555 偵察部隊を……
修正しました。
ミズキはスゴークの右腕を → マイカ~
世界間 → 世界観
終わらせよ → 終わらせてね(+1行追加しました)
攻撃を解禁する前にミズキの実験が終わったのかを確かめておく必要がある。
「ミズキ、そっちの実験は終わりでいいのか?」
『あっ、うん。
テレビで見た通りになるか確かめたかったの』
『それって魚群探知機の開発秘話のやつかい?』
何を思ったのかトモさんが話しに加わってきた。
『そだよ』
『プロ計画Zだね』
『あー、トモくんも見てたんだー』
『アレは興味深かったからね』
『だよねー』
敵が来ないと思ったら雑談モードですか。
『水中で超音波を出しても泡が邪魔するって本当だったんだなーって』
ミズキは実に満足そうだ。
まあ、実験したくなる気持ちは分からなくもない。
日本にいた頃だったら自分で確かめる機会なんてなかったからな。
『この実験は意義深いものになりそうだね』
トモさんは先のことも考えているようだ。
『敵は意思の疎通ができない上に視覚情報だけで索敵しないといけなくなる』
それだけではない。
現状で奴らは著しく混乱している。
敵部隊の本隊でも同じような状態になるかは不明だ。
が、もしそうなら一方的に戦闘が終わることになる。
敵の数など関係ない。
混乱して攻撃してこない敵など動く的でしかない。
アメリカ人なら七面鳥撃ちだと言うような状態である。
元日本人の俺にはその感覚がもうひとつ分からないのだが。
だったら言うな?
いや、ごもっとも。
とにかくメタルサーバントを作った意味がなくなるくらいの実験結果である。
『戦闘が味気なくなっちゃうけどね』
ミズキも興味本位だけではないか。
『それは副次的な効果だよ』
トモさんがそんなことを言い出した。
ちょっと予想外である。
何か俺も気付いていない凄い効果があるというのか?
それは興味深いね。
『まるでグランダムの世界観にピッタリなシチュエーションになってきたね』
「……………」
ガクッときましたよ。
トモさんがそちらを重視するのはよく分かるんだけどね。
俺もレーダーが使えないとかは、ちょっと似てるかなとは思ったからさ。
一方でマイカは些か呆れ気味である。
『ちょっとー、いつまでたっても敵が向かってこないんですけどぉ』
いや、かなり不機嫌と言っていいだろう。
よくキレないものだと感心させられてしまった。
攻撃を解禁したらタコ殴りにしそうだ。
『あー、ゴメーン』
珍しくミズキがテヘペロしている。
レアな上に可愛い。
後でリクエストして写真に撮らせてもらえないかな。
たぶん恥ずかしがって嫌がると思うから無理だろうけど。
『ゴメンじゃなくて魔法を解除してよー。
でないとアイツらいつまでたっても接近すらしてこないじゃない』
『あ、うん、解除するね』
「ちょいと待った」
ここで止めないと、またしても回避するだけの作業プレイになりかねないからね。
そうなれば戦闘どころかゲーム以下のグダグダな状況になるだろう。
タイミングとしてはギリギリだ。
マイカに機嫌を悪くされちゃ敵わないからな。
宥めるのが大変になるのは勘弁願いたい。
『ハルくん?』
俺の意図が掴めずにミズキが首を捻っている。
『ちょっとハルー。
なんで止めるのよぉ!?』
怒鳴りはしないが今にも噛みつきそうな形相のマイカ。
もう待つのは嫌だと全身で語っている。
戦闘で攻撃を封印させられれば、そんなものかもしれない。
我が妻は脳筋チックである。
「そのままエンドレスに回避作業がしたいのか」
『うっ、それは嫌だ』
「だよな。
だから攻撃を解禁する」
『ホントにー!?』
目を丸くして驚くマイカ。
『どういう風の吹き回しよ』
疑り深い妻である。
ただただ喜ぶかと思ったのだが予想外。
そんなに意外だっただろうか。
「吹き回しも何も、マイカが頑張った御褒美みたいなもんだ」
『えーっ、大したことしてないよぉ?』
天然か。
「あれだけ積極的に教材提供しておいて何を言うか」
『えっ、そ、そう?』
「とにかく魔法を解除したら攻撃を解禁する。
好きな方法で終わらせていいぞ」
『ホントに!?』
マイカは信じられないらしい。
「言ったろ。
御褒美みたいなもんだって。
サクッと終わらせようが、じっくり取り組もうが、好きにすればいい」
『やったー!』
ここでようやく喜ぶか。
あまりチョロくなかった。
チョイチョロくらいだろうか。
そして喜怒哀楽がハッキリしているマイカだからレアでもない。
うん、可愛くないわけではないんだぞ。
でなきゃ娶ったりはしない。
……惚気ている場合ではないな。
マイカのことだから1人で終わらせてしまいかねない。
釘を刺しておかねば。
「1人1組な」
『あ……』
浮かれていたマイカの表情が固まった。
それだけでミズキやトモさんと一緒に出撃している認識が薄いのがよく分かった。
端からフォーメーションとかは組んでなかったしな。
その証拠に回避の時も単独で突っ込んでいったくらいだし。
「やっぱりな」
『えへへ』
照れくさそうにテヘペロしやがった。
あざといから可愛くないけどな。
しょっちゅうやっているからミズキのように希少性もない。
ほとんど癖のようなものだ。
「敵だけじゃなく友軍の把握もちゃんとしてくれ」
『へーい』
「……………」
これまた不安になるような返事のしかたであった。
本当に大丈夫なんだろうか。
□ □ □ □ □ □ □ □ □ □
『じゃあ、無限アワアワ地獄の魔法を解除するね』
そのネーミングはどうにかならなかったのだろうか。
だが、そう思うのは俺だけのようだ。
『了解』
淡々と返事をするトモさん。
まるで気にしていないようだ。
あるぇ?
