どうして私を振り回すの?
【木曜日】
【ハル】
(……)
あなたは、
いつも落ち着いている。
(……)
気づけば、
いつも私の隣にいる。
(……)
席替えをしたら、
どうなるんだろう。
(……)
何が起こるかなんて、
誰にもわからない。
(……)
想像もできない。
その日が来たら、
新太くんは、
どこに座るんだろう。
(……)
どうか、
また一緒になれますように。
「おはよう。
今日は席替えをします」――先生
(……)
なんで、
こんなに早く順番が回ってくるの。
(……)
「石神、
三列目の四番に座れ」――先生
(……)
もう移動しちゃった。
「花田は……そうだな」――先生
(……)
「石神の後ろの席に座りなさい」
(……)
新太くんの、
後ろ。
(……)
せめて、
後ろから守ってあげよう。
(……)
ユナとアカリは、
別々の席になっていた。
【セイジ】
(……)
何人か、
席が離れてしまった。
(……)
その中には、
僕もいる。
(……)
正直、
どこでもよかった。
どこでも――
「カヤミラ、
石神の右隣に座りなさい」――先生
「はい」――セイジ
(……)
またか。
「アラタ、
また君の隣だな」――セイジ
「ああ、セイジ」――アラタ
「昔から、
ずっと一緒だ」
(……)
あれは、
何だったんだろう。
(……)
失っていた記憶。
(……)
気づけば、
涙が滲んでいた。
「セイジ、
大丈夫か?」――アラタ
「ああ……
小学校の頃を思い出してたんだ」――セイジ
【アラタ】
(……)
彼の言葉が、
記憶を呼び起こす。
「……あの頃を、
忘れるわけないだろ」――アラタ
【アラタ】
(……)
これから、
どう変わっていくんだろう。
(……)
後ろにはハル。
右隣にはセイジ。
(……)
人生は、
いつだって――
変数の置き換えみたいなものだ。
【一時間目の休み時間】
【サキ】
(……)
なんて、
温かい光景なんだろう。
(……)
四人が、
また一緒にいる。
「おい、
お前、あの変人の妹だろ?」――クラスメート
(……)
また、
同じ冗談。
(……)
でも、
もう違う。
「お前ら、
いい加減にしろ。
石神を放っておけ」――斎藤
(……)
「ありがとう」――サキ
「いつでもそばにいるって、
約束しただろ」――斎藤
(……)
斎藤は、
あの日の約束を思い出していた。
(……)
なんだろう。
すごく、
嬉しい。
「大丈夫か?」――斎藤
「うん」――サキ
【昼休み】
【アラタ】
(……)
セイジが来た。
「隣、座ってもいいか?」――セイジ
「もちろん。
いいよ、相棒」――アラタ
「みんな、お疲れー」――サキ
(……)
あとは、
斎藤だけだ。
(……)
これで、
また四人揃う。
「何話してるんだ、お前ら」――斎藤
(……)
その時、
向かいのテーブルから声が聞こえた。
「あの裏切り者、
何してるんだよ」――健志
(……)
残念だけど、
彼は知らない。
(……)
カヤミラ・セイジが、
ずっとここにいたことを。
「なあ、アラタ。
今日はチェスしないのか?」――セイジ
「……そうだな」――アラタ
(……)
「セイジ、
サキを家まで送ってくれないか」――アラタ
「いいよ」――セイジ
(……)
僕は、
ここに残らなきゃいけない。
(……)
ルナを、
手伝わないと。
【卓球部】
【ルナ】
「ようこそ、アラタ」
(……)
やっと来た。
「ありがとう、ルナ」――アラタ
「今日は、
他校との練習試合があるんだよ」
「……そんな話、
聞いてないけど」――アラタ
(……)
石神アラタは、
すごく几帳面だ。
(……)
だから、
小さな違和感も見逃さない。
「ごめんごめん。
テストがあって、
伝えるの忘れてたんだ」――ルナ
「別にいいよ」――アラタ
【アカリ】
「だって、
今日はみんなここに残るんでしょ?」
(……)
もし、
練習の先導係が来てなかったら、
暇だったし。
(……)
今日は、
卓球部の練習試合がある。
(……)
しかも、
高輪高校との合同練習。
「ユナ、
ハル。
卓球部の練習、
見に行こうよ」――アカリ
【ハル】
(……)
もしかして。
(……)
「あれ、
アカリ。
もしかしてハルって、
石神のこと――」――ユナ
「違うわよ」――ユナ
(……)
もし違うなら、
なんで――
(……)
あの子に、
あんなに自然に笑いかけてるの?
「ねえハル、
大丈夫?」――アカリ
「う、うん……
大丈夫」
(……)
少しだけ、
複雑な気持ちになるけど。
(……)
でも同時に、
あなたが元気でいてくれることが、
嬉しい。
「石神って、
こんなに卓球上手かったんだ」――ユナ
「……うん」
(……)
もし、
何かあったとしても。
(……)
私は、
そこにいるから。
「ねえハル。
その顔、
なんか優しいね」――アカリ
【ルナ】
「石神、
今日はちゃんと頑張ってたね」
「君もすごかったよ」――アラタ
(……)
あそこにいるのは、
バレー部の女子たち。
「ねえ、
観覧席に石神たちいるよ」――ルナ
「あの子たち、
なんでここにいるんだ?」――アラタ
(……)
その瞬間、
彼の顔が少し赤くなった。
「ねえ、石神。
もしかして――」
(……)
ルナの視線が、
花田へ向く。
「花田のこと、
好きなの?」――ルナ
「な、
何言ってるんだよ、ルナ」――アラタ
【ハル】
(……)
バスケ部の人たち。
「練習試合、
どうだった?」――バスケ部のキャプテン
(……)
アラタは、
完璧だった。
(……)
しかも、
全然動揺してない。
「よかったね。
混合ペア、
勝ったんでしょ?」――ハル
「じゃあ、
バス停まで送るよ」――キャプテン
(……)
彼は、
私の目の前を通り過ぎた。
(……)
なのに、
一瞬も動じなかった。
【アラタ】
(……)
気づけば、
バスケ部の男子たちに囲まれていた。
(……)
なんなんだ、
あいつ。
めちゃくちゃ人気あるな。
【ハル】
(……)
なんで、
こんなにイライラするんだろう。
(……)
やっぱり、
あの時の言葉のせいかな。
(……)
花見の時の――
【ハル】
(……)
本当は、
そうしたい。
(……)
もっと、
一緒にいたい。
(……)
でも、
できない。
(……)
みんなに、
何を言われるかわからないから。
(……)
気にしなくていいはずなのに。
(……)
でも、
他の人とは違う。
(……)
アラタといる時だけは、
こんなに緊張しない。
【帰り道】
【アラタ】
(……)
ルナといる時は、
普通でいられる。
(……)
平気なんだ。
でも――
(……)
ハルといると、
何かがおかしくなる。
(……)
本当なら、
落ち着いていられるはずなのに。
(……)
どうしてか、
落ち着かない。
(……)
もしかすると、
理解できていないのは、
僕の方なのかもしれない。
(……)
ルナは、
ちゃんと距離を取っている。
(……)
でも、
ハルは違う。
(……)
あの抱擁は、
一体何だったんだろう。
それぞれが自分のベッドに横たわっている
【アラータ】
(……)
まだ
よく分からない。
(……)
でも、
あの抱擁を思い出すたびに、
胸が少し締め付けられるような気がする。
【ハル】
(……)
どうして
君のことが頭から離れないんだろう?




