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スタンドからあなたを見つめて

学校対抗戦の前週


【月曜日】


アラタ


チェス部の名簿を提出する時間だ。


(……)


みんな強い。


(……)


休み時間のベルが鳴った。


廊下へ向かう。


掲示板。


そこには、


水泳大会の参加者一覧が貼られていた。


【男子クロール】


石神 新

羅納 留京雅

名崎 優

三谷井 純


(……)


その下。


【土曜日】


第一回大会


セイル高校 石神 新

コガマ高校 林 茗荷

藤間高校 田釜 真希

ほか三名


(……)


他校の選手か。


少し気になる。


「やあ、石神。


悪いな、


君の名前も入れておいた」――水泳部顧問


「分かりました、先生」――アラタ


(……)


他の選手たちは、


少しレベルが低そうだ。


「では失礼します。


チェス部の名簿も提出しないといけないので」――アラタ


「ああ、


頼んだぞ」――先生



(……)


もう分かった。


(……)


みんなを導くには、


もっと強くならなきゃいけない。


(……)


十人になったチェス部。


【チェス部】


セイジ


驚いた。


僕の名前が、


大会の名簿に入ってるなんて。


「キャプテン、


僕の名前が載ってる」――セイジ


「まだ早いのは分かってる」


(……)


「でも、


試合を重ねれば、


少しずつ覚えていくよ」――アラタ


(……)


できる限りのことはする。


「間違えないでね」――セイジ



【火曜日】


ハル


黒板を見る。


「新太くん、


水泳大会に出るんだって」――ハル


「驚いたね、ハル」――ユナ


「だって、


ただ手伝ってるだけだと思ってたのに」


(……)


信じられない。


(……)


まだ、


よく分からない。


「顧問って、


才能ある子を見つけると、


すぐチームに入れるのよ」――アカリ


「ねえ、


下も見てみて」――ユナ


「何が書いてあるの?」――アカリ


「アラタが、


土曜日の試合に出るんだって」――ユナ


(……)


「しかも、


藤間学園のマキも来るみたい」――ユナ


(……)


マキと対戦。


(……)


あの人気者。


(……)


アラタくん。


「マキのファン、


絶対たくさん来るよ」――ユナ


「きっと騒がしくなるね」――アカリ


「でも、


私たちの試合はそのあとだから」――アカリ


(……)


「そうすれば、


アラタが泳ぐところ見られるよ」――ユナ


(……)


「……見に行こうかな」――ハル


「いいんじゃない?」――ユナ



(……)


また、


あの子と一緒だ。


(……)


すごく自然に話してる。


「ハル……


どうしたの?」――ユナ


「……何でもないよ」――ハル


(……)


そうだったらいいのに。


(……)


僕とも、


あんなふうに。


(……)


ユナとも、


自然に話してるのに。


「ほら、


練習始まるよ」――アカリ



【水曜日・出発の日】


セイジ


「みんな、


行こうか」


「はい」――アラタ


(……)


この感覚。


(……)


前にも、


感じたことがある。


「……僕の家、


寄っていかない?」


(……)


両親に、


会わせたい。


(……)


「いいよ」――みんな


【セイジの家】


「ただいま、


お母さん、お父さん」――セイジ


(……)


両親の表情が止まった。


(……)


驚いている。


「セイジ……


覚えていたのね」――母


「こんにちは、


田山さん」――サイト


「まあ……


みんな、


ずいぶん大きくなったわね」――母


(……)


懐かしい。


(……)


この安心感。


(……)


どこか、


昔と同じだ。



【木曜日】


【バレーボール部】


ハル


「そっち、


パス!」――アカリ


(……)


いいトス。


(……)


こっちに来た。


(……)


スパイク。


(……)


ポイント。


「次行くよ!」――ユナ


(……)


ボールが返ってくる。


「気をつけて、


ナオミ!」――ハル


(……)


「あっ……!」


――ナオミ


(……)


足首を捻った。


「先生、


どうします?


リベロが怪我しました」――アカリ


(……)


どうしよう。


(……)


ナオミがいない。


(……)


彼女は、


私たちの最高のリベロなのに。


「花田。


石神サキを呼んでみるか?」――先生



金曜日


放課後


【ハル】


行かなきゃ。


(……)


どんな顔をして行こう。


(……)


ハルは何を考えているんだろう。


(……)


もし部活の用事だけだったら。


(……)


「こんにちは。石神サキさんとお話できますか?」


「はい」


「石神さん、来てくれ」――先生


(……)


緊張する。


(……)


「こんにちは。何かご用ですか?」――サキ


「こんにちは。


昨日、リベロが怪我をしてしまって……


明日が初戦なんです。


チームにあなたが必要なんです」――ハル


(……)


サキは少し驚いた。


「私がですか?」


「うん。


先生もそう言ってたし、


私もそう思う」――ハル


(……)


しばらく沈黙が続く。


「私でよければ」――サキ


(……)


安心した。


「ありがとう」――ハル


「でも、


急にどうして私なんですか?」――サキ


「ナオミの代わりが必要なの。


それに、


あなたなら大丈夫だと思ったから」――ハル



【バレーの練習】


【サキ】


「石神、控えチームでプレーしてみてくれ」――バレー部の監督


(……)


