表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
438/1785

432 新区画も簡単なお仕事ですが何か?

お待たせしました。

すみません。

 ジェダイトシティの中で堀付きの壁を作り出した。

 その外側は冒険者たちなどに開放していくことになる。

 冒険者ギルドや宿屋などを設置して新しいダンジョンに対応するのだ。


 故にミズホ国民の生活の場とはならない。

 仕事場にはなるけどね。


 言ってみれば歴史の授業で習った長崎の出島である。

 ここは山岳地帯だから島に見立てるのは無理があるかもだけど。

 まあ、言いたいのはシステム的な部分だ。


 外の門からジェダイトシティに入ってきたとしても本当の意味で入国したことにはならない。

 更に堀と壁で区切られているからだ。

 その壁の内側をミズホ国民だけが出入りできる街とする。


 もちろん部外者は入れないようセキュリティを厳重にしておく。

 簡単には突破されないようセキュリティには自動人形も活用する。

 壁を越えようとする輩が出てこないように壁にも細工した。


 目測を誤らせる。

 壁面の摩擦係数を低くする。

 接近すると忌避感を抱く。

 こんな感じだろうか。


 実際は見た目より何メートルか高くなっているのを光魔法で低く見えるようにしている。

 それでも充分に高いけどね。

 壁の内側は地面を底上げして外側と高低差がつくようにした。

 これに関してはセキュリティ対策よりは防衛対策かな。


 また、壁を滑りやすくするのは当然の処置だろう。

 手や足をかける場所はないので普通は上れないのだが。


 忌避感に関しては国民以外はという条件がつく。

 変に思われないよう堀端では効果が薄れるようにしている。

 身を乗り出して覗き込んだりしたら急に気分が悪くなったりするという寸法だ。


 ここまでしても魔力的なコストは低くなるようにしている。

 防御力を上げたり自動修復機能をつけたりもしてあるからね。

 他所では考えられないことだろう


 が、俺はやり過ぎだとは思わない。

 むしろ普通だ。

 余所者はそう簡単にテリトリーには入れないよ。

 これならガブローも安心するだろう。

 本当の意味で安心できるのは更地が街としての形を取り戻してからだろうけど。


 そんな訳で再利用する建物を倉から引っ張り出して並べ替えていった。

 前より狭くなったが、そもそも人口が大幅に減っている。

 むしろ適切な大きさになると言えるだろう。


 シミュレートの結果通りに並べ替えるのは楽な作業である。

 楽すぎてつまらないので色々と手を加えた。

 魔法的な効果は低めだけどね。

 そんなこんなでガブローたちが大口を開けて呆気にとられている間に完了。

 完全に言葉を失っている。


『まだ終わった訳じゃないんだがな』


 この程度で、そこまで驚かれると辛いものがある。

 辛いというか居心地が悪い。

 おそらく魔法的な仕掛けには気付いていないはずだし。

 そこまで把握したら顎でも外してしまうんじゃなかろうか。

 せいぜい腰を抜かす程度ではあってほしいと思う。

 そんなこと考えると気疲れしてしまうんだよ。


 早く慣れてほしいものである。

 思わず一息ついて作業を中断してしまった。

 消費魔力などは使った側から回復しているので碌に減っていないんだけどな。


「スゲーな、ハルさん」


 トモさんが話し掛けてきたので城壁の方へ降下していく。

 切りがいいし休憩だ。


「見ていて飽きないね」


「そうかい?」


「あっと言う間に街がつくり変えられて面白かったよ」


 トモさんは驚きつつも楽しんでいる感じだ。

 フェルトは、まだ慣れていない部分もあるのか頭を振っている。

 まあ、それでもガブローたちのように青い顔をしていないだけマシか。


「過去形にされてもなぁ。

 まだ冒険者に開放する区画の方は手付かずだよ」


「冗談きついなー。

 もしかして休憩する必要がないくらい余裕あるとか?」


「まあね、今ぐらいなら片手間かな」


「マジかー」


 笑いながらも天を仰ぎ見て呆れた様子を見せるトモさん。


「ガブローたちが卒倒しそうな感じだから中断した」


「へえ、慣れてないんだ。

 なんか魂が抜けかけたような顔になってるけど」


「ここまでの仕事はドワーフたちには見せたことないからなぁ。

 一番となると俺が作った輸送機を披露したくらいかな」


「ああ、あのゴキもどきね」


 どうしても、そっち系のネタに持って行きたいのか。

 そう見えないカラーリングにしたり着陸用の脚とか気を遣ったつもりなんだが。


「そういう下品なネタはよしなさいって」


「ハッハッハ」


 笑って誤魔化すトモさんであった。


『まったく……』


 まあ、でも肩の力は抜けたかな。

 軽く溜め息をつく。

 それと同時に懐に飛び込んでくる一団がいた。


「ハル様ー、面白いニャー」


 三毛なハイケットシーのミーニャさんを筆頭にした子供組である。

 それにしてもミーニャは人化しても語尾に「ニャ」がつくのか。


『ブレないやつめ』


 でも、これくらいでとやかく言うこともないか。

 変に矯正すると余計におかしくなりそうな気がするし。

 語尾が「ニャ」ってくらいのことで正体がバレたりはしないだろう。

 そんな細かなことを気にするより楽しそうにしている子供組を見ている方が和む。

