新たな始まり
【斎藤】
ここ数週間、
新太は以前ほど張り詰めていない。
(……)
別人になったわけじゃない。
ただ、
少し成長したんだ。
(……)
ルナたちといる時も、
前より自然に笑うようになった。
ここ最近、
新太は変わった。
(……)
別に、
恋をしたとか、
そういう話じゃない。
(……)
ただ、
前より自然に笑うようになった。
(……)
新しい友人ができる。
それだけのことなのに、
人って変われるんだな。
君とは、
長い時間を一緒に過ごしてきた。
(……)
だから分かる。
新太、
君は少しずつ変わっている。
(……)
でも、
新太、
君は少しずつ変わっている。
(……)
昔の君は、
どこか危うかった。
(……)
だから僕は、
ずっと気にかけていたんだ。
(……)
でも今は違う。
(……)
前ほど、
君のことを心配しなくなった。
(……)
君自身が、
ちゃんと前に進めるようになったからだ。
君には、
周りの人を少しずつ変えてしまう力がある。
(……)
それが、
君の一番すごいところなんだ。
【サキ】
アラータは以前より落ち着いているように見える。
もしかすると、前より
リラックスしているのかもしれない。
(……)
別に兄だからというわけではないけれど、
そう感じる。
(……)
彼を違う目で見ている女の子たちがいる。
もう「変な子」じゃなくて、何か「気になる
存在として。
(……)
たぶん、私の気のせいかもしれないけど。
【あかり】
あの日から数日が経っていた。
(……)
ハルはあの出来事に深く動揺していた。
それでも、彼女の中に何かが変化したようだった。
(……)
それは、優しさだったのかもしれない。
(……)
いや、そうではない。
ただ、彼女はもともとそういう子だったのだ。
そして、それを知っていたのは私だけだった。
(......)
でも、もうひとつ。
ハルだけが知っていることがある。
(……)
それが、彼女が転校した理由だった。
5月6日(月)
【アラタ】
教室に入ると、彼女がいつもの場所にいて、
そこからあの笑顔が見えた。
「おはよう、石神」ユナとアカリ
「おはよう、みんな」
(……)
教室全体が、いつもより落ち着いた雰囲気だった。
「あの説明、ありがとう。すごく参考になったわ」アカリ
(…………)
アカリは以前より、思いやりがあるように見えた。
「役に立ってよかった」
自分の席へ向かう。
「おはよう、花田ハル」
「おはよう、石神」花田
[ハル]
アラータは以前より落ち着いている。
彼のために嬉しかった。
(……)
もしかすると、それも私にとって良い影響を与えているのかもしれない。
(……)
私にとって……?
まさか
最初の休憩のベルが鳴る。
僕は席に残った。
いくつか片付けることがあったからだ。
花田ハルが教室を出るとき、
こちらを振り返った。
僕を見る。
今まで、そんなふうにしたことはなかった。
僕が教室を出ると、
そこにはいつも通り、すべてが整っていた。
みんな、
もう彼女を見る目が変わってしまった。
(……)
同情する者もいる。
恐怖から距離を置く者もいる。
(……)
だが、
僕には分かる。
(……)
あれは恐怖じゃない。
(……)
哀れみだ。
(……)
あの日に起きたことが、
彼女をそういう存在に変えてしまった
たぶん、
彼らは彼女の生き方を、
理解できていない。
(……)
だから、
距離を置く。
(……)
でも今なら、
その原因が少し分かる。
(……)
僕は、
以前より人を観察するようになった。
(……)
ようやく、
本当の距離が見えてきた。
「石神、調子はどう?」――セイジ
「やあ、セイジ。僕は元気だよ」
「よかった。
実はさ、
君のことをもっと冷たいタイプだと思ってたんだ」
(……)
「でも違った。
君にはちゃんと筋がある」――セイジ
(……)
セイジは理路整然と話している。
(……)
視線。
声の間。
仕草。
(……)
嘘を隠している様子はない。
(……)
彼は、
本心で話している。
「そうだな。
僕は、自分のルールは曲げない」――アラタ
(……)
「そこ、
結構好きだぜ」――セイジ
「みんなが、
お前みたいなわけじゃないからな」
(……)
「ありがとう」――アラタ
(……)
「困った時は頼れよ」――セイジ
【ハル】
「やあ、ハル。今日はどう?」――アカリ
(……)
気分は悪くない。
でも、
なんだか変な感じがする。
「大丈夫」――ハル
「ハル、
変わってくれてよかった」――ユナ
(……)
少し、
ほっとした。
でも、
まだよく分からない。
(……)
まだ、
受け入れきれない。
【ユナ】
(……)
ハルは怖がっている。
人気を失うことを。
(……)
そして、
自分の気持ちを認めることも。
【ハル】
(……)
二人とも、
それが悪いことじゃないって分かっている。
(……)
でも、
どうしてなんだろう。
(……)
胸の奥が、
苦しくなる。
「簡単なことじゃないよ、ハル」――アカリ
「気持ちが本物なら、
簡単にはいかないものよ」――ユナ
(……)
本物。
(……)
分かってる。
(……)
でも、
どうしてこんなに痛むんだろう。
【英語教師】
授業のチャイムが鳴る。
「おはよう、みんな」
「今日の授業は、
発音を中心に進めます」
「私が英語で質問するので、
みんなは英語で答えてくださいね」
【アラタ】
(……)
自分の番が来たら、
集中しないとな。
(……)
英語は、
数少ない公平に評価される教科だ。
【ハル】
(……)
英語の授業は嫌いじゃない。
(……)
少なくとも、
自然に振る舞えるから。
(……)
少しだけ、
【英語教師】
Tomoyo Akari, when do the cherry blossoms bloom?
Cherry blossoms bloom in spring, usually in April.
Good.
What colors are cherry blossoms?
They are usually pink or white.
Very good.
Did you go to the festival this year?
Yes, I went with my parents.
Ishigami Arata,
you’ve already competed in two rounds of the Math Olympiad this year.
What is your goal for this year?
My goal is to rank among the top students in the country.
Good.
Your English sounds more fluent now.
Have you figured out why?
I think I’ve become more organized in the way I speak.
Very good.
Focus on sentence structure,
and build your answer step by step.
Yes, teacher.
Hanada Haru,
where is the actress Sandra Bullock from?
The actress Sandra Bullock is American.
Very good.
What movies is she famous for?
She is famous for *Miss Congeniality* and *The Heat*.
Very good.
Which one do you like better?
I like *The Heat* better.
Very good.
【ユナ】
(……)
あの二人、
最近は前より自然に話している。
(……)
でも、
英語で答えた瞬間。
(……)
教室の空気が、
少し張り詰めた気がした。
(……)
お願いだから、
変に言い争ったりしないでよ。
【英語教師】
「来週の月曜日、
二人一組で発音のグループワークを行います」
「ペアは私が決めます」
「トモヤとウゴミ」
「アサチとヤマト」
(……)
「石神と花田」
【ユナ】
(……)
石神とハル。
最近は、
前より自然に話している。
(……)
でも、
英語で答えた瞬間。
(……)
二人の間の空気が、
少し張り詰めた気がした。
(……)
お願いだから、
変な言い争いだけはやめてよ。
【アラタ】
僕に花田が割り当てられた。
(……)
先生が、
僕たちの実力に気づいていたからだろう。
(……)
だが、
これからどう振る舞えばいいのか、
まだ分からない。
【ハル】
運命が、
私を石神と結びつけた。
(……)
胸の奥で、
喜びと不安が入り混じっている。
(……)
どうして、
こんな気持ちになるんだろう。




