682 なんか前と違わないか?
改訂版42話をアップしています。
修正しました。
着陸した方が無効に → ~向こうに
不意に気が付いて思考の海から脱した。
『そういえば着陸してなかった』
やはり俺は間抜けである。
だが、考えてみれば悪いことではないのかもしれない。
王城の方は変わらず慌ただしい雰囲気だし。
落ち着いてから着陸した方が向こうにとっても都合が良いだろう。
向こうの慌て振りを見ると罪悪感も少しだがあるし。
どうしようもなかったから開き直っているんだけどね。
『やはり先触れに代わる連絡手段は必須だな』
あの様子だと見張りなどの兵が偉い立場の人間を呼びに行ったように見受けられる。
『誰か出てくるまでは着陸を控えた方が良さそうだな』
俺がそんなことを考えていると──
「ねー、陛下ー」
首を傾げながらシェリーが問いかけてきた。
「何かな?」
「どうして着陸しないのー?」
その疑問に子供組の面々が頷いて同意している。
ブルースも気になるようだ。
ハリーはそうでもないみたいだけど。
まあ、たった1人では多数決で勝てる訳もない。
答えない訳にはいかないだろう。
「いきなり来てしまったからな」
この一言だけでは、よく分からないらしい。
子供組の一同は首を傾げていた。
「ほら、王城の様子を見てみな」
壁面モニターに直下の様子を映し出す。
「みんな走り回ってるニャ」
「忙しそうなの」
ミーニャとルーシーが不思議そうに首を傾げながら呟いた。
他の子供組の面々も王城内の慌て振りが理解できないようである。
うちの場合は同じ状況になったとしても、ここまで対応に時間はかからないだろうし。
どうしてこうなっているのか想像が及ばないのだろう。
「なるほど、先触れを出していなかったからこうなったのですね」
そんな風に言うところを見るとブルースは分かったらしい。
「ねーねー、どういうことー?」
すかさずシェリーがブルースに聞いていた。
「「どういうこと?」」
ハッピーやチーが追随する。
「ブルースは分かるのかニャ」
「分かるみたいなの」
ミーニャやルーシーも寄って来てグルリと囲われてしまうブルース。
「えっ、えっと……?」
困惑顔で俺に助けを求めるような視線を向けてきた。
どうやらブルースは子供が苦手なようだ。
大人になってから子供と接する機会が極端に少なかったのだろうか。
長らく戦闘奴隷だったそうだし無理もない。
「ブルースは説明するのが苦手みたいだぞ」
適当なことを言って助け船を出してみた。
すると子供組の圧が弱まる。
ブルースは密着されていた訳でもないのにホッと一息ついていた。
『そんなに苦手なのか』
どう接していいのか戸惑うのだろう。
苦笑を禁じ得ないところだ。
が、ブルースが再びピンチに陥るのは些か可哀相だ。
子供組の「どうして?」攻撃が再開される前に先手を打たねばな。
ブルースの代わりに俺が説明しなければならないだろう。
「俺たちが会いに来るということを向こうは知らなかったんだ」
それは分かるよなと確認するように語り掛ける。
みんな頷いている。
「こういう場合、先触れを出すのが西方での常識なんだ。
向こうにも都合ってもんがあるだろ?
そうしないと受け入れの支度をする時間が取れなくなるからな」
「「「「「おおー」」」」」
妙なところで感心している子供組。
ハリーも知らなかったようだ。
表情は変えないながらも「そうだったのか」なんて呟いている。
『そういや、教えてなかったか』
必要ないと思っていたからなんだが。
こういう西方の常識関係も学校で教えておかないと問題あるかもしれない。
ブルースは西方人だし奴隷になる前があった訳だから知っているみたいだけど。
『意外と高度な教育を受けているっぽいな』
出自に関してはノータッチだから気にしたことはなかったけど。
「あれでも頑張って出迎えの用意をしているみたいだぞ」
うちの面子のように高速で動くことはできないからな。
「客人に対する礼儀なんかのあれこれがあるから手間もかかるし」
「何もかもが、うちと違うニャー」
妙に感心しているミーニャさんである。
「「だねー」」
それに同意するハッピーとチー。
「あっ、偉い人が出てきたみたいなの」
ルーシーが壁面モニターの方を指差している。
見ると大勢引き連れて見覚えのある爺さんが出てきた。
ダニエルだ。
『宰相がお出迎えに顔を出すとはね』
しかもこの爺さん、クラウド王の叔父なんだよな。
クラウドのオッサンが唯一と言っていいくらい頭の上がらない相手でもある。
年寄りには見えないガッシリした体格で歩く姿からも老人特有の不調は感じない。
