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また君か

[金曜日、午前6時]


[アラータ]


(……)


胸が締め付けられるようだ。


(……)


頭をすっきりさせなきゃ。


(……)


授業。


チェスの練習。


水泳。


(……)


それから、


他に何があったっけ?


♪~


着信音。


[おはよう、アラータ]—ハル


【課題のために、


パティスリーで待ち合わせよう】—ハル


(……)


英語の練習か。


【了解、今向かってる】—アラータ


(……)


すぐに、


また通知が届く。


【土曜日、


桜を見に行かない?】—ハル


【花見に行く。】


ハルと。】


(……)


ハルは、


どうしたんだろう。


【いいよ。


途中で場所を決めよう】――アラタ


(……)


どうして、


学校で言わなかったんだ。


(……)


わざわざ、


メッセージで。


(……)


たぶん。


(……)


まだ朝で、


頭が回っていないだけだ。



「おはよう、アラタ。


少し疲れてるんじゃない?」――母


「……おはよう、お母さん」――アラタ


(……)


心配はかけたくない。


「温かい緑茶でも飲みなさい」――母


「うん」――アラタ


「お兄ちゃん、


そろそろ何か一つくらい減らしたら?」――サキ


(……)


また、


同じ指摘だ。


(……)


ハルも、


似たようなことを言っていた。


(……)


二人とも、


同じ反応をしている。


(……)


つまり、


僕は以前より、


無理をしているように見えるんだろう。


(……)


でも、


もう引き返せない。


(……)


約束してしまった。


(……)


期待を裏切りたくない。


「お姉ちゃん、


もう後戻りはできないよ」


「でも、


アラタ、


ほんの少しでもいいから、


もう少しゆっくり進もうよ」――サキ


(……)


サキは


いつも私のそばにいてくれた。


(……)


きっと、


彼女は


私よりも


ずっとよく


見えているんだ。


(……)


少しは


リラックスできるかもしれない。


「……うん。


サキ、君の言う通りだ」



【ハル】


「おはよう、ユナ、アカリ」――ハル


「おはよう、ハル」――アカリ


「おはよう。


……その顔、どうしたの?」――ユナ


(……)


もう気づかれた。


(……)


勢いでやってしまった。


(……)


もう後戻りはできない。


「……土曜日、


勢いでアラタを花見に誘っちゃった」


「……ハル、


石神くんを?」――アカリ


(……)


どうしよう。


(……)


彼を巻き込みたくなかったのに。


「どうしたらいいと思う?」


「もう行くしかないでしょ」――ユナ


「……わかってる」



彼は、


私の隣に座っている。


(……)


言葉が出ない。


(……)


でも、


彼もきっと、


私と同じなんだ。


(……)


どうして、


あんな勢いで誘ってしまったんだろう。


(……)


もっと、


ちゃんと考えるべきだった。


【昼休み】


【アラタ】


ゆで卵と野菜が入ったおにぎり。


(……)


悪くない。


「よう、石神」――ウゴミ


(……)


こいつ、


また絡みに来たな。


(……)


今度は何を言い出すんだ。


「……おはよう、ウゴミ」


「お前、


ハナダのこと好きなんだろ。


その目でバレバレだぞ」――ウゴミ


(……)


完全に勘違いしている。


(……)


いや、


ハルのことは嫌いじゃないけど。


「何を馬鹿なこと言ってるんだ」


「俺を狂人扱いする気か?」――ウゴミ


「他に誰に言うと思う?」


「ひでぇな、お前」――ウゴミ


(……)


相変わらず、


うるさい奴だ。




[チェス部]


「みなさん、こんにちは」。


「こんにちは、石神部長!」――部員たち


(……)


挨拶としては悪くない。


「ありがとう」。


「キャプテン、


どうして泣きそうな顔をしているの?」――リタ


「……何でもないよ、リタ」。


(……)


この場所は嫌いじゃない。


(……)


みんなといると、


少し落ち着く。


「まずは部員同士で対戦を始めよう」


「はい!」――部員たち


「セイジ、


今日は君が僕の相手だ」


【セイジ】


(……)


なんで僕なんだ?


「君が一番手強い相手だから」


「僕と対戦できることを


光栄に思え」――アラータ


「うっ、


相変わらずうざいね」――セイジ


(……)


この感覚は


何だろう?


(……)


ふと、


ぼんやりとしたイメージが頭に浮かんだ。


(……)


笑い声。


(……)


あの言葉が


心の奥底で響いている。



「セイジ、


思ったより下手じゃないな」――アラタ


(……)


なんだろう。


(……)


少しだけ、


手が勝手に動く感覚がある。


「この手筋、


覚えてたんだな」――アラタ


「練習してたなんて、


聞いてないぞ」


「……俺も、


できるなんて思ってなかった」



「みんな、


じゃあ僕は水泳に行ってくるよ」――アラタ


「了解です!」――部員たち


「セイジのこと、


少し頼むね」――アラタ


(……)


その言葉。


(……)


どこかで、


聞いたことがある。


「石神、


俺はそんな悪い奴じゃないぞ」――セイジ


「うん、


分かってるよ、セイジ」――アラタ




【ハル】


また、


あの時と同じアラタ。


(……)


