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対比「二つの世界」

4月12日(土)


午前9時


【アラタ】


朝。


朝食の香りがキッチンいっぱいに広がる。


焼き鮭。


ご飯。


漬物。


……抹茶。


土曜日だけの、習慣。


[おはよう、アラタ。]


[おはよう、お母さん。]


[…おはよう。]


【ハル】


朝ごはんの匂い。


……なんだか、落ち着く。


でも、昨日のことが頭から離れない。




午前10時


【アラタ】


おはようございます。


ミカと散歩中。


いつも自分のペースで。


……安定している。


「ミカ、落ち着いて。あの犬は君を傷つけたりしない。」


「ミカ、もうすぐ公園に着くよ。」


嬉しそうだ。


「ちゃんと合わせてくれるな。」


「ボール、持ってきた。」


「……あとで、少しだけな。」



【ハル】


「みんな、友達に会ってくるね。」


「気をつけてね、ハル。お昼ご飯までには帰ってきてね。」


「うん、お母さん。」


今日は、公園でみんなに会うのにちょうどいい日だと思う。


みんな来てくれるといいな。


彼らはベンチに座って、おしゃべりをしている。


……楽しそう。


「ねえ、あの人たちって同じ学校?」


「ううん、藤間高校の子たちだよ」と沙耶が言った。


なぜか、私は彼らをじっと見つめていた。


「あの人……石上新に似てる気がする」


「ハル、石上って誰?」と雪郎が聞いた。


……なぜだろう。


「石上ってさっき言ったよね」


「そう、真希って子」と冴子が言った。


「水泳とフェンシングが得意らしいよ」


……その人を見た瞬間、なぜか胸が少しだけ引っかかった。


……似てる。


誰に?


……石上新。


【アラタ】


「ミカ、ボールを見つけて持ってきて。」


「いい子だ。」


……ちゃんとできるな。


「……あの女の子、花田に少し似ている。」


……なぜだ。


……会ったばかりのはずだ。


……おしゃれ。



「お腹をくすぐられるの好き?」


「好きでしょ?」


「ミカ…キスしそうになったね。」



【ハル】


「石神のこと、気になってるの?」


「……わからない」


「沙耶と春はただ見に来ただけなのか、それとも石上さんの話をしに来たのか…?」


お昼休みだ。もうすぐ帰る時間。


……親友たち。


「じゃあね、みんな。」


「またね。」



午後12時15分


【アラタ】


疑問を整理するために来た。


……だが、干渉がある。


……除去できない。


―――


【ハル】


だって、あの人、石上さんに似てるんだもん。


……別に、興味ないし。


冷たいし、ちょっと変な話し方するし。


……なんか、この違和感、消えない。



【アラタ】


ドアを開ける。


……手料理の匂いがする。


家の匂いだ。


「待っていたのか。」


「ああ。」


「兄さん、なんか上の空だね。」


「とりあえず、ゆっくり食べて。」


「あとで話そう。」


「わかった。」


「このうどん、食感いいね!」


うどんをすすった。


「お母さん、これ美味しい!」とサキが言った。


「うまいな。」と父さんが言った。


「少し、気分転換でもどうだ。」


「アクアパーク品川に行かないか。」



「すぐ戻るよ、お母さん。」サキ


「すぐ帰るからね。」


「30分くらいで戻るね。」サキ


「わかったよ。気をつけてね。」



咲くんはいつも


僕の話を聞いてくれる。


一度も僕の話を遮ったことがない。


彼女は、どうすれば僕が話しやすいかを知っている。


「あのイルカ、すごく可愛いね。ちょっと君に似てるかも。」


「何言ってるの、姉さん。そんなわけないでしょ。」


「みんなイルカって高貴な生き物だと思ってるけど、それってただの思い込みだよ。」


「それが僕と何の関係があるの、サキ?」


「みんな、あなたの行動を上品だとか優しいとか、そうやって勘違いしてるの。」


「サキ、どういうことか全然わからない。」


「みんなが、兄さんのこと誤解してるってこと。」


「……どうやって?」


「気づかないうちに、利用されるかもしれないってこと。」


「それ、兄さんにとってよくないよ。」


「……兄さん、なんかいつもと違うよね。」


「……誰かにペース、乱されてるでしょ。」


その言葉が、なぜか引っかかった。


――


【ハル】


マキが石上さんに似てる?


