表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
27/31

私たちの家族について。ハルとアラタの絆

土曜日 午前11時


【ハル】


あなたが夢に出てくる。


(……)


抱きしめるのは。


アラタのぬいぐるみ。


「おはよう、ハル」――母


「おはよう、みんな」


「姉ちゃん」


「その恋してる顔は何?」――兄


「えっ?」


顔が熱くなる。


「娘よ」


「その男の子のことを教えてくれないか?」――父


(……)


まだ。


恥ずかしい。


(……)


胸がドキドキする。


「まあ」


「悪い意味じゃない」


「でも、最近のお前は良い方向に変わったな」――父


「本当に?」――ハル


「本当だよ」


「前よりずっと自然体だ」――兄


(……)


そうなのかな。


(……)


でも。


一つだけ分かることがある。


「名前は石神新」


「彼といると」


「私は私でいられるの」


「ハル、彼をランチに誘ってみたら?」――母


(……)


ランチに誘う。


(……)


まだ早すぎるよ。


「早すぎない?」――ハル


「全然」


「いい子みたいだし」――母


「それに、お父さんも会ってみたいんだろ?」――兄


「もちろんだ」――父


(……)


どうしよう。


(……)


緊張する。


「わかった」


「メッセージを送ってみる」


「お姉ちゃん」――兄


「もっと彼に興味を示しなよ」


「どういう意味?」――ハル


(……)


よく分からない。


「もっと興味を示すって?」


「電話だよ、電話」――兄


「えっ?」


「付き合ってるんだろ?」――兄


「メッセージばかりじゃなくてさ」


「声を聞きたいと思わないの?」――兄


(……)


声。


(……)


聞きたい。


すごく。


顔が熱くなる。


「ほらな」――兄


「顔真っ赤だぞ」


「うるさい!」――ハル



【石神家】


【アラタ】


電話が鳴る。


(……)


ハルからだ。


「もしもし」――アラタ


「やあ、アラタ」


「よく眠れた?」――ハル


(……)


その声を聞くだけで。


少し嬉しくなる。


「うん」


「ハルは?」


「私もよ」――ハル


(……)


少し間が空く。


「実はね」


「両親があなたに会いたがってるの」


「お昼に招待したいんだって」――ハル


(……)


えっ。


「行ける?」――ハル


「もちろん」


「でも、ちょっと早すぎないかな?」――アラタ


「私もそう言ったんだけど」


「どうしてもって」――ハル


(……)


なんだか緊張してきた。


「わかった」


「じゃあ、今から向かうよ」――アラタ


「本当に?」


「うん」


「待ってて」――アラタ


「うん、待ってる」――ハル


電話が切れる。


(……)


ハルのご両親か。


(……)


これは。


大会よりも緊張するかもしれない。


【石神家】


【アラタ】


「アラタって誰?」――母


「ハルだよ」


「家でランチに誘ってくれたんだ」


(……)


静寂。


「お兄ちゃん」


「私たちに何か隠してるわね」――サキ


(……)


しまった。


(……)


まだ話していなかった。


「実は」


「数日前から花田ハルと付き合ってるんだ」


(……)


言った。


(……)


ついに言った。


「えっ!?」――母


「やっぱりそうだったのね」――サキ


「なるほどな」――父


(……)


胸が締め付けられる。


今日は。


彼女の家族に会う日だ。


「アラタ」


「落ち着け」――父


「ありのままの君でいい」


「そうよ」


「おめでとう、息子」――母


「最近のあなた、とても幸せそうだったもの」


(……)


セイジが戻ってきた。


(……)


チェス部のみんながいる。


(……)


ハルがいる。


そして。


彼女の友達もいる。


そのすべてが。


今の僕を支えてくれている。


「お兄ちゃん」


「本当に良かったね」――サキ


「ありがとう」


「セイジとはどうなの?」――アラタ


「うまくいってるわ」


「ずっと抱えていた不安も消えたもの」――サキ


(……)


よかった。


本当に。


「じゃあ、行ってくる」


「頑張ってね、お兄ちゃん」――サキ


「落ち着いてね」――母


「楽しんでこい」――父


「うん」


アラタは家を出た。



【ハル】


チャイムが鳴る。


(……)


緊張する。


(……)


大丈夫かな。


ドアを開ける。


「おはよう、ハル」――アラタ


「おはよう、アラタ」


(……)


来てくれた。


少し安心する。


「さあ、こっちへ」


「家族を紹介するから」――ハル


「おはようございます、花田家の皆さん」――アラタ


(……)


少し緊張している。


いや。


かなり緊張している。


「おはよう、石神君」


「そんなに緊張しなくていいのよ」――母


「顔に書いてあるわよ」――母


(……)


ばれてる。


「アラタ、好きなところに座って」――ハル


「おはようございます」


「僕はハルの兄です」――兄


(……)


来る。


(……)


絶対に来る。


(……)


あの手の冗談が。


「よろしくお願いします」――アラタ


「好きなところに座れって?」


「彼氏なんだから、ハルの隣に座ればいいだろ」――兄


「お兄ちゃん!」――ハル


顔が真っ赤になる。


「何か間違ったこと言ったか?」――兄


「間違ってないけど!」――ハル


「ははは」――父


「若いっていいな」


(……)


助けて。


「石神君」


「娘をよろしく頼むよ」――父


「は、はい」――アラタ


(……)


大会より緊張する。


本当に。




【アラタ】


「美味しい」


(……)


このおにぎり。


本当に美味しい。


「花田さん」


「このおにぎり、すごく美味しいです」――アラタ


「あら、ありがとう」


「それ、ハルが作ったのよ」


「サクラって呼んでちょうだい」――母


(……)


ハルが?


