」


 仁志がそう言うと、集団の真ん中で待機していた男達が櫓を組んで一人をその上に乗せた。


 「前方に赤武者が10体近くいて人間と戦っています!距離は50mはありません!!」

 「途中の通常タイプを撃破して、その戦いに加勢するわよ!私に付いて来て!!」


 明里はその言葉と共に、更に敵を撃破するスピードを上げた。

 ジョージでさえそのスピードアップに度肝を抜かれ、慌てて明里に追随した。


 そして赤武者10体が戦列を形成して、救出部隊の先頭と戦っているところに後ろから襲いかかった。


 明里は瞬く間に中央の2体を斬り捨て、ジョージが右側の赤武者に突きを入れているのを目の端に捉えると、左の4体に襲いかかった。

 4体は明里に対応しようとしたが、それで出来た隙を救出部隊は見逃さず3体を倒し、明里がそばにいた1体を倒した。

 明里が返す刀で左を攻撃しようと見ると、既に戦列が崩れ各個撃破の標的となっており倒される所だった。


 明里はジョージが最後の赤武者を倒すのを見ながら救出部隊に声をかけた。


 「打通成功です。それにしても先頭を任されるだけあって皆さんお強いですね」


 明里がいくら待っても返事がない為、救出部隊に視線を向けた。

 救出部隊の先頭の多くは恰好から県警の機動隊のようだったが、皆一様に明里を見ていた。

 その中の一人が剣を頭上に掲げ叫んだ。


 「天生峠(あもうとうげ)のワルキューレが来てくれたぞーーーー!!」


 その叫びに、救出部隊の先頭から大きな歓声が上がった。

 そして同じ叫びと歓声が、次々と救出部隊の後方へと広がっていった。


 明里は突然の事にキョトンとした表情となり、どうやら自分の事らしいと理解して、問いただそうとしたところで仁志が割って入った。


 「喜んでいるところ悪いが、すぐに国道確保の人員を送ってくれ。途中には通常タイプだがアシガロイドが湧いてるところもある」


 仁志の言葉に、機動隊の指揮官が次々と指示を出し始めた。


 「3班と4班は、このまま先行してアシガロイドを排除して白川村からの避難民と合流しろ。2班は防衛ラインの設置の指示を!1班は後方に下がり待機だ。後方の予備隊もこちらに呼べ。避難民の補助をさせる」

 「あっ!私達も同行してみんなの所に戻ります」


 明里が先行する班に同行を申し出ると、指揮官はその言葉に破顔した。


 「天生峠のワルキューレが一緒に来てくれるなら、こんな心強いことはない。お願いします」

 「あっ、はい」


 明里はまたワルキューレと言われ、その説明を聞きたい気持を我慢して行動を優先させた。


 明里達と機動隊は、再び国道に姿を現していた少数のアシガロイド達を次々と撃破して、貴文達先頭集団を目指した。

 明里達の後ろでは防衛ラインの構築のため、ゴルフ場と国道との間の山林に続々と人が入り、超振動ブレードで下草を刈って戦列を形成していった。


 「貴文さ~ん!」


 明里は貴文達が見える距離まで来ると、大きく手を振って貴文に呼びかけた。

 貴文達もその声に反応して、大きく手を振ると前進は始めた。

 

 「明里さん、成功したようで良かったです」

 「はい!今はゴルフ場に対して国道を守る為の戦力を配置してますけど、そんなにかからないと思います」


 明里がそう言って指揮官を見ると、無線で何かを聞いていた指揮官が頷いた。


 「配置が終わりました。アシガロイドとの戦いは我々が受け持ちますので、白川村の人達は全員このまま郡上市へ進んで下さい」


 その言葉に貴文は指揮官と握手をしてお礼を言うと、白川村の人々を先導して移動を始めた。

 明里は真理から娘を受け取ると、さやかと手をつないで歩き始めた。


 明里が防衛ラインの人々を見ながら歩いていると、一つ気になったことがあった。


 「敵があまり現れませんね?現れても通常タイプが数体ですし・・・」


 そう言って、避難民の直接の護衛に就いている機動隊員に聞いた。


 「そうですね。恐らく陽動が上手くいっているんだど思います」

 「陽動?」

 「はい。自分達がここに来た時は、ゴルフ場からアシガロイドが国道に溢れている状態でした。最初はそのまま突破をしようとしたんですが、倒しても倒してもゴルフ場から溢れてきてどうにもなりませんでした」


 そう言うと機動隊員は右手で道を示し言葉を続けた。


 「それに国道と言ってもそんなに広くない道ですから、戦力の大部分が遊兵・・・戦闘に参加出来なくて遊んでいる状態になっていたので、ゴルフ場の南から攻撃を仕掛けてそちらに敵が集中するようにしました。ですから敵は国道の維持よりも、南からの攻撃の対処に忙しいはずです」

