556 それは愛なのか?
修正しました。
七日に → なのか
永世監督 → 若大将的監督
「なに言ってんだか。 → (次行を変更しました)
重症である。 → (手前に追加しました)
無限アワアワ地獄から解放されたシャークマンが2体、速攻であの世行きとなった。
マイカとミズキの射撃で。
敵がまともに動き始める前に。
お供のジャイアントシャーク諸共の結果だ。
おそらく向こうは何が起きたのか理解することなく終わっただろう。
痛みを感じたのかすら怪しいところである。
そういう意味では慈悲深いと言えるのだろう。
残されたシャークマンとしては残酷な現実を突き付けられることになるのだが。
見張りをしていた奴が残っている。
すぐには動き出さなかった。
唖然としているのか恐怖を感じているのか、それは分からない。
あるいは状況を認識するのに時間がかかっただけなのかもしれない。
それでも残虐性を感じさせる表情ではなくなっていた。
まるで置物のようである。
置物は動いたりはしないがな。
3体目は結界の方を見ることはなかった。
出られないのは理解している。
パニックに陥れば、あるいはがむしゃらに逃亡を図ろうとしたかもしれない。
そんな素振りを見せなかったということは覚悟を決めたのだろう。
ただし、倒されるのを待つという訳ではない。
一矢は報いてみせるという覚悟だ。
シャークマンはどこまでも好戦的な魔物のようである。
水流操作の魔法で突進の準備にかかっていた。
それを見て馬鹿のひとつ覚えで自棄クソの突撃をするのかと思ったのは一瞬だけ。
雰囲気が違う。
取り乱した様子もなく落ち着きがあるのだ。
己にできる最大限の攻撃をすることだけを考えているのかもしれない。
途中で散ることもあるだろうに。
覚悟を決めただけのことはありそうだ。
実力の程はともかく、こういう発想は俺としては嬉しくない。
本隊の連中が同じ思考で向かって来るのは好ましくないからだ。
こちらの士気に影響しかねないからな。
死ぬ気で立ち向かってくる奴ほど面倒なものはない。
千のシャークマンが5万のシーゴブリンを従えて突っ込んでくるのだ。
舐めてかかると一時退却ぐらいはさせられるかもな。
それが分かっただけでも収穫だ。
後は片づけて軍勢に対する準備をするのみ。
が、未だトモさんに動きはなかった。
「ビーム撃ち込んで終わりにしないのかい」
トモさんに問いかける。
何もせずに待っているからだ。
明らかに向こうが突進してくるのを待っている。
『それじゃあ接近戦の教材が足りないだろう』
「む、それもそうか。
そこまで考えてなかった。
サンキュー、トモさん」
『なに、礼には及ばんよ』
格好をつけているのか仕事用の声を使ってそんなことを言っている。
さすがプロだと思うよ。
確かに格好いい。
赤スゴークのクローをワキワキさせてなければね。
嫌な予感がする。
「ディムの土手っ腹をぶち抜くシーンの再現は無しだよ」
なぜだかトモさんはこれを狙っている気がしたのだ。
赤スゴークといったらこのシーンが真っ先に思い浮かぶ人も多いはずである。
ジオラマの再現率も高い。
リアルで真似をしたくなっても不思議はないよな。
あちらは洞窟内での戦闘だから再現率としては良くないだろうけど。
実際に赤スゴークに搭乗しているんだし、うずく気持ちも分からなくはない。
だが、食べ物を粗末に扱うのは良くない訳で。
向こうはまだ食材にすらなっていない状態だが。
最初から一部とはいえダメにする覚悟で食材を扱うなど許されないことだ。
「やったら罰ゲームの特製濃縮青汁の一気飲みだからね」
『OH! 罰ゲーム!
非常に厳しいー!』
罰ゲームの存在すら忘れているとは思わなかったさ。
それだけ再現シーンのことばかり考えていたってことなんだろうけど。
「なに言ってんだか。
ジャイアントシャークは食材になるんだから粗末に扱ってはいけないよ」
『しまった!
それがあったんだ』
グランダムのシーンを再現することしか見えていないとは重症である。
その気持ち、まさしく愛だ。
どこかの若大将的監督風に言うならグランダム愛だろう。
そこまでくると呆れを通り越して感心してしまう。
『そもそも、なんで分かったんだい?
