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830 今度は爆発しませんよ?

 結局、人竜組はどうにか立ち直った。

 俺に恥をかかせる訳にはいかんとかなんとか言ってた気がする。


『ホント、体育会系だよな』


 見た目は美人系のお姉さん集団なのにさ。

 勿体ないというか何というか。


 まあ、こういうのが好みという人もいるだろう。

 俺は気合いの入ったお姉さん系はちょっと怖いと感じるタイプだ。

 嫌いじゃないんだけどね。


 なんにせよ予定通り夜の間に移動を完了できて何よりだ。

 スピードを抑えに抑えて早朝に到着である。


 ちなみに爺さん公爵は皆が寝ている間に送ってきた。

 そのために俺だけ輸送機で別行動だ。


 で、先回りして到着先で待っていた。

 輸送機は仕舞い込んでドサクサな感じで紛れ込もうというのが俺の狙いである。

 俺が先回りしてたのがバレたら、うるさそうだしな。

 列車が到着するのを光学迷彩で隠れ潜みながら待っていた甲斐がなくなるというものだ。


 特に現場組が騒ぎ出したらシャレにならん。

 あいつら少し減ったとはいえ、まだまだ大勢いるし。


「スゲー、夜が明けきる前についちゃったよぉ」


 兵士の1人が降車するなり、そんなことを言い出した。

 最初に乗った時よりも平均速度が遅かったのだが。


「馬車だと絶対に考えられん話だぞ」


 別の兵士も驚いている。


『君ら、乗るの2回目だよな』


 慣れろとは言わないが、そこまで驚くことかと言いたくなった。

 皆の反応が怖くて【遠聴】スキルを使っているからツッコミなんて入れられないけどさ。


「確実に馬より速いよな」


「それで馬車なんか目じゃないくらい運んでるし」


「地竜よりパワーがあったりしてな」


「「「「「あー」」」」」


 やはり控えめにして正解だった。

 この反応だもんな。

 人目につかないルートを選んでも乗ってる面子にビビられては意味がない。

 想定以上に驚かれているのに戸惑ってしまったのは内緒だ。


『それにしたって、この反応はなぁ……』


 1回目は夢心地で2回目は現実に気付かされた感じだろうか。

 次からは、もう少し落ち着いてくれるとありがたい。


「やっぱ、あの王様はスゲーよな」


「空飛ぶ魔道具なんてポンと用意しちゃうし」


「それを言うなら橋の方が凄くねえかぁ?」


「そうそう、あっと言う間に橋を架けちまったからなー」


「いやぁ、開墾っしょぉー」


「確かにアレは凄かった」


「腰が抜けたもんなぁ」


「天変地異まで起こすんだもんよ」


「おまけに気付いたら水路まで完備されてるし」


「作物を元気にしたのもスゲーって」


「おおっ、それもあるよなっ」


 どうして次から次へと思い出してほしくないことをペラペラと喋ってくれるのだろうか。

 このまま聞いていると俺の精神がガリガリ削られそうなので退散することにした。



 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



 領主の館の前には長い杭が地面に突き立てられていた。

 上部にはこの地域の領主が縛り付けられている。

 見ようによっては、ツクシのように見えなくもない。


 杭の下の方に文字が刻みつけられていた。


『読める人間がどれだけいるんだ?』


 田舎であれば教育も行き届いてはいまい。

 文字が読めない者の方が多いだろう。

 最初はそう考えたが、1人でも読める人間がいれば周囲には伝わるか。

 さすがに誰も読めないなんてことはないはずだ。


[この者、元領主なり]


 こんなことが書かれるのには理由がある。

 誰だか分からないほど顔面が腫れ上がっているのだ。


 これには理由がある。

 なるべく地元民に殺させないためだ。

 深く恨まれていることは想像に難くないからな。


 素顔を晒したまま縛り付けられていたら石ぐらいは投げつけられていたかもしれない。

 弱っている者たちでは殺せるほど強くは投げられないかもしれないが。


 まあ、念のためだ。

 顔で判別できない状態なら本当に領主かどうか判断に迷うだろうと考えた。

 それが抑止につながれば、それで良し。

 ダメなら杭を倒してでも殺害されていただろう。


 それ程まで恨まれているなら仕方あるまい。

 元領主を守る義理も約束もないしな。


 その点、この男は運が良かったと言える。

 メールで上がってきている報告によれば何人かは地元民によって殺されているようだ。


 本来なら捕まって処刑されてもおかしくないのだが。

 どうなってもいいという覚悟の上の行動なのだろう。

 未来がないと絶望していれば、勢いでやってしまっても不思議ではない。


 そして文面は続く。


[新国王の命により爵位と領主の権限を剥奪す。

 今までの行いについては別途、沙汰が下されるであろう]


 これは先行したミズホ組の誰かの仕業である。

 勝手に分担していたので、ここの担当者が誰か俺は知らない。


 しかも既にここにはいないときている。

 次の場所に飛んでいるからだ。

 支援物資を運ぶべき場所は他にもあるからな。


「さすが精鋭の方ですな」


 オルソ侯爵が唖然としながらも感心していた。


「そうかい?」


 素っ気なく答えたが、内心ではかなり喜んでいた。

 親しい身内が褒められると嬉しくなるだろ?

