表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
691/1785

681 先触れに取って代わる連絡手段を考えてみた

修正しました。

ずっとジジ抜き似 → ずっとジジ抜きに

 転送魔法と違って輸送機での移動は一瞬という訳にはいかない。


『到着するまで昼寝でもするか』


 そう思ったのだが……


「陛下ー、トランプしよー」


 ちょこちょことやって来たシェリーに捕まった。

 今回の同行者の1人である。


 シェリーがいるということは子供組も全員そろっている訳で。

 テーブルを囲んで席に着きトランプの準備を進めている。

 子供組も一応は護衛という名目での同行だ。


 人化した状態でも見た目は子供だから侮られる恐れはあるのだが。

 彼女らの強い要望だったこともあり断れなかった。

 どうやら王都のダンジョンに行ってみたいようだ。

 仕事優先とは言ってあるのだが。


『連れて行くことになるんだろうなぁ』


 残りの同行者はハリーとブルース、そしてマリカ。

 奥さんたちは1人も同行していない。

 必要に応じて呼ぶということで留守番である。


 ブーブー言われたけどね。

 変に気合いが入っていたから頭を冷やせと言っておいた。

 そんな訳で今回の面子が選ばれた訳だが……


『人選をミスった』


 ここまで人が少ないと子供組が俺をゆっくりさせてくれたりはしないのである。

 普段なら周囲に気を遣ったりして控えめになるんだけど。

 ライバルのいない状況下で遠慮などする訳がないのだ。


「トランプするニャー」


 ミーニャさんにも捕まってしまいましたよ。

 残りの子供組がスタンバイ完了で待ち受けている。

 こうなると断れない。

 という訳で到着までトランプ大会となってしまいましたとさ。


「ブルースもやろうぜ」


「えっと、自分もですか?」


 ブルースは遠慮気味だったが強引に混ぜておく。


「まあ、交流の一環だと思っておいてくれ」


 海水浴でも古参組との接触が少なめだったからな。


「はい」


 ブルースも誘われるなら普通に参加できるようだ。


「さて、何をやるかだよな」


「殺しの7並べはダメなの?」


 ルーシーが聞いてくる。


「8人で同時にやるとなると難しいな」


 やってできなくはないが面白みが半減する。


「じゃあジジ抜きがいいニャ」


 ジョーカーを使わずにランダムで1枚除けた状態でやるババ抜きだな。

 どのカードがハズレか分からないのでババ抜きより心理戦の要素が少ない。


「いいんじゃないか」


 ブルースは初めてのようだし難解なものは避けるべきだろう。

 特に反対意見もなかったのと対案もなかったのでジジ抜きとなった。

 到着するまでずっとジジ抜きになるとは思わなかったけど。


 でも楽しめたと思う。

 どのカードがハズレか分からないのがいいんだな。


 特に最後の2人になると緊張感も一気に跳ね上がるし。

 ピリピリした険悪な感じではないんだけどね。

 どちらかというと胸がドキドキする感じ。


 先に上がって見る側に回っても緊張させられるよ。

 ジョーカーだと分かっているババ抜きなら盛り上がるのも最初のうちだけだったと思う。


 俺なんか最後の方になると、それなりに熱が入っていたくらいだ。

 最初の方は適当とは言わないまでも流す感じでやっていたんだけど。

 俺もまだまだ子供なのかね。



 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



 トランプで時間を潰している間に王都に到着した。

 空を飛んで訪れているというのに、あまり混乱しているようには見えない。


 王城と違って街の方では騒ぎ立てる者たちもいるようだがね。

 地元民らしき人たちは珍しいものが来たと歓迎ムードというのが凄い。


 俺が言うのもなんだけど、まだまだ大騒ぎになっても不思議はないと思うのだが。

 珍しいものを見たってことで、はしゃいでいる雰囲気が感じられる。

 一度でも見たことがあれば日常の一部として受け入れられるのだろうか。


 そうだとするなら、この国の民はメンタルがタフだと思う。

 王都の人間だけかもしれんがね。

 新参者や行商人のような在住歴の少ない者たちの多くはパニックを起こしていたし。


 もっとも、すぐに鎮静化するんだけど。

 地元民がお祭り騒ぎ感覚だからだろう。

 周りの雰囲気に飲まれて呆気にとられてしまってパニックに陥ったことを忘れる。

 そんな感じだ。


 一方で王城サイドは混乱こそしていないものの慌ただしい様子である。


『いきなりの来訪だしな』


 先触れを出していないので、こうなる。

 まあ、移動速度が違うし。

 馬車なんかでの移動と違って先触れなど意味をなさない。


『何か瞬時に連絡する手段があった方がいいかもな』


 だからといって携帯電話を渡すのはどうかと思うが。

 しょっちゅう連絡を入れらそうな気がするからだ。

 用もないのに電話とかされても鬱陶しいだけである。


『あの食いしん坊なクラウド王なら無いとは言い切れないんだよなぁ』


 煎餅が食べたくなったから売ってくれとか。

 饅頭も食べたいとか。


 たまには食事会でもどうかとか。

 でも、作るのは俺の方なんだよな。

 まず間違いなく向こうがリクエストしてくるから。


 オムライスにナポリタンにカルボナーラ。

 他にもあれこれ。