……もう、そうは思わない。


ただのスポーツのせいでしょ。


……それだけなら、いいけど。


「ハル、さっきからずっと考え込んでるわね。」―母


「そんな顔、初めて見たわよ。」


「ねえ、お姉ちゃん。好きな人でもできた?」―弟


「ソウタ、やめてよ。」


「その顔見ればバレバレだよ。」と弟が笑った。


「ソウタ、違うってば。」とハルは顔をそらした。


「せめて昼食の間は喧嘩をやめなさい」と父は言った。


静寂が訪れた。


「ハル、もしよかったら、今夜は友達を呼んでもいいわよ」と母は優しく言った。


「きっとあの男の子のことですよね、お姉ちゃん」と、ソウタは笑顔で言った。


「ソウタ、妹をからかうのはやめなさい」と、父親はきっぱりと言った



土曜日の午後9時


コンコン、とドアをノックする音。


「お母さん、私が出るね。きっと冴子とゆり子。」


ハルは少し不安そうに、ドアへ向かった。


「こんばんは、ハル。」とゆり子が笑顔で言った。


「こんばんは。」と冴子も軽く手を振った。


――


【アラタ】


水族館はいい選択だった。


さて、シャワーを浴びなければならない。


家族と夕食だ。


「アラタ、まずは一緒に夕食を食べましょう。それからお風呂に入りますね」

お母さんは穏やかな声でそう言った。


「うん。そうする」


「麦茶とお寿司、用意してあるわ」


「ありがとう」


「無理なくいいからね」


「新太、今日はちょっと上の空だったな」


父さんは穏やかな声で言った。


「里美が言っていただろう?あまり考えすぎるな」


少しだけ口調を強める。


「分かってるよ、父さん。新入生だし、つい考えてしまうんだ」


「自分の目標に集中すればいい。他のことは、あまり気にしなくていい」


父さんの声は、また落ち着いていた。



シャワーを浴びる。


そして、ベッドに入る。


……疲れ果てていた。



【ハル】


「みんな、夕食の時間だよー!」


「ツナと卵のサンドイッチ、気に入ってくれるといいな!」


冴子は嬉しそうに笑った。


「せっかくだし、できたての春巻きも用意したよ!」


百合子はいたずらっぽく笑う。


「ハルくん、なんか全然違うじゃん」


ユリコはいたずらっぽく言った。


「何言ってるんだよ、ユリコ。関係ないって。マキと石上を比べたのは、水泳のことだし」


「本当にそう思ってるの?」


サエコはもう一度聞いた。


「なんか、あの人……気になるんだけど、別に好きとかじゃないの。ただ、ちょっと冷たい感じがして」


「ハル、ねえ、何が気になるの?聞いてもいい?」


サエコは心配そうに聞いた。


「うーん……わからない。少し傲慢に見えるのに、それを全然出さないっていうか……話し方も淡々としてて、うまく言えないんだけど」


ハルは言葉を探すように視線を落とした。


「……普通じゃない、っていうか」


「普通じゃない?」


サエコは少し首をかしげた。


「うん。でも、嫌じゃないの」


自分で言って、少し驚いたように目を瞬いた。


「むしろ……」


そこまで言いかけて、ハルは言葉を止めた。


胸の奥に、説明できない違和感が残る。


「……なんか、気になるだけ」


「ハルがそんなに気になるなら、それって……彼に何かを感じてるってことじゃない?」


ユリコの言葉が、胸の奥に突き刺さった。


「ユリコ……石上さんの何に、私が興味を持つっていうの?」


「じゃあ、どうしてそんなに気にしてるの?」


頭では違うとわかっている。


でも、


胸の奥に残る違和感だけが、


消えなかった。


午後十一時。


私たちはそれぞれ眠りについた。


――はずだった。


ユリコとサエコの言葉が、頭から離れない。


二人が静かに寝息を立てる中、


私だけが、目を閉じたまま考え続けていた。



日曜日 午前9時。


【アラタ】


目が覚めた瞬間、一つの疑問が浮かんだ。


――なぜ、夢に花田ハルが出てくるのですか?


何事もなかったかのように、微笑んでいました。


ベンチに座り、


ただ、そこにある。


……理解できない。


――


【ハル】


「ねえ、どうしてそんなに困った顔してるの?」


冴子が興味津々にのぞき込む。


「どうしたの?何か気になることでもあるの?」


ユリコが少し心配そうに聞いた。


「……夢を見たの」


ハルは少し間を置いて、続けた。


「石上さんが、人気のある男子たちの中にいて……」


「しっかりした足取りで、こっちに歩いてきたの」



その日――


【石上新】


ハルの笑顔が、頭から離れなかった。


【花田ハル】


どうして石上さんが、あんなにも迷いのない足取りで


自分に向かってきたのか、理解できなかった。


二人とも、



起きたことを否定することはできなかった。




















































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