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398 緑色包囲網

遅くなりました。

すみません。

 緑色たちに対抗する機体を月影の人数分だけ出す。


「少ないわよ?」


 マイカが不満混じりで問うてきた。


「これは月影の分だからな」


 全員で出撃なんてできる訳はないのだ。

 機体は用意できる。

 1機仕上げればコピーは簡単だ。

 神級スキルの【万象の匠】は伊達じゃない。


 だが、まともな戦闘行動を取れるかは別問題。

 新規国民組だと機体を操ることができそうにないのだよ。

 俺が用意した機体がどういうものかというのを理解していないからな。

 飛行形態でコロニーの道路にずらっと並べられた機体を見て唖然としているし。


 プラム姉妹やレオーネなんかは訳が分からず困惑している。

 フェア3姉妹はマリアとクリスが姉の態度を見て理解不能ながらも見守ることにしたようだ。

 エリスとジェダイト組は「また妙なものを用意したな」と話し合っていた。


 新規組がこの様子じゃ搭乗させても意味はないだろう。

 それなら月影に任せた方がいい。

 彼女らなら連係も阿吽の呼吸で行えるしな。


「他は基本的に防御に回ってもらう」


「ちょっとぉ!」


 今度は明らかに抗議口調のマイカ。

 自分も戦いたいのだろう。

 うちの妻が好戦的で困っています。


 ローズでさえ前に出るのは我慢してくれているんですがね?

 流れ弾を弾いて被弾しないように奮闘中だ。

 鬼気迫る……感じはまったくしない。

 むしろ楽しそうですらある。

 その気分をマイカに分けてほしいところだ。


「防御は防御でもミズキとマイカには俺と一緒に前に出てもらうから」


 言いながらツバキにアイコンタクトで「行けるな」と確認を取る。

 真剣な表情の頷きが返ってきた。

 こっちはこっちで気合いが入りすぎだなぁ。

 しょうがないのか。

 他人の夢の中での戦闘ということで初めてのことだからな。


「生身で?」


 ふて腐れたマイカではなくミズキが聞いてきた。


「いや、別の機体で緑の奴らのビーム攻撃を弾いてもらうぞ」


「ぬぁにぃ!?」


 マイカが急に復活した。

 忙しい女だ。


「それってもしかして狙い撃つ人の?」


 ミズキも興奮気味で聞いてくる。


「それだと、あの時代の機体じゃなくなるだろ」


「変にこだわるわね」


 ジト目で見てくるマイカ嬢。

 だが、スルー。

 どういう機体か確認するのは月影が出撃してからだ。


「月影は乗り込んで先に出ろ」


 まずは場所を空けないとな。

 アレはデカいから。

 俺がシカトしたことに文句を言ってくるかと思ったが、マイカは黙っている。

 まあ、マイカも状況は理解しているよな。

 自分が引き延ばせばそれだけ被害が拡大するのだから。


「あのー、ハルトさーん」


 ダニエラが呼びかけてきた。


「これってー、どうやって制御するんでしょうか~」


 間延びした口振りで的確なことを聞いてくる。

 口調の割に行動は素早い。

 他の皆と同じようにコクピットから顔だけ外に出している状態だった。

 何処から乗り込むとか説明が不要なだけでも有り難い。

 動画を見せておいて良かった。


「操作は基本的に思考制御できるようにしてある。

 コクピットの操縦桿やボタンなんかは全部飾りだ」


 身も蓋もない。

 が、そうしないと今すぐ操縦なんてできる訳ないからな。


「使えるのはモニターだけだから。

 通信はスマホで頼む」


 間に合わせに用意したから側だけなのだ。

 ちゃんと攻撃力も防御力もあるから張り子の虎ってことはないがな。


「了解ですー」


 変形とか武装とかも動画で把握してくれているので、ここでも説明が省ける。

 本当に有り難い。


 月影の面々がコクピットハッチを閉じて次々に出撃していく。

 俺の作った量産型スマホで連絡を入れる。

 月影同士ですでにつながった状態だ。


「まずは回り込んで緑を包囲しろ」


 言いながら俺たちが搭乗する機体を出していく。

 俺以外の全員が息をのんでいた。

 デカいからな。

 しかも4機ある。

 これでも変形しているからコンパクトになっているんだけど。

 【多重思考】で念話を使う。


『転送魔法でコクピットに送る』


 どうやって乗り込むとか教えるのも面倒だからな。

 平時ならともかく戦闘中にチンタラやってられない。

 了承の返事を受けて転送魔法を発動させ各々を送り込んだ。

 俺はまだである。

 ガンフォールの方を見た。


「後は任せる!」


 スマホに音声が流れないようにしてあるのでレイナたちに聞かれることはない。


「わかった!」


 返事をしてくるかどうかのタイミングで俺もデカブツに乗り込む。


『えー、一気に殲滅じゃないの?』


 レイナが不満を言ってきた。

 言いながらも指示に従う行動を取っているけどな。


「まずは金ピカたちの援護からだ」


 言いながら、もう1人の俺が念話でデカブツ組に指示を出す。

 コールサインを決めておけば良かった。

 今更である。


『月影の外側からリフレクターを展開させつつ包囲するぞ』


 指示を出しながら機体を浮かせていく。

 皆も同じように浮き始めた。

 やはり説明が不要で助かる。


『俺たちの役割はビームランチャーのビームを弾くことだ』


『リフレクターって反射するだけなんじゃなかった?

