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1470 ハリーも考えた

「ハリーは目立つのはダメだもんな」


 ニャスケの言葉に弟たちが頷いている。

 そこはハリーが頷くところだと思うのだが。


「多少は構わないが……」


 ハリーの方が反論してるし。


 まあ、言いたいことは分かる。

 ハリーは別にコミュ障って訳じゃないんだ。


 その気になれば普通に会話できる。

 普段は寡黙だけどな。


 それもこれも目立つのが好きではないからだ。

 けれども引きこもりになりたい訳でもない。

 集まりがあれば自発的に参加するしな。


 ただし、集まりの中心に来ることはない。

 隅っこや誰かのそばで寄り添うようにしているのが落ち着くんだと。


「この状況で自分の案が注目を浴びるのは避けたい」


 なんともハリーらしい意見である。


「ほほう」


 キュピーンとニャンゾウが瞳を光らせた。

 魔法を使ってな。

 眩しくならないよう、あれこれ工夫している。


『芸が細かすぎるだろっ』


 俺は内心でツッコミを入れた。


「採用される自信があると?」


 そしてニャンゾウはフッと笑みを浮かべながらハリーに問いかける。


「そんなものはない」


 ハリーは頭を振った。


「結果がいずれであれ全員から耳目を集めるのは御免被る」


「ですよねー」


 ニャタロウが軽い調子で同意した。


「この国の面子も多いもんなぁ」


 ニャンゾウが追随する。


「身内だけなら、そこまで言わんよな」


 嘆息しながらニャスケも続く。


「いいだろう、話を聞こう。

 それで採用されそうな案なら俺たちが報告に行くってことでいいんだな」


「ああ、すまないが頼む」


「「「いいってことよ」」」


 3兄弟がそろってニッと笑みを浮かべた。


「キースじゃ融通が利かないからな」


 ニャンゾウの意見が手厳しい。

 もちろん聞かれないように風魔法と幻影魔法でブロックしての発言だ。

 【天眼・遠見】スキルを使う俺には通用しないけど。


 まあ、普通に見てもブロックは通用しないか。

 魔力抵抗値の関係で普通に見聞きできてしまうと思う。


「最近はそうでもないんじゃないか」


 ニャスケが離れた場にいるキースをフォローしている。


「確実性を求めるなら俺たちでしょ」


 ドヤ顔でニャタロウが言った。


「「「で、どんな案なんだ?」」」


 興味津々で身を乗り出してくる3兄弟。

 外出先ということもあって控えめにはしているけどね。

 ハリーの方は至って冷静だ。


「威厳や言動が誤魔化せないなら近いものにすればいい」


 そう切り出した。


「「「ほうほう、それで?」」」


「王族だと騒ぎになるが、名も知られていないような貴族であればどうだろう」


 ハリーは貧しくとも高潔な人物に扮すれば問題は解決できると読んだようだ。


「そうきたか」


 長男のニャスケが唸った。


「確かに変装さえちゃんとしてれば騒がれることはないかな」


「だけど周りに敬遠されるんじゃないか?」


 次男のニャンゾウがツッコミを入れてくる。


「だから貧乏貴族の三男坊を提案したい」


「どういうこと?」


 凝った設定に三男のニャタロウが首を傾げている。


「服装を地味にできる」


「「「おおっ」」」


「そうすれば、目立つ度合いも抑えられる」


「なるほどな」


「気さくな感じでいけば敬遠はされないか」


「まあ、そうなるかな。

 変に侮られてバカなのが絡んでくるかもしれないけど」


 3兄弟もその点についてはとりあえず納得した。

 とはいえ、ニャタロウが再び首を傾げたけどな。


「貧乏だと屋台で買い食いもできない気がするんだけど?」


 そこまで貧乏な設定にしなくてもいいだろうに。


「貧乏だからこそ買えるとも言えるな」


「「「どういうことぉ?」」」


 3兄弟が見事にハモった。


「屋台飯は安い」


 うんうんと頷く黒猫3兄弟。


「だからこそ低価格で買って食べられる屋台の行列に並んでも不思議じゃない」


「「「うーん」」」


 今度は唸ってハモる3兄弟だ。


「それはどうだろうな?」


 真っ先に疑問を口にしたのはニャスケだ。


「服に不自由するほどの貧乏なんだろう?」


 ニャンゾウが具体的にツッコミを入れてくる。


「これはお祭りだ。

 そういう時くらいはどうにかしようとするとは思わないか?」


 普段とは違うイベントだということで押し切ろうとするハリー。


『その根拠はどうよ?』


 俺は心の中でツッコミを入れた。

 何となくいけそうな気がしなくもないが、設定的に無理があると思うのは俺だけか?


