歩いた場所には足跡が残る
【母】
「おはよう、アラタ。よく眠れた?」
「おはよう、母さん。うん」 アラタ
(……)
最近。
穏やかな顔をするようになった。
「それはよかったな」 父さん
「ありがとう、父さん」 アラタ
「アラタ、今日は水曜日よ」 母さん
(……)
そんな姿を見ていると。
少し安心する。
「どうしたんだ?」 父さん
「あなたも同じことを考えていたでしょ?」
「まあな」 父さん
【サキ】
「みんな、おはよう」
「おはよう、お姉ちゃん。顔色が良くなったね」 アラタ
(……)
そうかな。
(……)
でも。
少し前より気持ちは軽い。
(……)
悩みが減ったから?
それとも。
(……)
あなたが落ち着いたから?
「うん。前よりずっと調子がいいよ」 サキ
「それならよかった」 アラタ
「さあ、みんな朝食を食べなさい」 母さん
弟の姿が見える。
(……)
穏やかに朝食を食べている。
(……)
昔より。
ずっと。
さっきまで何か考え込んでいたみたいだけど。
「どうしたの、お姉ちゃん?」 アラタ
「どうしてそう思うの?」
「さっきから僕のこと見てるから」 アラタ
(……)
気づいてたんだ。
「君の変化は良い方向に向かってるよ」
アラタは少し首を傾げた。
「そうかな?」
「うん」
(……)
前よりよく笑うし。
(……)
前よりみんなと話してる。
「そう言われると変な感じだな」 アラタ
「事実だから」
アラタは小さく笑った。
(……)
その笑顔を見て。
【セイジ】
「誰か来たみたいだ」
「たぶん斎藤だろう」――アラタ
ドアが開く。
「おはようございます、石神さん。お久しぶりです」――セイジ
「おはよう。元気そうでよかった」――母さん
「セイジ、こっちだよ」――アラタ
(……)
懐かしい。
(……)
昔と変わらない。
「セイジとこの光景か」――サキ
「斎藤が迎えに来てくれて、そのまま一緒に来たんだ」――セイジ
「やっぱりそうなると思ったよ」――アラタ
【セイジ】
(……)
なんて笑顔だ。
(……)
昔と変わらない姿を見て。
(……)
本当に嬉しい。
【サイト】
「家まであと1ブロックだし、アラタもいるから迎えに行ったんだ」――サイト
なんて嬉しいんだろう。
(……)
嬉しそうなセイジ。
(……)
楽しそうなアラタ。
(……)
少し驚いているサキ。
(……)
そして。
嬉しそうな私。
「斎藤は大丈夫か」――アラタ
「うん、大丈夫だよ」
【アカリ】
「あれ、誰か来るわよ」
みんなが振り返る。
石神たちだった。
(……)
来たんだ。
遠くからサキが手を振る。
私も軽く手を振り返した。
「やあ、みんな。調子はどう?」――サイト
「おはよう」――みんな
「おはよう。元気?」――アラタ
(……)
前よりずっと自然だ。
アラタは笑いながら挨拶している。
そして。
(……)
一瞬だけ。
ハルを見る。
「おはよう、アラタ」――ハル
ハルも笑顔で返した。
(……)
気のせいかな。
その挨拶は。
みんなに向けたものだった。
でも。
(……)
あの視線だけは。
少し違った気がする。
(……)
たぶん。
本人たちも気づいていない。
【ユナ】
最初の休憩。
「石神、生徒会長が言ってたよ。
来週は埼玉県数学オリンピックなんだって」
「目標がたくさんあるんだね」
(……)
本当に尊敬する。
「そうだけど。
何事も時が来ればね」――アラタ
(……)
その笑顔。
(……)
見ていると安心する。
「今から水泳の2回戦だ」――セイジ
(……)
もちろん。
応援するよ。
「ハルも来る?」――ユナ
「うん。
スタンドから応援するよ」――ハル
(……)
優しい顔をしてる。
(……)
前よりずっと。
そして。
(……)
もう受け入れたんだね。
【ハル】
水泳競技。
セイル高校 石神新
藤間高校 田上真希
埼玉国立高校 弁賀志泰
ルナニ高校 加賀志ミル
そして。
あと二人。
(……)
またあの騒がしい子たち。
「おはよう、ハル」――サキ
「みんな来たの?」
(……)
クラスのみんな。
(……)
サイトくんのクラスメートまで。
今は。
(……)
私は一人じゃない。
「こんにちは、ハル」――ルナ
「君ならできるよ、石神」
(……)
本気で。
そう思ってくれている。
胸が熱くなる。
(……)
もう。
我慢しなくていい。
(……)
よかった。
本当に。
【ハル】
君の飛び込みは
(……)
完璧だった。
今。
(……)
その違いが分かる。
他のみんなも。
マキも。
力強く泳いでいる。
(……)
でも。
君は違う。
(……)
息が合っている。
(……)
どうしてなんだろう。
(……)
それは。
君が好きだから。
(……)
君のリズムが。
私のリズムに伝わってくる。
(……)
今。
君を内側から見ている。
「見て、一人痙攣したよ」――ユナ
「石神は相変わらずね」――アカリ
「だから私は卓球のパートナーにアラタを選んだの」――ルナ
(……)
その言葉が。
私を落ち着かせてくれる。
(……)
頑張れ。
アラタ。
君ならできる。