『さあ、来いっ!』
鼻息も荒く意気込んで見せているマイカ。
口火を切るのはマイカになりそうだな。
「くれぐれも言っておくが、ジャイアントシャークは食材だってことを忘れるなよ」
『任せたまえ』
仕事用の声とサムズアップでそんなことを言うトモさん。
頼もしく聞こえるようで滲み出る不安感がある。
真面目に答えたようでいて不真面目さを感じたせいだろうか。
『了解』
素っ気なく答えたのに安定感すら感じるミズキとは大違いである。
『テヘヘ』
何故か照れ笑いするだけで応じるマイカがいちばん不安を抱かせたけどな。
「おい、コラ」
声を掛けずにはいられない。
「誤魔化そうとすんな。
ちゃんと返事しやがれ」
『フヒヒ、サーセン』
油断も隙もあったもんじゃない。
だが、メンバーチェンジする訳にもいかない。
そんなことをしたらマイカが子供のような駄々っ子になってしまいかねないからだ。
『カウントダウン入ります』
それが分かっているからミズキも止まらない。
『5・4・3・2・1・ゼロ!』
シャークマンたちを覆っていた泡が消えた。
一瞬、呆気にとられたように動きを止めてしまう。
それを見逃さずギラリと捕食者の目を向けた者がいた。
『狙い撃つぜ!』
そんなことを言いながらマイカはスゴークの右腕を構えさせる。
左のクローをそっと添えるようにして。
ほんのわずかな時間で主兵装である右腕部のビームを発射するスゴーク。
まあ、撃ち出したのはビームじゃなくて光魔法の光弾である。
熱もあるので火魔法も部分的に混じっている。
水中でビームは大幅に減衰するとか熱が奪われるとかはない。
そういう部分は再現していないのは御愛嬌。
基本的に細かい部分は気にしないマイカらしい。
魔法ならではの攻撃方法だった。
とにかくなんちゃってビームの光弾がシャークマンの脳天を撃ち抜いた。
ジャイアントシャークの背中をも貫通していく。
そのまま直進し、結界に当たって消滅した。
貫通はしたが血は流れ出ない。
焼きながら貫通していったということだ。
それもマイカが光弾で攻撃することを選択した理由のひとつだろう。
けれども台詞の方を重要視していると思う。
でなきゃ、こんなにアッサリ終わらせる訳がない。
散々待たされたわけだからな。
『あー、ズッケエ。
俺が言いたかった台詞をーっ』
悔しそうにトモさんが唸っていた。
『フフン、こういうのは早い者勝ちだよん』
対するマイカはドヤ顔である。
『腹立つぅ、すっげえ腹立つ!』
そんな2人を尻目にミズキはグランダムの専用ライフルでサラッと光弾を撃った。
特に台詞も気負いもなく。
結果はマイカの時と同じだったが。
『こっちはこっちでさっさと終わらせるしぃ!』
『下らないこと言ってないで終わらせてね。
残ってるのはトモくんだけだよ』
ミズキもなかなかに手厳しい。
『はい、サーセン』
トモさん、完全敗北である。
いや、違う。
トモさんの戦いはこれからだ。
すぐにけりはつくと思うけどね。
読んでくれてありがとう。




