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前哨戦

 貴文達がジョージと合流すると、道の先には夥しい数のアシガロイドが溢れていた。


 「これを突破するのか・・・」


 貴文がその余りの数の多さに圧倒されていると、郡上市側から戦いの喧騒が風に乗って流れてきた。


 「向こうがここまで敵を突破してくれるのを本気で待ちたい所ですが、余り時間がかかると敵の追撃があるかもしれません。そうなると僕達が挟撃される形になりますから、それは避けたいですね」

 「はい。県の救出部隊も後ろからの攻撃を当てにしてるでしょうから、やるしかないです」


 貴文は真理の答えを聞くと全員に指示をだした。


 「交差点で戦った時と同じです。中央は僕とジョージさんで敵を切り開いて行きます。切り開いた所を閉じられないように注意して下さい。赤武者がかなりいるので簡単には進めないと思いますが、一歩でも前へ歩みを進めましょう」


 貴文の言葉に全員が静かに頷き、真理は攻撃開始を郡上市側の救出部隊と最後尾の副村長に連絡した。


 「それでは行きましょう!」


 貴文はその言葉と共に静かに前へ進み始め、ジョージもそれに続いた。



 貴文達が進み始めるとアシガロイド達も反応して戦闘態勢を取ったが、その場に留まり貴文達を迎え撃つ形となった。

 貴文とジョージは、その前列に楔を打ち込むべく斬り込んだ。


 二人は忠良ほどの圧倒さはないが、通常型のアシガロイドに対してはその強さを遺憾なく発揮して、敵の前列を切り崩し集団を切り裂く事に成功した。


 「ジョージさん、このまま出来るだけ進みますよ」


 その言葉通りに二人は前へ進み、他の者もそれに続く形で戦線を押し上げていった。

 しかし敵に赤武者が混じり始めると、そのスピードは鈍化し、時に停滞する事となった。


 「くそ!一体ずつなら問題ないのに、赤武者が多すぎる」


 貴文の言葉通り赤武者が複数相手となると、負けないまでも倒せずに膠着状態になる事があった。

 その都度、後方から応援が入り数に頼んで倒したが、貴文達の先頭集団も無傷とはいかず急速に戦力を減らしつつあった。


 「貴文さん、このペースで赤いのをアイテにするのはマズイデス」


 ジョージの忠告に貴文は苦い顔で答えた。


 「解ってます!でも引くわけにはいきません。このまま攻め続けないと、敵の攻勢を呼び込む事になります。守勢に回ったら挟撃になりません!せめて道を確保して子供達だけでも脱出させないと。山林側の戦力を少しでも前に回せれば・・・」


 アシガロイドの展開が道路にばかりだった今までと違って、山の中にもアシガロイドが存在し散発的に後方遮断を試みていた。

 その為に貴文は戦力の一部を後方に待機させていた。攻撃をしかけてくるのは通常タイプばかりであった為、後方は何とかしのいでいた。



 貴文達が戦力を削りながらも少しずつ前進を続けていると、突然、山林からターンというライフルの銃声が響いた。

 その音と同時に山林の草が騒めき、そこにいたアシガロイド達が音の発生源に向かった事が解った。

 しかし道路上で戦っているアシガロイド達に変化はなかった。


 貴文が戦いながらも銃声を気にしていると、ジョージが赤武者に突きを入れて倒し時間的空白を作った。


 「貴文さん、コイツラ銃声に反応しなイ?」

 「銃声が聞こえた範囲にいる個体が、全て反応するわけじゃないようですね。敵なりの判断基準があるんでしょうけど、しかし誰がこのタイミングで・・・」


 二人が銃声を気にしていられたのは数舜の事で、目の前のアシガロイド達と戦う事に忙殺されてそれどころではなくなった。



 先頭集団が一歩でも郡上市へ近づこうと奮闘している最中、後方からまばらに歓声が上がった。

 貴文が一瞬後ろを確認すると、飛騨市から逃げてきた人々を中心に歓声が上がったようだった。

 そして後ろの真理の話し声が聞こえてきた。


 「あなたは確か何回か会ったことあるわよね?」

 「はい!村役場に勤める寺口真理です」

 「ちょっとこの子を見ててもらえる。さやか、おじいちゃんの敵を取ってくるから、ここでママの戦いを見ててね」

 「は~い!!」


 貴文がその聞き覚えのある声に驚いていると、貴文とジョージの間を何かがすり抜け赤武者数体を撫で斬りにした。

 そして貴文の目の前には明里がいた。


 「明里さん!!最後尾に・・・いや、それよりもここは僕らに任せて子供と一緒に後ろにいて下さい」


 明里は貴文の言葉に、周りのアシガロイドを斬り捨て前進しながら答えた。


 「貴文さん、私はお義母さんと一緒で守られるだけの女じゃないんですよ。それに子供を守るならここの突破は必須条件でしょう?」

 「そうだぞ貴文君。突破しようにも戦力不足なんだろ?山林側の敵は殲滅してきた。これで前だけに集中できるぞ」


 そう言って明里の言葉に続いて仁志が発言した。


 「仁志さんまで!でも殲滅ってどうやって?」


 貴文が思わず質問すると、明里は敵を斬りながら更に前に進むと答えた。


 「今はそんな話は後にしましょう。ここは私と仁志さんに任せて、貴文さんは一旦下がって休憩と先頭集団の立て直しを!みんなボロボロじゃない。そこの外国人さんがジョージね!あなたもよ」


