表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
25/31

私もその一員になりたい

木曜日 放課後


アラタ


ハル。


そこで何してるんだ?


「こんにちは、アラタ」――ハル


(……)


僕を待っていたのか。


「こんにちは、ハル」


「アラタ。


初めて二人で行ったあの店、覚えてる?」――ハル


(……)


忘れるわけがない。


(……)


あの場所で。


(……)


僕たちの物語は始まった。


「そう。


だから、もう一度行こう」――ハル


(……)


今日は部活もない。


(……)


用事もない。


「じゃあ、行こう」



【アカリ】


「あれ、見て」


(……)


「ハルとアラタ、自分たちだけで行くみたい」


「ついていこうよ」――ユナ


「そうね」――アカリ


「英語の宿題のこと、覚えてる?」――セイジ


(……)


あの日。


二人は。


すごく自然に話していた。


「私は、あの日から全部が始まった気がする」――アカリ


「違うよ」


「全部は、お兄ちゃんが倒れた日から始まったの」――サキ


(……)


確かに。


そうかもしれない。


「ハルも変わった」


「アラタも変わった」


「いや」――セイジ


「みんな変わったんだ」


「セイジの言う通りだ」――サイト


「あの日から、少しずつみんな変わった」


「そうね」――ルナ


(……)


アラタは。


気づいていない。


(……)


でも。


知らないうちに。


私たちみんなを変えてしまったんだ。




【セイジ】


この場所。


(……)


あの日。


みんなで入ったパティスリーだ。


「ほら、二人とも落ち着いてるよ」――ユナ


「私たちも入る?」――アカリ


(……)


アカリは。


こういう時だけ積極的だ。


「セイジ、もしかして私たちも……」――サキ


どういう意味だ?


「ほら、早く行こう」――サイト



【ハル】


えっ。


みんな、ここで何してるの?


(……)


「アラタ、どうやら私たち尾行されてるみたい」


「ああ、そうみたいだな」――アラタ


「みんな、もう見つかってるよ」――ユナ


「やあ、二人とも」――ユナ


「こんにちは」


「ここ、ハルのお気に入りだったよね」――アカリ


(……)


うん。


(……)


今は。


もっと好き。


「ほら、顔赤くなってる」――セイジ


「サキのこと好きなくせによく言うね」


「まあ、ずっと好きだったし」――セイジ


「えっ、本当?」――サキ


「姉ちゃん、今さらだろ」――アラタ


「見てれば分かるよ」


(……)


かなり。


ロマンチックな空気だ。


(……)


でも。


僕はいつ。


「お兄ちゃん」


「そろそろ気づいた方がいいよ」――サキ



【アラタ】


「ここが。


英語の宿題をした場所だ。


(……)


そして。


全部が始まった場所なんだ」


「何言ってるの、お兄ちゃん」――サキ


「まだ気づいてないのか、相棒」――セイジ


(……)


何のことだ。


「何の話だよ、みんな」


「事故の日。


二人は変わったんだ」――サキ


「お兄ちゃん。


前よりずっと穏やかになったよ」


(……)


穏やかに?


「ハルも知らないふりしないで」――ユナ


「あの日から。


君はもっと人間らしくなった」


ハルは静かにうなずく。


「だから。


今、僕たちはここにいるんだ」――サイト


(……)


そうだったのか。


(……)


変わったのは。


みんなだけじゃない。


(……)


僕も。


みんなに変えられていた。


「みんな。


そばにいてくれてありがとう」


涙がこぼれる。


「なんで泣いてるの?」――ハル


「嬉しいんだ」


「僕のそばにいてくれて。


ありがとう、ハル」


「うん」


「ずっと一緒にいるよ」――ハル


「それじゃ」


「この素敵なグループに乾杯!」――ルナ



—乾杯— みんなで



金曜日


【アラタ】


黒板。


対局表。


午後3時。


チェス第2ラウンド。


第1試合


石神新セイル

大和梅井(藤間)


第2試合


田弥良誠司セイル

田原弁士サロトイ


「アラタが先攻だ」――セイジ


「そうだ。女子の試合は午後5時からだ」


(……)


時間には間に合う。


(……)


僕も行きたい。


(……)


ハルの試合を見たい。


(……)


この前は。


ハルが僕を応援してくれた。


(……)


今度は。


僕が応援したい。


「うん、僕たちも女子の試合を見に行くよ」――セイジ


(……)