試合終了。
「ブラボー、相棒!」――セイジ
「1位 藤間高校・田上マキ
2位 セイル高校・石神新」
――審判
(……)
でも。
私は見ていた。
「その違いが分かるよ」――ハル
「どんな違い?」――ユナ
「マキはゴールした時には限界だった。
でも。
アラタはまだ前を見ていた」
(……)
やっぱり。
君はすごい。
【ルナ】
次は私の番よ。
(……)
今日を乗り切れば。
(……)
もう乗り越えたも同然だ。
「石神、1時間後に卓球の試合が始まるよ」
「そうだね。その次はチェスだ」――アラタ
(……)
本当にすごい。
普通なら。
(……)
一つでも大変なのに。
卓球。
チェス。
水泳。
(……)
全部に本気だ。
「疲れてないの?」――ルナ
「少しはね」――アラタ
「全然そう見えないけど」
アラタは苦笑した。
「そう見えるだけだよ」
(……)
嘘つき。
(……)
きっと努力してるんだ。
誰にも見えないところで。
「でも、卓球は負けないよ」――ルナ
「アラタ、元気?」――ハル
「うん、ハル」――アラタ
(……)
やっぱり。
彼女がいると。
彼は安心している気がする。
(……)
ハルも同じだ。
二人とも。
気づいていないだけ。
(……)
これから君は。
(……)
その可能性を。
自分で見つけることになるんだろうね。
「ルナ、どうしたの?」――アラタ
「なんでもないよ」
(……)
本当は。
ちょっと羨ましいだけ。
「さあ、行こう」
「うん」――アラタ
(……)
頑張って。
二人とも。
【ルナ】
卓球 第2ラウンド
混合ダブルス
ルナ・タケシ
石神アラタ
(セイル学園)
対
サラダ・ミサオ
古賀クドミ
(マゴノ学園)
「準備はいいか、相棒?」
「ああ」――アラタ
第1セット開始。
相手のサーブ。
(……)
速い。
アラタが返す。
私が前に出る。
スマッシュ。
ポイント。
「ナイス!」――アラタ
(……)
相変わらずだ。
どんな試合でも。
落ち着いている。
ラリーが続く。
9-7。
試合はそのまま続く。
ラリーが続く。
(……)
速い。
15-13。
相手も食らいついてくる。
17-15。
(……)
やっぱり。
君は私のペースについてきている。
アラタがレシーブする。
私が前に出る。
ポイント。
20-17。
「いいぞ!」――アラタ
(……)
頼もしい。
セットポイント。
24-23。
相手のサーブ。
アラタが返す。
私がコースを狙う。
スマッシュ。
ポイント。
25-23。
休憩
「そのまま行け。ペースを落とすなよ」
「うん」――アラタ
私は観客席を見る。
(……)
やっぱり来ている。
「ほら、あそこ」
「ん?」――アラタ
「私の彼氏と、君の彼女」
私は冗談めかして言った。
「何言ってるんだよ」――アラタ
(……)
本当に気づいていないんだ。
第2セット開始。
彼らは
(……)
自分たちのペースを
作っている。
9-11。
(……)
でも。
私たちにも私たちのペースがある。
「まだ大丈夫」――アラタ
(……)
そう。
君がいるなら。
再びリードを奪い返した。
15-11。
「アラタ、その調子で」
「うん、ルナ」――アラタ
19-14。
このリードを守り切る。
(……)
あと少し。
突然。
(……)
追いつかれた。
23-25。
「やられたな」――アラタ
「大丈夫」
最終セット開始。
(……)
試合は依然として拮抗している。
13-12。
相手のサーブ。
(……)
18-17。
長いラリー。
(……)
クロスへの強烈なショット。
コーナーぎりぎりに決まった。
「すごい精度だね、アラタ」
マッチポイント。
相手のサーブ。
アラタが返す。
私が前に出る。
スマッシュ。
ポイント。
「試合終了!」
「セイルの勝利です!」――審判
数分後。
「チェスの試合は金曜日に延期されました」
――場内アナウンス
「みんな、一緒に祝おうよ」――ハル
(……)
またみんなで。
「行こう」――みんな
「友情」編の終わり
....................
アラタ
以前:斎藤 咲
(......)
現在:
ルナとアカリ
(......)
ルナ
(.....)
セイジ
(.....)
将棋部
(......)
あなたたちのことは忘れない
ハル
「見て、アラタ、あの子、笑ってるよ」 ハル
「泣いてるじゃないか、相棒」 セイジ
涙
(....)
「君たちがいるから」
.......
アラタ
「ねえ、ハル」
「うん、どうしたの?ここが気に入らないの?」ハル
「そうじゃなくて、君がいると、ここがもっと美しく見えるんだ」
「何言ってるの、アラタ」ハル
「うん、君がいると、どんな場所ももっと美しくなるんだ」
「それって、告白なの?」ハル
ただの感想だよ
(......)
(.....)
—もし告白だったとしたら、どう答える?—
ハル
(.....)
告白された
(.....)
胸がドキドキする
(.....)
もちろん「イエス」よ
バカ
「ええ、あなたの彼女になりたいわ。ずっと一緒にいるって言ったでしょ」




