僕の思い出はパズルのようなものだ、セイジ
【火曜日 午前6時】
【セイジ】
(……)
あの夢は、
一体何だったんだろう。
(……)
すごく鮮明だった。
(……)
四人で、
一緒に遊んでいた。
「ママ!」――セイジ
「セイジ!?
どうしたの、その声!」――母
(……)
あれは、
過去の記憶なのだろうか。
それとも、
ただの夢なのだろうか。
「どんな夢だったの?」――母
「石神兄妹と、
久我美が出てきたんだ」
(……)
「どう説明すればいいのか……」――母
(……)
なんで、
何も言ってくれないんだ。
黙ったままだ。
「どうした、禰豆子」――父
「セイジが、
過去の夢を見始めたの」――母
(……)
「……そろそろ話す時かもしれないな。
いつか、
こうなることは分かっていた」――父
「何を知ればいいの?
お父さん、お母さん」――セイジ
(……)
「事故があったんだ。
お前に」――父
「石神サキが、無理をするなって言ったんだ」
「サキちゃん、まだあなたのことを気にかけてるのね」 母
気にかけている
(……)
わからない
(……)
でも、彼女の言葉を聞くと
胸が痛くなる
「ママ……何があったのか、知りたいんだ」
最初の休み時間
あそこに鏡先輩がいる
(……)
よし、勇気を出そう
(……)
過去は辛い
でも
(……)
この曖昧な記憶のままじゃいられない
「鏡先輩、少しお時間いいですか」
「ああ、セイジ。どうした?」 斎藤
「僕に何があったのか知りたいんです」
「……セイジ、一つだけ約束してくれ。石神兄妹を恨まないって」 斎藤
恨むつもりなんてないと思う
(……)
むしろ、心のどこかでは感謝している
「頼むよ、鏡先輩。
もう、この曖昧な記憶のままではいたくないんだ」
「少しずつ思い出してきたんだな」 斎藤
「うん」
「数年前、君はサキを守ったんだ。
ある連中に絡まれていた彼女を助けて……
そのせいで酷く殴られた」 斎藤
(……)
サキを守った
(……)
頭が痛い
思い出せ
「大丈夫か?」 斎藤
「うん……ただ、頭が痛くて」
「無理するな」 斎藤
思い出さなきゃ
――彼女をからかうな
――うるさい、黙ってろよ
――突き飛ばされる
――頭を殴られる
「……今、少し思い出した」
「小学生の頃、僕はサキを守ったんだ」
「だから、彼らを責めるつもりはないよ、鏡先輩」
でも、あの頃の僕たちは
(……)
どんな関係だったんだろう
「ありがとう」
「セイジ、石神兄妹は……あの時のことを何も知らないんだ」 斎藤
(……)
彼らには、
隠されていた。
(……)
それは、
とても辛いことになると思われていたからだ。
「……でも、サキは知ってるんだろ?」 セイジ
「いや、サキも君が記憶を失ったことは知らない。
あの頃から、
何も変わっていないと思ってる」 斎藤
(……)
わからない。
(……)
「変わってないって……どういう意味なんだ?」 セイジ
「セイジ、焦らなくていい。
少しずつ思い出していけばいいんだ」 斎藤
(……)
少しずつ。
(……)
でも、
胸の奥が痛む。
(……)
サキ。
(……)
僕たちは、
昔、
どんな関係だったんだろう。
【斎藤】
(……)
アラタは、
セイジに何が起きたのかを
知るべきだ。
(……)
そして、
サキも。
(……)
まずは、
サキと話さないと。
【昼休み】
「サキ、
少し時間あるか?」――斎藤
「どうしたの、斎藤?
なんだか緊張してるみたいだけど」――サキ
(……)
どう説明すればいい。
(……)
いや、
ちゃんと伝えなきゃ。
「セイジのことで、
君に知っておいてほしいことがあるんだ」
「なに?