『見事に食べ物関連しか思いつかねー』


 思わず苦笑してしまいそうになる。

 が、大国の王を思い浮かべる時に食べ物の情報しかないのはどうなんだろう。


 仕事はちゃんとするみたいだけどな。

 視察に自ら乗り出すようなアグレッシブな性格してるし。

 俺みたいに面倒くさがりじゃない。


 食い意地が張りすぎなのが玉に瑕ってところか。

 そのあたりも宰相が優秀だからカバーできるだろう。


『できる、よな?』


 確信が持てなくなってきた。

 食べ物関連で暴走すると懸念したから、こんなことを考えている訳だし。


『……………』


 やはり食べ物に関してだけは信用できそうにない。

 困ったものである。


 まあ、苦労するのは主に宰相のダニエルなんだが。

 そう考えると電話は渡せそうにない。


『別の連絡手段かぁ』


 真っ先に思い浮かんだのはメールだ。

 リアルタイムに会話するのでないなら躱すこともできなくはないだろう。

 メールだけのやり取りなら用件を選別できるだろうし。

 となるとタブレットが最適か。


『……………』


 手軽すぎるのは問題があるかもしれない。

 たとえ契約魔法で専用品にしたとしてもだ。


 冒険者ギルドに置いている鑑定の魔道具にしたって大きいし。

 渡したことで与える心理的影響を無視してはいけないだろう。

 王や宰相がまともでも、周囲が何を言い出すか分かったものではない。


『禿げ脳筋とか禿げ弟がいたもんなぁ……』


 今でも煩い輩がいるかもね。

 そういうのがゴチャゴチャ言ってきたら面倒だ。

 向こうサイドで止めてくれるとは思うけど。

 だからといって、今以上に苦労させるのは問題がある。


『タブレットよりも使い勝手の悪いものが好ましいか』


 大きくて持ち運びに労力を要するようにするだけでもマシかもね。

 例えばデスクトップパソコンとか。

 鑑定の魔道具も上位のタイプはそんな感じだった。


『アレを参考にするのはありかもな』


 見た目が似通っていればダンジョン攻略の戦利品で押し通すこともできそうだ。

 魔力効率を悪くしておけば頻繁にも使えないだろうし。

 ただ、パソコンだと思ってしまうと欲が出てくるんだよな。

 ワープロや表計算の機能も持たせたくなるのだ。


『後から機能追加できるようにして……』


 なんてことを考えてしまう。

 自重しようと考えていたのに、これでは意味がない。


 残念だがパソコンは、うちの魔道具がこの国で馴染んでからの方がいいだろう。

 そうなると連絡手段を考え直さないといけない。


『電話がダメで、メールも難しいか……』


 八方ふさがりな気がしてきた。

 いっそのこと伝書鳩型の自動人形を作ろうかとさえ思ったほどだ。


 却下するしかないけどな。

 手紙での伝達だと時間がかかるとかいう理由ではない。

 自動人形なら本物の鳥よりも速く飛べるから先触れとしても活用は可能だ。


 だが、それ故にオーバーテクノロジーが過ぎることは否めない。

 ダニエルや宮廷魔導師団総長のジョイス婆さんなら色々知ってるから大丈夫だけど。


『他の連中が受け入れられそうにないよな』


 自動人形なんて悪用しようと思えば、いくらでもできる。

 暗殺用の道具として使うことを考える者だって出てくるだろう。

 そういうアイデアの元になるものを渡すだけでも問題がある。


 自力でどうにかしようとする輩が出てくることも考えられる訳だし。

 西方における魔道具作成の技術力では極めて難しいとは思うがね。

 とはいえ、君子危うきに近寄らずだ。


『さて、他の手段か……』


 通信関連だと無線なんかもある。

 モールス信号でやり取り、はさすがに面倒だ。

 西方人たちからすると画期的なことかもしれんがね。


『ああ、ひとつ忘れていた』


 不意に思い出した通信手段があった。

 ファックスだ。


 日本では自宅でも使っていたのに失念するとは情けない。

 使っていたのは主に農家との取り引きでだが。

 パソコンの扱いが苦手でファックスのみで注文を受ける直売農家があるのだ。

 ルベルスの世界に来た今となっては、もう注文はできないけどな。


『しかし、ファックスかぁ』


 ありかもしれない。

 手書きしたものを送受信できるのは意味がある。

 誰が書いたかの見当がつけられるし。

 絵なんかも送ることができる。

 便利なようで書くという行為が入るから手間もかかればコストもかかるからな。


 うちじゃ紙なんて安いものだが西方ではそうもいかない。

 品質が一定の紙はこの国でもまだまだ高価だからね。

 予算関連の話になるとクラウドのオッサンも王らしくなるし。


 無駄遣いはしないはず。

 うちが卸す普通紙の値段が安いので絶対に大丈夫とは言えないが。

 その場合はダニエル爺さんが宰相として無用な連絡を阻止してくれると信じよう。


 色々と考えてみると、ファックスは悪くない案に思えてきた。

 問題は王の周辺にいる連中がどれだけ騒ぐかが鍵になるだろう。

 提案してみて反応が良さそうなら作ってみるとしよう。

 さて、どうなりますか。


読んでくれてありがとう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

下記リンクをクリック(投票)していただけると嬉しいです。

(投票は1人1日1回まで有効)

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