 ハリーの想定通りの人物像でハイラントに芝居をさせた場合を想像してみた。


 誰も知らないような田舎貴族でないとエセ貴族であるのが即バレしてしまう。

 そういうド田舎から来るのであれば路銀は決して安くないだろう。

 借金せずに調達できるとは考えにくい。


 なにせ貧乏な上に立場の微妙な三男だ。

 家からの資金援助など考えられないのだし。


 あるいは自力で時間をかけてコツコツと貯めてきたのかもしれないが。

 だとすればホイホイと気軽に買い食いなどはできまい。


 むしろ逆に、武士は食わねど高楊枝的な葛藤を演じる必要がある。

 しかも大半のものは食べられない訳だ。

 空腹に負けて一番安いものを注文するのが精々だと思う。


 それでは祭りを楽しめないだろう。

 設定上の人物が実在するなら、それでも楽しんでしまうということは考えられるがね。


 少なくともハイラントには不服が残ってしまうはずだ。

 そういうのは可能な限り避けたい。

 後でごねられても困るしな。


 ただ、3兄弟はハリーの言葉で押し切られていたけど。


「どうだろう?」


「そうかも?」


「かもしれない」


 こんな具合に消極的な感じではあったけどな。

 だからであろうか。

 全面的に賛同する形にはならなかった。


「そもそも貴族が屋台に並ぶかな?」


 三男のニャタロウが新たな疑問をハリーにぶつけた。


「なーんか、イメージにそぐわないというか。

 家令とか執事みたいな人が教育してそうだろ?」


 下々の食べるものをとか言う訳か。

 そういうのは貧乏貴族家ではなあなあになってそうだけど。

 まあ、ニャタロウの言いたいことは分からなくもない。


 それにネガティブな部分は可能な限り潰しておいた方が無難だ。

 ハリーはというと、ニャタロウの言葉を受けて軽く頷いていた。


「確かにそういう部分はあるだろう。

 世間体などでお金があっても買い食いは難しい」


 だが、とハリーは言葉を続ける。


「それは裕福な貴族に限ったことだとは思わないか」


 俺と同じようなことを考えていたようだ。


「うっ」


 ハリーの反撃に声を詰まらせるニャタロウ。


「いや、でも、なあ……」


 具体的に反論はできないようだ。

 まあ、ハリーにしても3兄弟をスパッと納得はさせられないのだが。

 そんな訳で不採用とはいかないまでも減点されることとなった。


 続いてニャンゾウがツッコミを入れた。


「どうして三男坊なんだ?

 オッサンだから無理があると思うんだが」


 ニャンゾウが言うことも、もっともである。

 普通に考えれば年を食った三男って微妙なところだ。


 某暴れん坊な将軍様じゃあるまいし。

 事件が発生したら現場に乗り込んで「余の顔を忘れたか」とか悪党に言ったりはしない。


「自由に動けるだろう。

 貴族の長男や次男だと護衛や付き添いが多くて大事になる」


 ハリーの言うことも一理ある。

 西方における常識だ。

 貴族の跡継ぎとその予備たる者たちに真の自由などありはしない。


 その点、三男ならいずれは家を出なければならない。

 嫡男が後を継いだにもかかわらず、家に居残れば家督争いの元になりかねないからな。


 だから3兄弟も首を捻りつつ納得はした。

 首を捻ったのは、ハイラントが年を食いすぎている点につきる。


 まあ、嫡男が家名を継ぐには至っていないという設定ならセーフということになった。


『そうかなぁ』


 貧乏貴族家の出身というのと、どっこいな気がするんだが。

 そうはいうものの覗き見している立場じゃ偉そうなことは言えない。

 よってスルーした。


 この案が採用されると決まった訳じゃないしな。


読んでくれてありがとう。

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