 「それだとかなりの人達が、私達を助ける為に来てくれたみたいね」

 「ええ。今も続々と集まっていると思いますよ。あっ、予備隊が来たみたいですね」


 機動隊員の言葉に前を見ると、一目て医療関係者だと分かる者の他に、制服を着た高校生や戦いに不向きと思われる人達の集団がやって来た。

 明里が機動隊員を見て、医療関係は解るけどっといった感じで首を傾げると、機動隊員は苦笑して答えた。


 「予備隊というのは、戦わせたくない人達を集めた隊ですね。いろんな人達が集まって来てしまって・・・選考基準は自分達の独断と偏見です」


 明里はその言葉を聞くと、同意を示すように機動隊員の肩を叩いた。

 そして明里の目の前で予備隊の人々は水を差し入れしたり、疲れている者に手を貸したりし始めた。中には荷車を引いている者もいて、それに老人や子供を乗せて数人で運んでいった。


 明里が予備隊から水を貰っていると、剣道着姿の女子高生が二人近づいてきた。


 「「せんぱ~い、無事で良かったです~」」


 見事に声をハモらせながら、明里のもとにやって来たのは双子の姉妹だった。


 「あら、ひなひよちゃん来てたんだ。ダメだよこんな危ない所に来ちゃ」

 「ちゃんと親の許可は取ってます!それと双子だからって、名前をくっつけて呼ばないで下さい」

 「はいはい。さやかは初めてだったわね。この二人はママが時たま剣道の指導をしている母校の生徒よ」


 明里の紹介に、双子はさやかの前にしゃがみ自己紹介を始めた。


 「ママにはお世話になっています。遠藤陽向です」「陽和です」

 「牛丸さやかです。ひなたお姉ちゃん、ひよりお姉ちゃん、よろしくお願いします」


 双子はさやかの頭を撫でると、明里に向き合って愚痴を言い始めた。


 「先輩聞いて下さい!機動隊の人達、私達が何度も戦えるって言っても聞いてくれなくて、後方の予備隊に入れたんですよ!」

 「そうなんですよ!先輩はもう何度も奴らと戦った経験者ですよね。経験者から見て、私達はアシガロイド相手に戦えませんか?」


 二人の訴えに明里は少し考えた後に答えた。


 「通常タイプなら1対1でも問題ないかな。赤武者1体が相手なら、二人がかりで倒せると思う」


 明里の言葉を聞いて驚いたのは、そばにいた機動隊員だった。


 「赤武者相手に二人だけですか?!自分達機動隊でも1体を倒すのに3~4人必要なのに!」


 明里と機動隊員の言葉に双子は、勝ち誇った顔になったがすぐに明里が叱った。


 「こら!あくまでも相手が1体だけの話よ。アシガロイドは集団で動くわ。私が戦えたのも、私が戦いやすいように周りの人達がそういう場を作ってくれたからなのよ。自分の力を過信しない!!もし通常タイプが相手でも、囲まれたらあなた達は負けるわ」


 明里は叱られて落ち込んでいる双子の姿を見ながら、機動隊員にも説明した。


 「この二人に実力があるのは確かです。私の経験から言わせてもらえば、二人の連携があれば赤武者を倒す事が出来るのは保証します」

 「天生峠のワルキューレの保証ですね!解りました。他の隊員にも伝えておきます」


 二人の言葉を聞いて、双子は落ち込んでいたのが嘘だったかのように元気になった。


 「そうそう、その天生峠のワルキューレって何?」


 明里は言葉が出たタイミングで、聞いてみることにした。


 「先輩、知らないんですか?朝からテレビでめちゃくちゃ流れてますよ」

 「そうですよ!先輩が飛騨市からの避難民を救出する為に、アシガロイド相手に奮戦した映像です。アナウンサーの人が、天生峠のワルキューレって言ってました」


 双子の言葉に継ぎ足すように、機動隊員からも発言があった。


 「その二つ名はもうみんなに浸透しています。自分達も市境で待機してる時に見ました。皆、あなたの戦う姿に勇気づけられました!!そしてあなたを助けようと、未だに様々な人達がこの市境に集まってきています」


 明里は信じられないという顔で三人を見た。


 「そ、そんな映像いつ撮ってたのよ・・・」


 三人は顔を見合わせ、双子に押し出される形で機動隊員が答えた。


 「え~と、アナウンサーが、映像はあなたに同行した白川村役場の人間から提供されたと、言ってました」



 「たーかーふーみーーー」

 明里が発したその声は、聞いている者が心胆を寒からしめるに充分な迫力があった。

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