 俺が全力でないのを理解しながらも変化した街の様子を喜んでくれているからな。


「ハル様の魔法、面白かったね。

 壁がドーンで大迫力だったー」


 満面の笑みを浮かべるロシアンブルーなルーシー。


「その前のお片付けも面白かったー。

 シュパパーって家が消えるのー。

 消えた家がポコポコ出てきたのも面白かったよぉ」


 シェルティのシェリーも楽しそうだ。

 パピヨンとチワワなハッピーとチーは何も喋らないが屈託なく笑う。

 天真爛漫とはまさにこのことではあるまいか。


 それを間近で見られるのだ。

 至福のひとときである。

 決してロリコンではない。


 ちなみに子供組は外では俺のことをハル様と呼ぶことにしたようである。

 ジェダイトシティは国内なんだが練習もかねているそうだ。

 出発前から、いつもの「陛下」ではなくなっていたので違和感は薄れている。


「そんじゃ続きをささっと終わらせますか」


 自分に気合いを入れ直すように言ってみたんだが、子供組がはしゃぎ始めた。


『そちらは見ない、そちらは見ない』


 呪文のように心の中で繰り返す。

 いつまでも和んでいたくなってしまうからな。

 言っておくが俺は引退して孫の面倒を見るのが日課の老人ではない。

 とにかく作業が手につかなくなるのはマズかろう。

 ここは集中だ。


「あ、ちょっと待ってくれるかな」


 気合いを入れ直して「いざ」という瞬間にトモさんから割り込みがかかった。

 思わずずっこけてしまう。


「な、何かな?」


「ここからだと壁の外側は死角になる場所が多いよね」


「ああ、そういうことか」


 それなら幻影魔法でとも思った。

 だが、せっかく生で見られるチャンスなのだ。

 特に危険がある訳でもないので作った壁の上へ転送した。


「おおっ、いい眺めだ。

 ありがとう、ハルさん」


「いいってことよ。

 これくらいはお安い御用さ」


 サムズアップしながら応じて宙に浮く。

 いよいよ新市街の作成である。


 堀の外側だけで生活と商売が完結するようにしていくようにする。

 とはいえども事前にある程度の予測を立てた状態で建物は用意してある。

 壁の内側と同じように後は置くだけなのだ。

 厳密に言えば地面と接合するんだけどね。

 そのくらいは地魔法をさっと使ってお終いである。

 さて、肝心の建物の方だ。


「まずは冒険者ギルド!」


 宣言して引っ張り出す。

 そして接合して完成。

 キャアキャアと子供組たちの喜ぶ声が聞こえる。

 それに混じって「嘘だろ、新築も一瞬かよ」というトモさんの呟きが耳に届いた。

 気になったので振り返って降下する。

 誤解は解いておかないとな。


「事前に作ったやつを用意してあったよ。

 さすがに新設計の建物を一瞬ではつくれないさ」


「あ、ああ、そうなんだ」


 納得してくれたところで作業再開である。


「次は宿屋だ」


 食堂兼用の宿屋を引っ張り出して仕上げていく。

 あっちこっちそっちという感じでグレードの違うのをいくつか用意した。

 そうしないと冒険者のランクに偏りができてしまう。

 下手をすると野宿する奴とか出かねない。


 でもってギルドと宿屋の建物の様式はゲールウエザー王国に倣った。

 ドワーフ風にするとヒューマンとかは著しく違和感を感じかねないからだ。

 日和ったとも言う。


 ゲールウエザー王国に合わせたのは、それしか利用したことないから。

 まさか日本式にするわけにもいかないしな。

 ダンジョン攻略のためのベースキャンプで落ち着けないのは嫌だろう。

 それだけならまだしも、攻略そのものに影響を及ぼしかねない。

 下手をすれば命に関わる恐れもある。


 そんな柔なことを言っていたら冒険者は務まらないという考えもあるだろう。

 しかしながら、そういうのは一握りのベテラン連中だけである。

 大多数は見た目がどうあれ意外にナイーブなものだ。

 故にもっとも利用する施設だけは冒険者に合わせることにした。


 他にも必要な施設はドワーフの流儀に合わせたけどな。

 特に武器屋や鍛冶屋などはドワーフたちの仕事の効率を考慮しないといけない。

 隅々まで案内してもらったことがあるからというのもある。

 俺としてはドワーフたちの方が馴染み深いのだ。


 おそらく苦情はほとんどないだろう。

 あっても、そこまで付き合っていられない。

 日和ったくせに偉そうなことを言うのもどうかとは思うがな。


 とにかく宣言しながら必要な施設を次々に出していく。

 そのたびに子供組が喜んでくれるので、こちらも気分良く作業できた。

 倉から出して接合するだけの簡単なお仕事だけどね。


「ほい、完成」


「「「「「やったー!」」」」」


 子供組のテンションが振り切っている。

 駆けずり回って喜んでいた。

 見ていて微笑ましいんだが、もう少し落ち着きを持ってもらわないとな。

 明日の冒険者登録が心配になってくる。

 まあ、聞き分けはいいから大丈夫だとは思うけど。


『どうかフラグではありませんように』


読んでくれてありがとう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

下記リンクをクリック(投票)していただけると嬉しいです。

(投票は1人1日1回まで有効)

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