俺はまだ何も言ってなかったのに』
不思議そうにトモさんが聞いてくる。
本気で言っているのだろうか。
『分からない方がおかしいわよ』
マイカがツッコミを入れてくる。
俺も同感だ。
『あのシーン、有名だもんね』
ミズキも援護射撃してくれるようだ。
『とにかくクローで貫通はナッシングよ』
そしてマイカが畳み掛けにかかった。
『ううっ』
トモさんは言葉に詰まっていた。
反論できずに唸っている。
おそらく例のシーンを無理やり再現するつもりだったのだろう。
そしてテヘペロで誤魔化すつもりだったと思われる。
安直すぎるだろ。
道理で受け答えが真面目に見えなかった訳だ。
強行するところを想像していたのかもな。
それだけやりたかったことを反対されるとは不幸なことである。
マイカはそういう部分を顧みなかったりするからな。
『ジャイアントシャークは食材として上物なんだから当然でしょうが』
だからこそ畳み掛けている訳で。
あんまり追い込むと面倒なことになるんだが……
マイカたちはそれを知らんしな。
『狙い撃つぜを言われた上に、それまで封じられるのかぁー』
絶望的な悲鳴を上げながら頭を抱えて仰け反るトモさん。
とうとう追い詰められちゃったか。
『大袈裟ねえ』
マイカはそんなことを言って呆れているが、必ずしもそうとは言えない。
すでにトモさんがキレ始めているからな。
『堪忍袋の緒が切れたっ』
この台詞だけ聞くと本気でキレたと思うかもしれない。
だが、俺は気が付いた。
あの方の有名な台詞の一部だ。
だって物真似しながらだもんな。
数々の迷言を残してきたグランダムシリーズのあの方をここで引っ張ってくるとは。
グランダム愛だけじゃなく親友へのオマージュまで引っ張り出してきたようだ。
なんにせよ、プチキレたようである。
ぶち切れではないので悪しからず。
あくまでプチでキレた状態だ。
まあ、暴走し始めていることに代わりはないのだけど。
『今日の私は阿修羅すら凌駕する存在だ!』
やはり永浦氏のキャラであったようだ。
『もしもし、トモ助?』
トモさんがどんな状態なのか気付いていないマイカが呼びかけるが反応はない。
『台詞がミックスしてるよ。
同じ人の台詞だけどさ』
それでもお構いなしにツッコミを入れているが、やはり反応はない。
完全に没入してしまっている。
「トモさんは暴走しちゃってるみたい」
キレた時まで親友の持ちキャラのネタを使うとは業が深いというか。
そうやって発散している可能性は否定できない。
納得すれば暴走も収まるだろうけど。
そのあたりが早まるかは永浦氏が鍵を握っているかもね。
「終わるまで放置プレイでヨロシク」
『うわ、何それ怖い』
その言い草はないだろうに。
煽ったお陰でああなってるんだぞ。
まあ、俺も一因ではあるだろうから偉そうなことは言えないけどさ。
そのまま見ていると、ジャイアントシャークが突進を開始した。
ロール運動はなしだ。
『見せてもらおうか。
シャークマンの騎乗の腕前とやらを』
今度は永浦氏じゃなくて三毛田庄一さんだ。
もちろん物真似つきである。
十八番中の十八番だからな。
赤ズワクに搭乗しているときの台詞だけど。
そこは拘らないようだ。
まあ、さっきも赤スゴークとは関係ない御方の台詞を持ち出してきてたけど。
いずれにしてもグランダム祭りである。
そしてこの台詞を言うということは自ら突っ込んでいく訳だ。
赤スゴークがシャークマンたちに迫っていく。
あっと言う間に互いの距離がなくなった。
リーチは長大なランスを突き出しているシャークマンの方が長い。
渾身の一撃を与えんと欲したのだろう。
ランスと一体化しようとするかのように体を縮めていた。
保持力は上がるかもしれない。
だが……
『当たらなければ、どうと言うことはない』
またしても三毛田さんである。
鬱憤を晴らすかのように物真似の連続だ。
頭から突っ込んでいた赤スゴークが仰け反るような起動で回避した。
そのままジャイアントシャークの腹側へと回り込んでいく。
すかさず蹴りを繰り出す赤スゴーク。
体をくの字に折り曲げてジャイアントシャークは飛ばされていく。
首ポキならぬ背骨ポキである。
この一撃でジャイアントシャークは終わった。
それでも飛ばされる勢いが落ちることはない。
赤スゴークが蹴りと同時に魔法を使っていたのだ。
触れた対象物に水の抵抗を無くさせる水魔法を。
蹴られた直後の勢いそのままに海面を突き破り天へ昇らんと上昇していく。
さすがに重力には逆らえなかったが。
それでも、それなりの高さまで飛ばされていた。
折れ曲がった体を逆方向の弓なりに反らしながら落下していくジャイアントシャーク。
そして水魔法の効果が切れた状態で海面へと叩き付けられた。
その衝撃でシャークマンも終わる。
いかに屈強であろうと内臓は鍛えようがない。
墜落の衝撃でシャークマンの内臓は破裂。
骨も何カ所か折れ、脳も損傷していた。
この状態で生きていられるはずもない訳で。
ジャイアントシャークと共に海中へと沈んでいく。
格闘戦でもアッサリとけりがついてしまった。
そのことに関してトモさんが特に思うことはないらしい。
プチキレ状態は既に解除されていた。
『回収~』
暖気な空気を感じさせる口調で食材他を倉庫に回収していくトモさんであった。
読んでくれてありがとう。