 ビームを拡散させたりできたっけ?』


『そこは本体で受けろって言うんでしょ』


 ミズキの質問にマイカが答えている。

 正解だから口を挟まない。


『あ、なるほどね。

 フィールドで無効化させるんだ』


 マイカも納得したようだ。

 さて、同時に別の俺がレイナからの返事を待っている。

 俯瞰的に自分を見てみると忙しないよな、今の状況って。

 個々の俺は別々に行動しているから特にそうは思わないんだが。


『なんでよー』


 不満タラタラのレイナ。

 そんなに殲滅戦がしたいのかね。

 やはり、うちの妻が好戦的で困っています。


「少しは考えろよ」


 夢の主に獲物を奪ったと思われると厄介だってことくらい気付いてくれ。

 味方のはずの相手に撃たれたくないんだよ。


「こっちが味方だとアピールするのが先だ」


 俺が説明を続けようとすると会話に割り込んできた者がいた。


『レイナ、状況を忘れるな』


 リーシャだ。


『三つ巴になるのは避けろ』


 なかなか的確なことを言ってくれる。


『あー、了解』


 さすがは長い付き合いの間柄。

 俺が長々と説明するより簡潔な言葉で納得させた。

 そんな会話をしている間に月影の面々は包囲網を完成させていた。

 人型に変形してバルカンで牽制を始める。


 赤い人の小隊は最初こそ戸惑うような様子を見せていたものの味方だと判断してくれたらしい。

 緑の奴らを葬った後はどうなるか分からんがね。

 単に敵の敵は味方と考えているだけかもしれないし。


 それでも緑の奴らを追い込む手際はなかなかのものだ。

 月影が追い込む方向を予測して実体弾を撃ち込むというような芸当もやってくれる。

 数の上で明確に逆転したからな。


 月狼の友の面子がマンツーマンでありながら連係しつつ緑を追い込んでいく。

 ノエルとルーリアは遊撃ポジションでフォローに回っていた。

 月狼の友だけなら若干の隙があるのでね。


 これは仕方のないところだ。

 バルカンだけの攻撃で追い回すのでどうしても隙ができる。

 向こうだって反撃してくるし。

 周辺環境への被害を無視していいならバルカンだけの縛りでもどうにかなったがな。

 無茶はできない。

 そこは遊撃との連係で、うまく穴を塞いでいた。

 緑の連中はフェイントを織り交ぜつつ逃げようとしているが、そうは問屋が卸さない。


『逃がす訳ないでしょうがぁ─────っ!』


 己が担当している緑を追い込みながらレイナが吠えている。

 ハッキリ言って煩い。

 月狼の友の面子は誰も文句を言わないようだ。

 慣れの問題なんだろう。

 仕事をちゃんとするなら文句はないってところか。


『レイナ、うるさい』


 ノエルがボソッと言ってきた。


『う、ごめん』


 急に消沈するレイナ。

 ノエルには弱いからなぁ。


 俺が言ったら素直に聞くかどうか怪しいところだけど。

 ツンデレさんだからな。

 後でナデナデしながら褒めておこう。

 普通に叱るより効果が高いからな。


 などと考えている間にデカブツ組の包囲も完了。

 これで緑の連中は更に追い込まれる訳だ。

 本能的にそれを察知したのかビームを乱射してくる。


「無駄だよ」


 リフレクターで反射させて空飛ぶ壁と化したサイコなデカブツで受け止める。

 まあ、本体に届く前にフィールドでビームが拡散されてしまうんだけど。

 とにかく乱射されたビームを拾う。


 気分は鉄壁のゴールキーパーだろうか?

 ちと違うか。

 本体でビームを受ける前にリフレクターで反射してるからな。


『そうそう、全部レシーブするもんね』


 ミズキの表現の方が的確な気がする。

 確かにリフレクターでビームの軌道を曲げるのはバレーボールを彷彿とさせるな。

 試合中というよりは練習中に何個も連続でボールを投げつけられるようなものか。

 すべて自分に飛んで来るという訳ではないが。

 あらぬ方向へ行こうとするボールも拾わないといけない。


『逃がさないっ』


 マイカが割とノリノリでそういう流れ弾的なビームを受けていた。


『でも結構いそがしいよ』


 ミズキはミズキでそんなことを言いながらもマイペースだ。

 雑談しようとする余裕さえある。

 そうなると気になるのはツバキなんだが。

 さっきから無口だったからな。

 大丈夫か?


読んでくれてありがとう。

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