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399 誤算と剣豪

修正しました。

シヅカ → ツバキ(8個所)


 しまったな。

 思わず、そう漏らしそうになった。

 人選をミスったかもな。

 ミズキとマイカは大丈夫なんだけど。


 問題があるのはツバキだ。

 ビームの乱射をさばけてはいるんだが余裕がない。

 現在レベル152のツバキで荷が勝つとは予想外だった。


 いや、単純にリフレクターで反射させるだけなら問題なくこなせるのだ。

 コロニーに被害を出させないために自機へ向けて反射させるのがね。

 俺が考えている以上に難易度が跳ね上がるようだ。


 リフレクターの角度計算は正確だったのだが。

 角度を調整するタイミングに問題があった。

 ミズキやマイカたちよりも1テンポ遅い。

 要は見切りに時間がかかっているのだ。

 故に単発なら問題なく処理できていた。


 もしくは発射間隔が今よりも間が空くなら余裕を持ってさばけただろう。

 次から次へと乱射されることで余裕をなくしていた。

 照準を適当にすることで発射間隔を短くできるからな。


 敵の照準が雑であることも、その要因のひとつであると言える。

 連射される攻撃が正確なら読みで補うことができたのだが。

 狙いが適当であるが故にそれができなくされていた。

 全弾を処理する必要がある場合、数を撃てば当たる的な開き直りをされると厄介なのだ。


 2発目、3発目と処理する間に余裕を失っていく。

 敵の緑サイドもそうそう攻撃ばかりしていられないのでインターバルはあるが。

 ちょっとした切っ掛けがあれば破綻しかねない状況だった。


 こうまで乱射してくるとは誤算だった。

 現状はさばけれはいるけれど。

 それでも辛うじてというレベルだ。

 何度も言うようだが余裕は感じられない。

 先程からツバキが無言なのも、そのせいだろう。


 誤算だった。

 てっきり敵は出力を上げてくるものだとばかり思っていたのだが。

 それもあって俺は紫がベースカラーのサイコな機体を用意したのだ。

 こんなことなら変なこだわりを見せずに乱れ撃つ人の機体を用意すれば良かった。

 だが、今更である。


「ツバキ、少し後退しろ。

 無理をして前に出る必要はない」


 少し下がったくらいで攻撃が見切りやすくなるなんてことはない。

 だが、この時点で俺は別の方法で緑色たちをさばく方法を用意していた。


『しかし』


 食い下がろうとするツバキ。

 フォーメーションが崩れることを懸念したのだろう。


「下がれ、命令だ」


 命令と言った割には淡々とした口調になった。

 怒鳴っても意味はないからな。


「目先の判断だけで指示を出してる訳じゃない」


 ツバキなら、こう言うだけで充分だ。


『心得た』


 ツバキの機体が後退していく。

 それに合わせて俺たちもフォーメーションを変えていった。

 それまでの正方形から三角形で包囲する形へと。

 敵も馬鹿ではないから薄くなった包囲網を突いてこようとするのだが……


「ツバキ、オールレンジ攻撃」


『無茶を言うな、主よ』


 慌てた様子のツバキの声が聞こえてくる。


「当てなくていい。

 奴らの動きを制限するように牽制しろ。

 リフレクターで戻せば周辺への被害も気にする必要はないだろ」


 1人でボール遊びをする時と同じような発想だ。

 壁に向けてボールを投げれば自分の所に還ってくる。

 それが直線的な動きをするかどうかだけの差だ。

 これなら自分のタイミングでビームを処理可能だ。

 相手の妨害をすることで攻撃をさせないようにもできる。

 俺たち3機で攻撃をさばく上でも、そのまま負担が増加したりはしないって訳だ。


『っ!?』


 予想外の発想だったらしくツバキは言葉に詰まっていた。

 だが、それでも指示通りに動く。

 後退すると同時に牽制攻撃を開始する。

 俺たちへの負担は増やすまいと必死なのがうかがえる苛烈さである。


 おかげで緑色たちの攻撃の手が完全に止まってしまった。

 いや、それどころかカゴの中の鳥状態である。

 まともに移動できなくなってしまったがために実弾攻撃をまともに食らうようになった。


 最初は月影の面々が放つバルカン。

 そして金ピカたちの小隊が撃つマシンガン。

 ついには弾速の遅いバズーカの直撃を許してしまう程であった。

 それも単発ではない。

 数発は余裕で当たっているため白煙が拡がる。

 このため直撃を受けた緑の一体を白煙で包み込んだ。


『やったか?』


 マイカがネタくさいことを言っている。


『だめだよ、マイカちゃん。

 そんなこと言ったらフラグが立つじゃない』


 ミズキが妙なたしなめ方をしている。

 反撃がないからって調子に乗っていると痛い目にあうぞ。

 そして白煙が晴れた。


『なにぃ!?』


 白々しい驚き方すんなよ、マイカ。

 分かってたくせに。