やっぱり。


(……)


きっと実力を見られている。


「はい」


ユナのサーブ。


(……)


ボールを受ける。


「ナイスレシーブ!」――部員


(……)


ボールをつなぐ。


「石神さん、すごく上手だね」――部員


「うん。


このスポーツ、昔から好きなんだ」――サキ


(……)


みんな驚いている。


「もしかして、


石神新くんの妹さん?」――別の部員


(……)


やっぱり聞かれた。


「そうよ」――サキ


「なるほど、


だから運動神経がいいんだ」――部員


(……)


それは違うと思う。


(……)


私は私だ。


最終結果


25-21、20-25、15-13


「さあ、リベロを交代するよ」――先生


【サキ】


次は私の番だ。


(……)


ハル先輩、


少し緊張しているみたい。


(……)


気のせいかな。


相手チームのサーブ。


(……)


ボールを受ける。


「ナイスレシーブ!」――部員


(……)


ボールをつなぐ。


「もうかなり差が開いてきたね」――部員


「まだ分からないよ」――サキ


「このままだと、


2セットで終わっちゃうね」――部員


(……)


なんでそんなに焦ってるんだろう。


(……)


私は助けに来ただけなのに。


「石神、


ただの冗談だよ」――部員


「あっ、


ごめんなさい」――サキ


試合終了。


(……)


しばらくして。


「サキをリベロのスタメンにしたらどう?」――ナオミ


(……)


私がスタメン?


「うん、


その方がいいと思う」――部員たち


「私も賛成」――アカリ


「ありがとう」――サキ



土曜日


大会当日


午前10時


【ハル】


聞こえてくる。


(……)


マキ。


(……)


マキ。


(……)


マキ。


「あの子たち、


みんなマキのファンなんだね」――ハル


「そうよ」――アカリ


女子生徒たちがやって来る。


(……)


サキたちと一緒に。


「おはよう、花田先輩」――サキ


「おはよう、石神さん」――ハル


「どうしてクラスメートまで来てるの?」――アカリ


(……)


やっぱり、


みんなマキのファンなんだろうな。


「違うよ」――新井戸葵


(……)


えっ?


「私たち、


アラタを応援しに来たんだ」――葵


(……)


アラタくんを?


(……)


ああ。


(……)


アラタくんにも、


応援してくれる人がいるんだ。


(……)


人気者なんだ。



「お見事、


兄さん。スタートだよ」――サキ


【ハル】


マキはすごく速い。


(……)


でも。


(……)


アラタくんのタイミングは完璧だった。


(……)


そんな気がする。


「石神がマキを追い上げてる!」――アカリ


「危ない……!」――ユナ


ターン。


(……)


アラタくんは完璧だった。


(……)


もう、


頭一つ前に出ている。


(……)


マキよりも。


終了。


【結果】


1位 セイル高校 石神新


2位 藤間高校 田上マキ


3位 田賀野田高校 ユウ・ハロシ


(……)


予感が当たった。


(……)


どうしてだろう。


(……)


こんなに嬉しい。



【ハル】


石神。


(……)


石神。


(……)


あちこちから、


その名前が聞こえてくる。


(……)


みんな、


言葉を失っていた。


「よくやったね、新太くん」――アカリ


(……)


遠くにいる。


(……)


でも、


すぐに見つかった。


(……)


アラタくん。


(……)


次は、


私たちの番だ。


(……)


準備しなきゃ。



【セイジ】


「バレー部の試合を見に行こう」


「行こう」――アラタ、サイト


(……)


あれ?


(……)


サキがいる。


(……)


なんでだ?


「新太、


お前の妹を見てみろ」――セイジ


「えっ?」


「本当だ。


何があったんだろう」――アラタ


「見てよ。


僕のチームメイトのナオミ、


足に包帯を巻いてる」――サイト


(……)


リベロか。


(……)


サキがやってるのか。


(……)


そんなに上手かったんだな。


試合開始。


【アラタ】


「相手はどこなんだ?」――アラタ


「サクラ女子だよ」――サイト


(……)


あの動き。


(……)


ハルだ。


(……)


動いた。


(……)


いいブロックだ。


ポイント。


試合は続く。


「サキ、


いいプレーしてるな」――セイジ


「ああ。


これならレギュラーも狙えるな」――アラタ


「ナオミと同じレベルになるのは簡単じゃないぞ」――サイト


(……)


そうだな。


(……)


サキも。


ユナも。


アカリも。


(……)


みんな頑張っている。


(……)


でも。


(……)


目がいくのは――


(……)


ハルだった。


試合終了


セイル高校 3-1 勝利


25-20

21-25

25-22

25-18


【アラタ】


ハル。


(……)


よくやった。


【ハル】


灰色の空を見上げる。


(……)


少し疲れた。


(……)


でも、


悪くない気分だ。


(……)


あそこにいる。


(……)


アラタくん。


(……)


視線が合った。


(……)


ほんの一瞬。


(……)


それだけだった。





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