(……)


思わず彼女を見る。


少し照れたような顔。


「ハル」


「すごく美味しいよ」――アラタ


「よかった」――ハル


「アラタのために作ったんだから」――ハル


(……)


胸が温かくなる。


「聞いたか、石神」――兄


「愛情たっぷりだぞ」


「お兄ちゃん!」――ハル


「冗談じゃないよ」


「ハルがこんなに頑張るの、久しぶりに見たんだから」――兄


「もう!」――ハル


「それに」


「前の彼氏には料理なんて作らなかっただろ?」――兄


(……)


その言葉に。


思わずハルを見る。


(……)


私のために。


ここまでしてくれたんだ。


「ありがとう」――アラタ


「えっ?」――ハル


「本当に嬉しい」――アラタ


(……)


気づけば。


目頭が熱くなっていた。


「おやおや」――父


「本当に素直な子だな」


「そうね」


「アラタくんは本当にいい子だわ」――サクラ


「あなたたち二人なら大丈夫そうね」――母


(……)


温かい。


(……)


まるで。


もう一つの家族みたいだった。



メッセージの通知音が鳴る。


【アラタ】


「あっ」


メッセージを開く。


『そういえば言い忘れてたけど、


来週の土曜日、


ハルちゃんを昼食に招待したからね』


――母


(……)


早いな。


「どうしたの?」――ハル


「母さんからだ」


「来週の土曜日、


君を家に招待したんだって」――アラタ


【ハル】


(……)


えっ。


「本当?」


「うん」――アラタ


(……)


今度は私の番なんだ。


胸がドキドキする。


「大丈夫かな」――ハル


「大丈夫だよ」


「みんな君のこと好きだから」――アラタ


(……)


その言葉だけで。


少し安心した。


「おやおや」――兄


「姉ちゃん、


今度はそっちが試される番か」


「うるさい」――ハル


「石神家か」


「これは面白くなりそうだな」――兄


「お兄ちゃん!」――ハル


家族全員が笑う。


(……)


来週の土曜日。


少し怖い。


でも。


少し楽しみでもあった。


【アラタ】


もう一週間が過ぎた。


(……)


今日はハルが来る。


(……)


ジュースを用意しよう。


「やあ、お兄ちゃん」


「もう準備してるの?」――サキ


「うん」


「あの時はハルがおにぎりを作ってくれたから」


「お兄ちゃんらしいわね」――サキ


「でもね」


「こういうのは義務じゃなくて」


「したいからするものよ」


(……)


うん。


分かってる。


「これが僕なりの愛情表現なんだ」――アラタ


(……)


彼女は。


それだけの価値がある。


「おはよう、みんな」――母


「準備は順調?」


「うん」――アラタ


「あっ」


「ごめん、お兄ちゃん」――サキ


「言うのを忘れてた」


「何を?」――アラタ


「セイジも昼食に招待したの」――サキ


(……)


なるほど。


「僕は全然構わないよ」――アラタ


「よかった」――サキ


「だって」


「彼ももう家族みたいなものだし」


(……)


確かに。


「それに」


「ハルも緊張してるだろうし」


「知っている人が多いほうが安心するでしょ?」――サキ


(……)


その通りだ。


「さすがサキだな」――アラタ


「でしょ?」――サキ



インターホンが鳴る。


「僕が出るよ」――アラタ


玄関へ向かう。


ドアを開けると。


(……)


二人が並んで立っていた。


「あら」


「二人一緒だったんだね」――アラタ


「やあ、アラタ」


「今日も素敵だね」――ハル


(……)


くすぐったい。


少し照れてしまう。


「ありがとう、ハル」


「やあ、セイジ」――アラタ


「こんにちは」――セイジ


「サキが待ってるよ」


「ありがとう」――セイジ


家の中へ入る二人。


すると。


「ごめんね、ハル」


「サキの提案だったんだ」――セイジ


「気にしないで」


「君たちも私たちと同じなんだから」――ハル


「同じ?」――アラタ


「付き合ってるってこと」――ハル


(……)


確かに。


「そうだな」


「もう数か月になるしね」――セイジ


「時間が経つのって早いね」――ハル


(……)


本当に。


あの日から。


色々なことが変わった。


でも。


悪い変化は一つもなかった。



【ハル】


「おはようございます、石神さん」


「おはよう、ハルちゃん」


「ユイナって呼んでね」――母


(……)


なんて優しいんだろう。


「はい、ユイナさん」


「お会いできて光栄です」――ハル


「こちらこそだよ」――父


「ハルちゃん」


「アラタをありのまま受け入れてくれてありがとう」


(……)


えっ。


(……)


私にまで感謝してくれるなんて。


感謝すべきなのは。


私の方なのに。


「私こそ」


「アラタと出会えて感謝しています」――ハル


「そう言ってくれて嬉しいよ」――父


「この関係がアラタにとってどれほど大切か」


「君には想像できないかもしれない」


「初めての彼女だからね」――母


「お母さん!」――アラタ


顔を真っ赤にする。


「ははは」――父


「でも本当のことだよ」


「僕たちは本当に嬉しいんだ」


(……)


彼は。


とても愛されている。


(……)


なんだか嬉しくなる。


「あの日」


「学校でアラタを助けてくれてありがとう」――母


(……)


あの日。


「私も忘れられません」


「あの日から」


「すべてが変わりました」――ハル


「そうだな」――セイジ


「アラタはみんなを変えた」


「本人は気づいていないだろうけど」――セイジ


(……)


確かに。


(……)


彼はきっと。


自分がどれほど多くの人を支えてきたのか。


まだ分かっていない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