 明里の言葉に貴文とジョージは先頭を明里達に明け渡し、後退して一息ついた。

 貴文は、体のどこかしらが麻痺してしまった者は後続で避難者の警護に当たっていた者と交代させた。

 更に、先頭の前進スピードが落ちたことにより、間延びしていた避難者の列が詰まってきたのを幸いに警護の為に分散配置していた戦力の一部を先頭に呼び寄せた。


 貴文が様々な指示を出している間も、明里は仁志のフォローを受けつつ複数の赤武者相手でも苦戦らしい苦戦もせずに前進を続けた。


 「スゴイ!!彼女はナンデスカ?」


 ジョージが、明里の戦いっぷりに見とれながら貴文に聞いた。

 貴文は明里が前進した所に敵が入り込まないように人員の配置と、その人員を順次交代させる指示を出しながら答えた。


 「忠良さんの息子の嫁さんで、弟子の中でも飛びぬけて強いお嬢さんだよ」

 「Oh~スバラシイデス!」


 貴文は明里に見とれているジョージを放置して、真理と一緒にいるさやかに質問した。


 「さやかちゃん、何があって先頭まで来たの?」

 「副村長のおじさんが、ここはいいから前に行けって。それで三人で前に来たの。そしたら山からアシガロイドが降りてきてたから、山の中にみんなで入ったんだよ~」

 「ライフルは仁志さんが?」

 「そうだよ~。山に入ったらアシガロイドがバラバラにあっちこっちにいるし、隠れてるのもいたからママがライフルを撃って敵を集めましょうって。それで集まってきたのをママが倒したの」


 貴文と真理はその答えを聞いて二人して額を押さえた。


 「無茶しすぎですよ・・・」

 「仁志おじさんもそう言ってたよ。そしたらママが、当たらなければどうということはないって世間じゃ言うって」


 その言葉に二人は本格的に頭を抱えた。

 貴文はそれでも何とか質問を続けた。


 「銃を使うとアシガロイドは強くなりますけど、普通に倒せたんですか?」

 「倒してたよ~でも途中で出てきた赤いのは、ママが仁志おじさんのライフルを投げつけてライフルと一緒に斬ってたよ。そしたら他のアシガロイドは逃げて行ったり動きが変になって、ママと仁志おじさんが残ってたのを倒していったの」

 「そうなんだ。ありがとうね!はい、これお礼の飴玉」


 貴文はさやかが飴玉に夢中になっている間に、真理と少し離れ小声で相談した。


 「敵の数はそう多くなかったのかな?」

 「そうですね。こちらの後方遮断をするアシガロイドも返り討ちに出来る数でしたし、その動きも散発的でしたから、私達の戦力分散を狙った嫌がらせだと思います。ですからそんなに戦力を山林に潜ませていたわけじゃないと思います」

 「だよねぇ。そうじゃなきゃ子連れでそんな無茶はしないか・・・それに指揮系統は別の集団だったみたいだし、赤武者を倒せば十分に勝算はあるか。こっちの赤武者は何体倒しても、指揮系統に乱れが出ないのはどうしてだと思う?」

 「そうですねぇ、赤武者は沢山いますから次々と指揮を引き継いでいるのか、本当の指揮官機がどこかにいるのかだと思います」

 「僕も同じ考えだよ」



 貴文達が話ている間にも、明里は次々と敵を倒し前進していた。

 そこにジョージがいち早く参加して、明里が自由に戦えるようにフォローを始めた事でさらに前進の速度は上がった。


 そして郡上市側の戦いの喧騒が、はっきりと聞こえるようになった。


 貴文は真理に郡上市側の現状を確認させた。


 「貴文さん、救出部隊は市境から1㎞程の所まで敵を押し込んだようです。しかし国道の東側にあるゴルフ場に敵の大集団が存在していて、国道を確保する為にゴルフ場にまで戦線を拡大してるそうです。それで私達には国道の打通を優先してくれと言っています。国道の敵を一時的にでも排除したら、郡上市側からゴルフ場と国道の間に防衛ラインを築く人員を素早く送ると」

 「ゴルフ場というとあそこのか・・・」


 貴文は真理の言葉に地図を思い浮かべた。

 真理の言う通り市境から1㎞程の所に、国道156号線と東海北陸自動車道に挟まれる形でゴルフ場が存在した。


 「このまま進むと、こちらの横腹をさらすことになりますね。防衛ラインの人員がどれほどの時間で来るか・・・」


 貴文は暫く悩んだあと指示をだした。


 「味方はすぐ近くまで来ています。ですので主力の一部を先行させて国道の打通を図ります!他の者はここで待機です。味方が国道を確保したら一気に通過します。後続にも出来るだけ前に集まるように指示を出して下さい」


 貴文は先頭で戦う明里達に声をかけた。


 「明里さん、指示は聞こえてましたか?一旦代わりますので一息ついて下さい。打通の先頭をお願いします」

 「聞こえたわ!貴文さん大丈夫?」

 「現状維持なら問題ないですよ」


 貴文は明里と交代して仁志にも下がってもらった。ジョージは鍛え方が違うからと、そのまま先頭で貴文と共にアシガロイドを牽制した。


 

 そして国道打通戦が開始された。

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