前は、


彼のことを少し怖いと思っていた。


(……)


でも今は、


彼が泳ぐ姿を、


前とは違う目で見ている。


(……)


「少しはペース落としなよ」って、


言ったのに。


(……)


彼は全然気にしていない。


(……)


でも、


水泳をしている時の彼は、


どこか落ち着いて見える。


(……)


そんな彼を見ていると、


私も頑張ろうって思える。


「花田、


今のサーブすごく良かったよ」――あかり


(……)


サーブで一点取れた。




【パティスリー】


【アラタ】


僕より先に来ていた。


(……)


きっと、


少し待たせてしまった。


「こんにちは。


待たせちゃってごめんね」


「こんにちは、アラタ」――ハル


(……)


少し、


様子が変だ。


(……)


何かあったのかな。


(……)


遅れたせいだろうか。


(……)


一応、


謝っておこう。


「少し遅れてごめん」


【ハル】


(……)


別の理由だって、


気づいてない。


(……)


でも、


その方が今は助かる。


「ううん、


ほんの数分だよ」――ハル


「ちょっと今日は、


疲れてるだけ」


(……)


彼には、


そのくらいでいい。


「そっか。


教えてくれてありがとう」――アラタ



「英語の会話、


すごく自然だったよね?」


(……)


少し安心した。


(……)


この時間は


思っていたより楽しい。


「……まるで


本当に仲の良い二人みたいだったよ」 アラータ


「あ、アラータ、


急に何言ってるの!?」 ハル


「ハハハ……」



「明日、


12時に会おうか、アラタ」


(……)


他に、


断る理由もなかった。


(……)


こんな風に、


誰かと出かけるのは久しぶりだ。


「じゃあ、


場所を探そうか」――アラタ



【土曜日】


【アラタ】


「おはよう、お父さん、お母さん、サキ」


「おはよう、アラタ」――家族


「昨日はちゃんと眠れた?」――母


(……)


昨夜、


変な夢を見た。


(……)


途中で目が覚めて、


また寝直した。


「でも、


少しは眠れたみたいね」――母


「息子よ、


何か考え込んでる顔だな」――父


(……)


どう説明すればいいんだろう。


「今日、


クラスメイトと出かける約束があるんだ」


「なるほど、


それが原因か」――父


(……)


自分でも、


何をどう話せばいいのか分からない。



「お兄ちゃん、


相手に質問してもらって、


自然に答えればいいんだよ」――サキ


(……)


でも、


変に思われないだろうか。


「妹よ、


それは少し難易度が高い」


「大丈夫。


ただ普通に出かけるだけなんだから」――サキ




【ハル】


「おはよう、ハル」――母


「おはよう」


(……)


あまりよく眠れなかった。


「妹よ、


恋してる顔してるぞ」――兄


(……)


何言ってるんだろう、


この人。


私が恋してるなんて、


ありえない。


「ただ、


クラスメイトと花見に行くだけだよ」


「はい、


自分でバラしました」――兄


「ち、違うから。


アラータは、


ただ優しいだけなの」


「アラータっていうのか」――父


「……うん」


「妹ちゃん、


随分気になる相手みたいだな」――兄


「もう、


変なこと言わないで」


「アイト、


その辺にしておきなさい」――母



【アラタ】


待ち合わせ場所へ向かう。


(……)


ここからでも、


彼女の姿が見えた。


(……)


時間ぴったりだ。


ハルが軽く手を振る。


「こんにちは、アラタ」――ハル


「こんにちは、ハル」


(……)


なんだか少し、


緊張している気がする。


「焼きそば買わない?」――ハル


(……)


いい提案だ。


「あとで団子も食べようか」――アラタ



「ねえ、


ここから見る花火、


すごく綺麗なんだよ」――ハル


(……)


本当に、


よく似合っている。


(……)


赤い花柄の入った、


青い浴衣。


「うん。


君の浴衣みたいに、


素敵な場所だね」――アラタ


「……ありがとう、アラタ。


優しいね」――ハル




【ハル】


「うーん、


揚げ麺、美味しいね」


「うん、


美味しいね」――アラタ


(……)


アラタは、


食べ方まで丁寧だ。


(……)


見ていると、


少し落ち着く。


「団子もすごく美味しいよ」――ハル


「……うん、


本当に美味しい」――アラタ


(……)


でも、


どこか落ち着かない。


(……)


彼の手が、


少し震えている。


(……)


心臓の音が速くなる。


(……)


気づけば、


私は彼を抱きしめていた。


「アラタ、


大丈夫。


私がいるから」――ハル


【アラタ】


(……)


ハルの温もり。


(……)


優しい声。


(……)


少しずつ、


頭の中の音が静かになっていく。


(……)


やっと、


一人じゃない。


(……)


僕を理解しようとしてくれる人がいる。


(……)


また、


君だ。


気づけば、


涙がこぼれていた。


「……ハル、


そばにいてくれてありがとう」――アラタ


「はい、


ハンカチ。


涙、拭いて」――ハル








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