顔や肌を隠せば老人とは思われないだろう。
風格があり威風堂々という言葉がよく似合う。
文官や騎士、兵士、メイドたちを何人も引き連れているから尚のことそう感じる訳で。
『この爺さんの方が王って感じだよな』
こんなことは間違っても人には言えないがね。
「アハハ、おじーちゃんだねー」
何故かシェリーが笑っている。
『何がツボなんだ?』
聞かない方が良さそうだ。
理解できる自信がない。
「ああ、宰相のダニエルだな」
「王様の次に偉い人なの」
力説するように拳を顔の前で握りしめてルーシーが言った。
「うちだとガンフォールのじーちゃんだねー」
「「だねー」」
シェリーの言葉にハッピーとチーが相槌を打つ。
そして子供組全員で「アハハハハ」と笑った。
『だから、なんで笑うんだ?』
子供のツボはいまいち分からん。
「ハルト様、そろそろ着陸した方がよろしいのでは?」
それまで呟く以外は静かにしていたハリーが声を掛けてきた。
向こうは整列を完了させて待ち受けている状態だ。
「そうだな」
ダニエルの爺さんが出張ってきたんじゃ待たせる訳にもいかないだろう。
俺は輸送機をゆっくりと降下させた。
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輸送機を降下させて外に出た。
静まりかえっていて居心地が悪い。
『こういう堅苦しい感じって苦手なんだよなぁ』
だからといって帰る訳にはいかない。
ダニエルの方へ向かって足を踏み出した。
周囲も含めて反応を観察しつつだ。
全般的に子供組を見て驚いたようではあったが、誰も何も言わなかった。
一部の文官は困惑の表情を浮かべはしたがね。
『幼女連れだもんなぁ』
それでも侮蔑するような感じではなかった。
これが他所の国だったら、こうはいかないだろう。
騎士や兵士たちの何人かは顔を引きつらせているようだ。
必死に無表情を貫こうとしている風である。
そういう面子に限ってレベルが高い。
もちろん、うちを基準にしなければだが。
『子供組の気配から察知したか?』
格上の強者であることを。
完璧に隠蔽すれば知られることもなかっただろう。
それでは侮られることも考慮して子供組には言い含めておいた。
露骨すぎるとメイドたちまで畏縮しかねないので程々にと言っておいた結果がこれだ。
で、メイドたちの反応はどうかというと……
ほとんどの者が瞳をキラキラさせていた。
どうやら子供組はメイドたちの中ではアイドルとなったようである。
『まあ、可愛いのは分かるけどな』
そして宰相のダニエル。
一部の騎士たちに近い反応だった。
ただ、顔の表情を変化させたのは一瞬のみ。
そのあたりは年の功というやつだろう。
なんにせよ、ここでは侮られることがなさそうだ。
それが分かっただけでも収穫と言える。
ダニエルの前まで進み出ると俺の方から声を掛けた。
「いきなりの訪問ですまないな」
「いえ、そのような畏れ多いことです。
ヒガ陛下に来ていただけるなら、いつでも歓迎いたしますぞ」
その返事は今までのダニエルの印象を変えるものとなった。
『久々に会ったと思ったら、どういうことだ?』
輸送機から降りるまでは以前と同じだと感じていたのだが。
話をすると違和感を感じた。
前に会った時より威厳のようなものが薄らいだというか。
へりくだる雰囲気が出たというか。
念のために過去ログを振り返ってみたんだが……
『……………』
どうやら気のせいではないようだ。
「そう言ってもらえるのはありがたいがな。
今後のことを考えると良いとは言えんだろう」
「なんと勿体なき御言葉」
『からかわれているのか?』
一瞬そう思ったものの、違う気がした。
「実は伝書鳩を使うより速い連絡手段があるんだ」
「なんと!?」
具体的な説明もしていないのに驚かれてしまった。
鳩より速いと言われても想像がつかないようだ。
「魔道具なんだが」
「おお、そういうものが有るのですな」
こういう反応をするということは心当たりもないのだろう。
少なくとも、爺さんは知らないらしい。
「どういうものかの説明は後でするとして興味はあるか?」
「有る無しで言えばあります。
ですが、そのような魔道具となると現状での購入は難しいでしょう」
『ん?』
何か勘違いされてしまったようだ。
「売り込みをしているわけじゃないぞ」
そう言うと、ダニエル爺さんには怪訝な表情をされてしまった。
『俺が商人ギルドに登録していることは教えてあるからなぁ』
そこから誤解されてしまった恐れがある。
さて、どう話を進めたものか。
読んでくれてありがとう。




