674 スイカ割りでチーム戦が始まる
「さて、質問はあるかな」
妖精組の1人が手を挙げた。
「ほい、そこ」
そう言いながら指差すと──
「ポイントはどう計算されるんですか?」
指名されたパピシーが質問を口にした。
ポイントの計算は重要な点だ。
勝ち負けに直結するからな。
それ故に間違えてはいけない部分である。
「満点だと百点になる。
そこから減点されるパターンだ」
まず基本となる部分だけ説明。
「細かい部分については説明したルールと一緒にメールで送っておいた」
詳細についてはテキストで確認した方が確実だろう。
そう思って、この方法をとったのだが……
みんな一斉にメールを確認し出した。
テキスト上で確認しておいてほしいと言う隙もなかったさ。
新たに疑問が湧いてきたりすることも考えられるから悪いとは言わないんだけど。
『どこまでマジなんだ?』
俺としては、そこまで必死にならなくてもと思うのだけれど。
何にせよルールについては競技中に確認できるようにしておいた。
網膜投影すれば眼鏡の特殊効果の影響を受けないようになっている。
『酔うかもしれんけどな』
皆が読み終わる頃合いを見計らいながら、待つことしばし。
その後も質問を募ったが大したことは聞かれなかった。
ポイントの判定は自動人形が行うのかどうかという程度だ。
質問がないなら早速はじめなきゃな。
「よーし、それじゃあチームを組んでくれ。
その間に俺はレーンのセッティングをするからな」
「「「「「おー!」」」」」
気合いの入った返事を受けて俺は行動を開始した。
皆も即席のチームを作るべく動き始めている。
それを横目に砂浜を整備していく。
まずは地魔法で砂を均す。
水平が取れているかを確認して……
『よし、いける』
次に均したレーン内の砂地をやはり地魔法で硬化させる。
こうしないとスイカが転がらないのでね。
それができたらレーンを幻影魔法でセット。
このとき各レーンにナンバーを順に入れていくのも忘れない。
『これをしておかないとグダグダになりかねないからな』
どのチームが何点とったかの管理をしやすくするのは大事だ。
まあ、普通であり基本的なことなんだけど。
レーンを描き終わったら、更に術式を刻んでいく。
複雑な記述はしなくていいので、あっと言う間に記述終了。
念のためにチェックして問題ないことを確認。
それが終わればレーンのセッティングは完了だ。
『後は自動人形を配置して……』
ポイントのカウントだけなのでメイド型ではなく猫型にした。
邪魔にならないからね。
「さて、チームは組み終わったかな」
背後を振り返ると──
「おっと」
全員、チームごとに整列し直していた。
今か今かと待ち構えた状態である。
意気込みに圧倒されそうだ。
「それじゃあゼッケンを配るからなー」
「「「「「はーい」」」」」
俺は倉の中で即席に作った2枚1組の数字が書かれた布地を引っ張り出した。
「今から転送魔法で配布する。
受け取ったら胸に当てるだけでいい」
参加者全員に転送魔法で配布すると皆指示通りにゼッケンを胸に当てていく。
するとピタリとゼッケンが張り付いた。
そこから2枚のうちのもう1枚が浮き上がり背後に回ってピタリ。
『即席にしては綺麗な動作だったな』
皆も驚いたり喜んだりしている。
とはいえ、その興奮も長続きはしない。
皆の意識は「おやつ増量」に支配されたも同然なのだ。
「いま配布したゼッケンのナンバーと同じレーンでプレーを行うのは分かるな?」
「「「「「はいっ」」」」」
「それでは表示されたナンバー付近に移動してくれ」
「「「「「おーっ」」」」」
返事をすると同時にシュバッと散っていく。
シュタタタと移動完了。
と思ったが、人竜組は不慣れなので少し遅れた。
焦った様子を見せているが周囲は無反応。
彼女らが慣れていないのは理解しているからな。
遅いと文句を言ったり不満げな視線で見たりなんてことは誰もしない。
人竜組も所定の位置に移動したところで次だ。
結界を展開する。
「……………」
ベリルママの可変結界を真似てみたんだが。
『ムズいな、これ』
制御がハンパなく難しい。
しかも再現性が今ひとつである。
「…………………………」
どうにか形にはなったがレベル差を完全には吸収しきれない代物になってしまった。
『やっぱベリルママは凄い』
神様だから当然と言えば当然なんだが。
チラリとベリルママの方を見るとニッコリ微笑まれてしまった。
俺の考えも読まれてしまったのだろう。
上機嫌のベリルママを見るのは嬉しい。
が、俺の未熟振りを露呈してしまったのは悔しいものだ。
『もっと修行を積まないとな』
その辺りは帰ってからになるので、今は保留だ。
「この後、的の上にアイマスクと竹刀と眼鏡、それからスイカを転送する」
これらが無いとゲームが始まらないからな。
皆の表情もより引き締まったものになっている。
「先に注意しておくが、眼鏡は所定の位置で装着すること」
所定の位置とはレーンのサイド部分のことである。
「いいか? 絶対だぞっ。
必ず所定の位置についてからだからな」
大事なことなので2回言ってみた。
え? 逆にフラグになる?