そんな serious な話なの?」――サキ
(……)
言わなきゃ。
誤解されたままになる。
「セイジが、
君を助けたあの時のこと……
覚えてるよな?」――斎藤
「……この前のこと?」――サキ
「ああ。
あの時だ」――斎藤
「……あの時、
どうしたの?」――サキ
(……)
「セイジは、
頭を強く打って……
記憶を失ったんだ」――斎藤
「……え?」――サキ
(……)
「ああ……
だから、
あんな曖昧な記憶だったんだ」――サキ
「そうだ。
今になって、
俺たちを見て少しずつ思い出し始めてる」――斎藤
(……)
「だから、
アラタにも知ってもらうべきだと思ったんだ」――斎藤
【セイジ】
(……)
これは、
一体何なんだろう。
思い出が、
少しずつ浮かんでくる。
【小学六年生】
【裏庭】
そこには、
サキと僕がいた。
「サキ、
ここにいる限り、
誰も君を傷つけさせないよ」――幼いセイジ
「……本当に?」――サキ
「ああ、本当だ」――幼いセイジ
(……)
僕は、
彼女に約束したんだ。
(……)
あの頃、
僕たちは友達だった。
(……)
この懐かしい気持ちは、
何なんだろう。
(……)
気づけば、
涙がこぼれていた。
「セイジ、大丈夫?」――サキ
「……うん。
約束を守れなくて、ごめん」
「違うよ。
何が起きたのか知らなかった私の方こそ……」――サキ
「僕も、
今日まで知らなかったんだ」
「……泣いてるよ」――サキ
(……)
涙が止まらない。
(……)
感情が、
溢れてくる。
「小学生の頃、
私たち……友達だったよね」――セイジ
「ああ。
四人で、
いつも一緒にいたんだよ」――サキ
「じゃあ、バレー部の練習に行くね」――サキ
「ああ、わかった」――セイジ
(……)
キャプテンが来た。
(……)
これで、
ようやく確信できる。
(……)
この繋がりを取り戻せるなら、
他のことなんてどうでもいい。
「キャプテン」――セイジ
「……いつから俺をそう呼ぶようになったんだ?」――アラタ
「全部謝りたいんだ。
友達として」――セイジ
「友達として、か」――アラタ
「本の件なら、
もう気にしてないよ」――アラタ
(……)
やっぱり、
アラタらしい。
(……)
彼はまだ、
全部を知らない。
「真実を知って、
自分が馬鹿みたいに思えたよ」――セイジ
「真実?」――アラタ
(……)
「キャプテン。
僕たち、
小学校の頃から友達だったんだ」
「……僕は、
あの変な髪型をしてた少年だよ」――セイジ
(……)
頼む。
間違っていませんように。
(……)
次の瞬間、
アラタの意識が揺れる。
【夢】
三人の姿。
そして、
もう一つの影。
(……)
ああ、
そうだった。
カヤミラ・セイジ。
「……カヤミラ・セイジ。
君だったのか」――アラタ
「ああ、
そうだよ、アラタ」――セイジ
「僕は、
サキを守ろうとして頭を殴られて……
記憶を失ったんだ」――セイジ
(……)
「君に、
酷いことをしてごめん」――セイジ
「大丈夫だよ」――アラタ
(……)
「僕の過去の一部を、
取り戻してくれてありがとう」
(……)
以前より、
ずっと心が落ち着いていた。
「やっぱり、
チェス上手かったんだな。
昔、
何時間も一緒に遊んでたもんな」――アラタ
(……)
早く、
全部思い出してほしい。
(……)
あの頃、
彼との遊び方なら、
全部覚えていた。
(……)
でも、
何より嬉しいのは――
セイジが、
戻ってきたことだ。
(……)
気づけば、
涙がこぼれていた。
セイジも、
泣いている。
「ちょっと、
二人ともどうしたの?」――サキ
「泣いてる男二人とか、
馬鹿みたいだな」――斎藤
「……カヤミラ・セイジだよ」――アラタ
「ああ、
兄貴。
やっと戻ってきたんだ」――サキ
【セイジ】
(……)
ついに、
四人が揃った。
(……)
なんだろう。
すごく、
嬉しい。
「サキ、
バレー行かなくてよかったのか?」――セイジ
「行くよ。
本当は後で話そうと思ってたんだけど、
先に全部バレちゃったね」――サキ
「……ちゃんと伝えなきゃいけなかったんだ。
でも、
今はこうしてまた一緒にいる」――セイジ
「セイジ、
これからは少しずつ思い出していけばいい。
急に頭痛が来るかもしれないから」――アラタ
「相変わらずだな、アラタ。
そういうところ、
好きだよ、相棒」――セイジ
(……)
誰も、
変わっていなかった。
(……)
変わったのは、
状況だけだ。
「じゃあ、
また後でな」――セイジ
(……)
それぞれ、
自分の部活へ向かっていった。
【サキ】
(……)
この気持ち。
(……)
少し懐かしくて、
(……)
少しだけ、
温かい。
【斎藤】
(……)
よかった。
(……)
セイジは少しずつ、
戻ってきている。
(……)
これなら、
もっと安心できそうだ。
【アラタ】
(……)
欠けていたもの。
(……)
その一部が、
今ようやく繋がった。
(……)
四人が、
また一緒にいる。
【セイジ】
(……)
僕の過去。
(……)
まだ全部は戻っていない。
(……)
でも今、
僕は満たされている。
(……)
みんなが、
理解してくれる。
(……)
最高の友達だ。