『無傷ですって!?』


 ミズキまで便乗しているじゃないか。

 余裕だな、おい。

 完全に遊んでいるだろ。

 なにか気付きませんかねえ。


「弾幕薄いぞ、何やってんの」


 薄いというか白煙が晴れるまでの間はということで牽制の1発すら撃たれていない。

 それを見逃す緑たちではあるまい。

 一斉に散開しようとする。


 俺も人のことは言えないが、そんなことを言っている暇はない。

 リフレクター込みのオールレンジ攻撃で即席の檻を作った。

 そう簡単に逃がしてたまるかよ。


 光属性を付与しているから檻を無視して逃げようとすれば輪切りになってしまうぞ。

 それに加えて中身が浄化されてしまうだろうな。

 つい今し方の実弾攻撃とは違うのだよ、実弾攻撃とはっ!


「今のうちだ、立て直せ」


 月影が緑を逃がさないポジションへと移動する。


『ハル兄、攻撃していい?』


 ノエルが聞いてきた。


「少し待て」


『ん』


 すぐには答えない。

 金ピカたちは未だに硬直から抜け出せないでいる。

 バズーカの直撃で必殺を確信していたんだろうなぁ。

 このままだと、すぐの復帰は難しいか。


「とりあえず1機だけな」


『わかった』


 ノエルの返事を聞いて光の檻を解除した。

 一斉に飛び出そうとする緑色たち。


『舐められたものね』


 リーシャがバルカンで機先を制した。

 いや、他の月影の面々も同じである。


『逃がすわけあらへんがな』


 呆れたようなアニスの声がスマホ越しに聞こえてくる。


『そうですよー。

 どこに行こうっていうんです~?』


 ちょっと黒さを感じさせる声音のダニエラ。

 いつもと違う雰囲気に悪寒が走ったのは内緒だ。


『『何処にも行かせませーん』』


 楽しげなメリーとリリー。

 ちょっと何を考えているのか分からない。


『ここは通行止めだ』


 ある意味、予想通りのルーリアに安堵した。


『逃げられると思われたのが腹立つわね』


 苛立ちを隠そうともしないレイナ。

 こちらも安心安定の反応だと言えるだろう。


『ノエル・ウィンストン、参る』


 腰部アーマーに格納されていたビームサーベルを両手にしたノエルの機体。

 二刀流ですか。

 構えなんかは様になっているけど。

 時代劇の動画なんて見てたのか。

 渋い趣味してんな。


 いや、そうじゃない。

 いつもなら黙々と仕事を片付けようとするところだ。

 おかしなテンションになっている皆に影響を受けたのか。

 少し考えにくい。


「……………」


 フラストレーションでも溜まってたのかな?

 それとも疲れてる?

 ないとは言えないな。

 ダンジョンの騒動で気疲れしていたとも考えられるし。

 帰ったら皆でゆっくりしよう。


「……………」


 俺があれこれ考えている間にノエルの機体が前に出た。

 真正面から突っ込んでいく。

 緑色にビームランチャーを撃ってくれと言っているようなものだ。

 撃たれても距離を詰めていく状態ではノエルがどうにかするしかない。


 この状況下でリフレクターは使えないからな。

 ノエルの突進を阻害してしまうが故に。

 真っ向勝負の1対1。


 だからこそ向こうも素直に撃ってくる。

 そこにフェイントや回避行動は伴わない。

 必殺を信じて疑わないからだろう。

 引きつけて引きつけて緑色がビームを放つ。


 だが、それはアッサリと弾かれた。

 左手をグルグル回転させることでサーベルをビームシールドのようにしたのだ。

 作品的にはフライングなんだけど。


 なんにせよ、至近弾を無効にするのだから効果は絶大である。

 あれならビームは打ち消されて周辺への被害もない。

 意表を突く効果もあるか。

 緑色は1発撃ったきりで固まっていたからな。


 ノエルの機体は一気に距離を詰めて撃ってきた緑色を滅多切りにした。

 ビームランチャーは真っ先に潰している。

 相手の本体はゴーストだからな。

 何処に憑依しているか分からないし、何処に逃げるかも分からない。

 滅多切りにして逃げ場所も奪うという徹底ぶりは決して大袈裟なものではない。


 これで敵の1機は確実に葬り去った。

 爆発なんてしないのが「なんだかなぁ」とは思ったが。

 相手がゴーストじゃしょうがない。


 仲間が消え去るという事態に緑の集団がパニックに陥った。

 それを見逃すノエルではない。

 残りの機体に接近しては切り付けていく。


 だが、1体だけという俺の指示も忘れた訳ではない。

 ノエルが切り付けたのは機体ではなくビームランチャーである。

 メインの攻撃手段を失えば俺たちの出番も必要なくなるだろうか。


 場合によっては金ピカたちだけで何とかできそうな気もしなくはない。

 光属性の攻撃ができればだけどね。


読んでくれてありがとう。

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