俺もそう思う。
だけど、念押ししておかないと「言った」「言ってない」になりかねないのでね。
そうならないための予防策みたいなものだ。
ズルいだって?
ズルくて結構。
面倒くさいことになるより余程マシである。
とにかく注意はしたので転送魔法で用具とスイカを送った。
「この海水浴におけるラストイベントだ。
みんなも思いっ切り楽しんでほしい」
挨拶は手短にしておく。
中学校の校長先生みたいに延々と喋り続けてダレるとゲームにも影響するからな。
「「「「「お─────っ!」」」」」
拳を突き上げて応じる一同。
熱気は維持されているようで何より。
後はそれを冷まさないよう、さっさと始めるだけだ。
「それではゲーム開始!」
俺の宣言を受けて皆が一斉に動き出した。
「「「「「最初はグー、ジャンケンポン!」」」」」
「え?」
一瞬、呆気にとられてしまった。
よくよく考えてみると、チームを組むには組んだが役割分担はできていなかったようだ。
ここで決めるべくジャンケンになったのも仕方のないことなんだろう。
『やはり事前にルールも含めて告知しておくべきだったかな』
己の不手際に恥じ入るばかりである。
「「「「「あいこで、しょっ!」」」」」
「「「「「あいこで、しょっ!」」」」」
「「「「「あいこで、しょっ!」」」」」
「「「「「あいこで、しょっ!」」」」」
「「「「「あいこで、しょっ!」」」」」
「「「「「あいこで、しょっ!」」」」」
人数が多いチームほど簡単に決まらない。
全員で一斉にジャンケンをやれば延々とあいこを出し続けるのは目に見えている。
これなら差しでジャンケンして勝ち抜くスタイルの方が早いかもしれない。
さすがに途中で気付いて切り替える者たちが出るようになった。
そんな中、半数に別れてのジャンケンに切り替えるチームが出てきた。
『ああ、なるほど』
あれでも充分に決着がつきやすくなる。
で、それぞれの勝者が竹刀かスイカを転がすかで勝負すると。
効率的には差しでジャンケンするより上のようだ。
思わず感心させられたが、本来のゲームは始まっていない。
『そういやそうなんだよなぁ……』
微妙には思ったが、介入すると変なことになりそうだったのでパス。。
『タイムアタックの競技じゃないしな』
とにかく待つことにした。
その判断は間違いではなかったと思う。
徐々にゲームを始めていくレーンが出てきて、あちこちで歓声が上がる。
いや、悲鳴と言うべきか。
「何なのっ、コレ!?」
「フラフラするぅ」
「目が回るよー」
「外せないわっ」
「どっちがこっちであっちなのぉー?」
『言わんこっちゃない……』
あれほどやるなと言っておいた所定の位置につく前の眼鏡装着。
フラグをへし折ることはできなかったようだ。
まあ、全員がそれをした訳ではないのだが。
ちなみに所定の位置で装着した者たちも似たような悲鳴を上げていた。
多少はマシなように見えるのだけれども。
『そういう風に作った眼鏡だからな』
俺が配布した眼鏡はグニャグニャと視界が歪む効果が付与されている。
しかも動けば動くほど酷いことになる代物だ。
目の前のすべてが揺れたり歪んだりすれば悲鳴のひとつも飛び出すだろう。
『指示を出す側が普通に見えてちゃ簡単に終わってしまうもんな』
うちの面子だと普通にスイカ割りをすると面白みに欠ける結果になりかねない。
最初はタイムアタックにしようかとも考えたんだけどね。
それじゃあスイカ割りの混乱した状況が楽しめなくなるので却下した。
「たぁすぅけぇてぇ~」
無闇に動いた結果、短時間で酷く酔ったようになってしまった者まで出始めた。
定位置にいる面々はどうにか大丈夫なようだが。
『やれやれ……』
競技の間は外せないようにしたのが裏目に出た。
ズルができないようにしたつもりだったのだが……
「だから言っただろう。
所定の位置につくまで眼鏡は装着するなと」
「「「「「すぅみぃまぁせぇ~にゅ~」」」」」
このまま放置もできないので対応する。
「眼鏡を装着してふらつく者は目を閉じろ」
指示に従えばものの数秒で酔った感覚が消えるはず。
アルコールが入っている訳じゃないからな。
一般人だと目を閉じたくらいでは、すぐにどうにかできる訳でもないのだろうが。
そこは高レベルな面子が集まっているだけのことはある。
目を閉じている間に転送魔法で所定の位置につかせた。
『まったく世話の焼けることだ』
読んでくれてありがとう。