よかった。


(……)


一緒に行ける。



午後3時


【ハル】


見てる。


(……)


ずっと見つめてる。


(……)


私のアラタ。


「やあ、ハル」――サキ


「こんにちは、サキ」


「ハル。


私のお兄ちゃんのこと、好きなの?」――サキ


好き。


(……)


そんな簡単な言葉じゃない。


(……)


もっと深いもの。


「彼と一緒にいると。


私のことを分かってくれている気がするの」


「それがお兄ちゃんだからね」――サキ


(……)


その優しさ。


(……)


その温かさ。


(……)


だから。


私は彼が好きなの。


「二人が好き合ってるなんて、よかったね」――サキ


(……)


やっぱり。


そうなんだ。


「ありがとう」――ハル


「どういたしまして」――サキ


「女の子同士の話だけど」


「サキは、セイジのことが好きなの?」――ハル



【サキ】


セイジ。


(……)


好きだよ。


(……)


昔から。


いつも私を守ってくれた。


「恋かどうかは分からなかった」


「でも」


「彼は、いつも私に優しかった」



【ハル】


「分かるよ」


「私も」


「お兄さんのそういうところが好きだから」


(……)


彼の優しさ。


(……)


人を安心させるところ。


(……)


好き。


「その通りよ、ハル」


「私とセイジをつないでいるのも」


「彼が私に向けてくれる、その優しさなんだから」――サキ



バレーボールの試合


【アラタ】


女子たちが試合をしている。


(……)


埼玉会場で。


「埼玉会場に行って応援しようぜ」――セイジ


「行こう、みんな」――サイト


(……)


もし。


ハルがそこにいるなら。


(……)


僕も。


その場所にいたい。


「行こう」


「今日は斎藤の野球の試合じゃないぞ」――セイジ


「大丈夫」


「終わったら向こうで合流するよ」――サイト



【アカリ】


「ねえ、みんな。


男子たちが来たよ」


(……)


まさか。


「そういえば、野球部の試合は18時からだったよね」――ユナ


「あっ」


「アラタと将棋部のみんなもいる」――ハル


【アラタ】


ここにいるよ。


ハル。


(……)


「ねえ、アラタ」


「ハルのこと、そんなに好きなの?」――セイジ


(……)


「どうしてそう思うんだ?」


「最近、いつも一緒にいるからさ」――セイジ


「そうだよ」


「セイジの言う通りだ」――将棋部


(……)


そうか。


(……)


好きなんだ。


「うん」


「好きだよ」


「ははっ」


「やっぱりね」――ユナ


「二人が好き合ってるなら、悪いことじゃないよ」――セイジ


(……)


なんだか。


胸が軽くなった。


「ところで、セイジ」


「俺の妹とはどうなってるんだ?」――アラタ



【セイジ】


分からない。


(……)


サキは。


僕のことを。


友達として見ているのか。


(……)


それとも。


少しは。


特別に思ってくれているのか。


「友達としては。


ずっと大切に思ってたよ」――アラタ


(……)


でも。


これまでのことを思うと。


少し怖い。


(……)


僕がしてきたこと。


(……)


それが。


今も心に引っかかっている。


「過去のことが。


僕を苦しめているんだ」


「セイジ。


あれは事故だったって。


サキも分かってる」――アラタ


「でも。


それで全部が許されるわけじゃない」


「違うよ」


「あの時。


君はサキを守ろうとした」


「そのことを知った時。


みんな理解したんだ」――アラタ


「何を?」


「君の行動は。


誰かを傷つけるためじゃなく。


守るためだったってこと」


(……)


本当か。


「それに」


「僕たちは。


みんな君に感謝している」――アラタ


(……)


ありがとう。


相棒。



—葵は少し緊張していた—


【葵】


(……)


斎藤の試合。


(……)


18時。


「野球部の試合は18時からだよ」――誠司


「まさか。


葵は斎藤の試合だから行くんじゃないの?」――誠司


「私だけずるいなんて言わないでよ。


みんなだって。


サキやハルのためにいるんだから」


(……)


しまった。


自分で言っちゃった。


「おい、葵。


落ち着けよ。


試合には間に合うさ」――新太


(……)


そうだったらいいのに。


「斎藤のこと。


好きなんだね」――誠司


(……)


少し黙る。


(……)


もう隠せない。


「うん」


「ずっと前から」







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