 畏怖の感情が込められていないのであれば尚更だ。


 ただね、思うところが無い訳ではないのだよ。


『俺の時はどうして恐れられるんだぁーっ!?』


 間が悪かったり、やり過ぎたりだというのは分かっちゃいるんだがね。

 これ以上はやっかみになりかねないので切り替えないといけない。


 ササッと後片付けである。

 元領主に呪いをかけて箱へ詰め込んで出荷準備完了。

 夜になったら輸送機で流刑地へ運び出しだ。


 ついでに他の地域を回って呪い処理からの出荷もして回ろう。

 しばらく放置している間に餓死とかされても面倒だし。

 住民に殺されるならともかく簡単に死なれるのはね。

 誰も納得しないだろう。


 生き続けるなら長く苦しんでもらわないと。

 もっと苦しんでいた人たちもいるはずだからな。

 この程度の罰で納得するとは思わないが、やらないよりはマシだろう。


「呆気ないものですな」


 オルソ侯爵がしみじみと呟いた。


「自業自得だよ」


「そうですな。

 我々も気を引き締めてかからねば」


 こんなことを言う人間は大丈夫なんだがね。



 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



「そんじゃ、開墾と行きますか」


 開拓候補地を前にした宣言をした瞬間にミズホ組以外の皆が身構える。


「「「「「ズザザッ!」」」」」


 仰け反りたじろいだ時に引きずった大勢の足音が聞こえてきた。

 その様子に驚いたミズホ組が一斉に俺を見る。


『そんな目で見るなよぉ』


 そう言いたくなるくらい呆れたと言わんばかりの視線だ。


「陛下、何したんすか?」


 キースが聞いてくる。


『聞かないでくれよぉ』


「魔法で開拓しただけだぞ」


 ウソではない。

 それが全てではないけれど。


 ジーッと見てくるキース。

 アレは完全に見抜かれているな。


「ちょっと油断して大型地震を起こしてしまってな」


「「「「「ああ……」」」」」


 ミズホ組が揃って溜め息のような声を漏らして納得した。


「同じ魔法は使わんから、今度は大丈夫だ」


「本当ですか?」


 疑いの眼差しが向けられる。

 聞いてきたキースだけではない。

 ミズホ組はもちろん、他の面子も。


 遠巻きに見守っている地元民だけは何だかよく分かっていない顔をしているが。

 そんな彼らも皆のビビり具合が伝染しているようにしか見えない。

 胃が痛くなりそうな状況だ。


「前は小規模爆発の魔法なら大丈夫だろうと油断した」


「……乱発すれば地震にもなりますよ」


 見事に言い当てられてしまった。


「岩石を粉砕するなら発破だろうと思い込んでいたのが失敗だった」


「畑を作るのに爆発の魔法を使う方がおかしいです」


 ぐぬぬでギャフンである。

 反論の余地がない。


「つ、次は大丈夫だ。

 爆発はしないからな」


「当たり前です」


 そう言ってキースは溜め息をついた。

 グサグサくるような気がしてしょうがない。


 まあ、爆発しないという言葉を耳にして現場組などは安堵していたからいいけどさ。


『自業自得とはいえ癒やしが足りないぜ』


 今度こそ失敗しない。

 そもそも俺が活躍するからダメなんだ。

 だったら開墾作業をやってくれそうな助っ人を呼べばいい。

 誰を呼ぶのか。

 実は【諸法の理】で調べて目星はつけている。


「これなら大丈夫!」


 俺はコンパクトな光の魔方陣をいくつも展開させた。


「ちょっ、陛下っ」


 キースが慌てているが、個々の魔方陣にはそんなに魔力を注ぎ込んではいない。


「大丈夫だって。

 心配性だなぁ、キースは」


 俺が太鼓判を押しているのにキースは不安げだ。

 こういうことに関しては信用がないよな、俺。


「我が魔力を糧に現れ出でよ、シーザーたち」


 呪文は本来必要ない。

 ノリ半分で採用したようなものだ。


 ただ、半分は宣伝でもある。

 召喚魔法を使ったのだとミズホ組以外の面子に気付かせないといけないからな。


 魔方陣の中で旋風が巻き起こると次の瞬間には紅い塊が登場。

 ムクリと起き上がったそれの顔はキースに負けず劣らず迫力満点だ。

 紅の体と炎のような真紅のたてがみを持つ獅子もどきがそこにいた。

 地属性の妖精種、シーザーである。


 最初は大型犬サイズかと思っていたが、起き上がれば確実にライオンサイズだ。

 とにかくデカい。

 なにより大型犬なんかと違って脚全体が太いからな。


「「「「「……………」」」」」


 気が付くと何故か周囲が静まり返っていた。

 よく見てみれば震えている者までいる。


『どういうこと?』


 なんて言うまでもない。

 召喚したシーザーたちが原因だ。


読んでくれてありがとう。

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