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君がそばにいる理由

【アラタ】


「おい、サキ。昨日、トマトみたいに真っ赤だったぞ」――斎藤


「斎藤、もうその話でからかわないでよ」――サキ


「妹よ、そんなに怒るなよ」――アラタ


(……)


また始まった。


朝から騒がしい。


(……)


でも、


こういう時間も、


悪くない。


「おい、君。なんだか雰囲気が違うね。まさか花田のこと、好きなんじゃないの?」――斎藤


(……)


花田を好きだなんて。


誰だ、


俺の妹気取りは。


(……)


ただ、


心が落ち着いているだけだ。


「何を根拠に、そんな結論になるんだ?」


「顔つきが柔らかいんだよ。前よりずっ


(……)


顔つき。


そんなものまで、


変わっているのか。


(……)


花田ハル。


君は、


思った以上に厄介な存在らしい。


(……)


でも、


もう君を受け入れたよ。


(……)


君なら、


どう受け止めるか分からないけど。


(……)


少なくとも、


昨日は良かった。


住宅街の道を歩く。


夕暮れの光が、


静かに伸びていく。


「おい、急に黙ったな。図星か?」――斎藤


「違う。ただ整理していただけだ」


(……)


整理。


そう言いながら、


答えはもう出ている気がした。


花田ハル。


君が近くにいるだけで、


昨日は少し特別だった。



学校に着いて。


(……)


あそこにいる。


こっちを見て、


微笑んでくれる。


「お兄ちゃん、表情が変わったね」――サキ


「アラタ、君ってモテるんだね」――斎藤


(……)


ただの笑顔だった。


それだけ。


(……)


それなのに、


胸の奥が少し騒がしい。


【ハル】


「ハル、あなた今、彼に微笑んだわよ」――アカリ


(……)


単なる礼儀。


……そう思いたい。


でも、


衝動だった。


「あなたたち二人が、


彼にチャンスをあげてみろって言ったんだもの」


「でも、


それは大きなチャンスだったみたいね」――ユナ


(……)


よく分からないわ。


彼に場所をあげろって言われたのに、


今はダメだって。


(……)


どうすればいいの。


後戻りはできない。


自然と、


そうしてしまう。


「ハルはただ冗談を言っていただけよ」――アカリ


「でも、


あなたの方がずっとクールだったわ」――ユナ


(……)


彼だけが、


この優しいときめきをくれる。


他の誰とも、


こんな気持ちになったことはない


玄関のベルを鳴らす。


(……)


いつもの場所に、


彼がいる。


それだけで、


私を慰めてくれる。


(……)


クラスの注目の的には、


なりたくない。


(……)


彼を見ると、


安心する。


でも、


少し悲しくなる。


(……)


この気持ちは、


居心地が悪い。



君に会うたびに


この歌が私の心の中で響く


まだ


自分の気持ちをうまく伝えられない。


生まれてからずっと、


臆病者だから。



机に向かう。


(……)


胸が高鳴っている。


(……)


もしかして、


石神くん。


君が、


机に向かう。


(……)


胸が高鳴っている。


(……)


もしかして、


石神くん。


君が、


こんな気持ちにさせているの?


「花田ハル、おはよう」――石神


(……)


その安らぐ声。


彼のだ。


(……)


「おはよう、石神」



【アラタ】


(……)


あの返事は、


的確で、


そして優しかった。


(……)


まさか、


あんな風に返してくれるとは、


思っていなかった。


(……)


花田ハル。


君の存在は、


どこか調和のようなものを


もたらしてくれる。


(……)


他の誰とも違う、


静かな感覚だ。



【アカリ】


私は、


彼らの後ろに座っていた。


(……)


気づけば、


二人の間には、


少し落ち着いた空気が流れている。


(……)


前とは違う。


言葉にしなくても、


分かる距離。


「ねえ、ユナ、石神先生、前より落ち着いてるみたい」


授業中に、私は彼女にささやいた。


「うん、あの張り詰めた感じがなくなったね。


でも、ハル、あなたも前よりリラックスしてるよ」 —ユナ



チャイムが鳴る。


お昼休みだ。


(……)


声が聞こえた。


「石神、代数の問題を手伝ってくれない?」――花田


(……)


ああ、ハル。


まさか、


そこまでやるなんて。


「いいよ」――石神


(……)


まるで、


何でもないことのように。



【サキ】


彼女と一緒にいる。


(……)


「こんにちは。新太の妹のサキです」


少しだけ、


声が硬くなった。


「こんにちは、はじめまして。花田ハルです」


(……)


やっぱり、


「一緒に食事してもいいですか?」


(……)


一瞬だけ、


視線が交わる。


誰も、


気にしていないようだった。


兄は、


いつも通り落ち着いている。


「もちろん。花田さんがよければ」


「もちろん。花田さんがよろしければですが」


「私は構わないわ」とハル、驚いた様子で


「私たちも一緒に行こう」とユナとアカリ


「あの、あの代数の問題がどうしても解けなくて……」とユナ



【アラタ】


(……)


そして、この展開。


理解できないふりをしているのか。


それとも、


ただの好奇心なのか。


(……)


どちらでもいい。


今は、


流れに任せるだけだ。



【アラタ】


「説明してくれてありがとう、石神」――花田


(……)


その声は、


いつもと変わらない口調だった。


(……)


それでも、


どこか少し違って聞こえた。


「花田と一緒にバレー部に行くわ」――あかり


(……)


教室の空気が、


ゆっくりとほどけていく。


すべては、


いつも通りのようで。


「お兄ちゃん、意外と普通だったね」――サキ


「そうか?」


(……)


「まあ、そんなところだ」――アラタ


「じゃあ、私は読書部に行くね」――サキ


「私は水泳部に行くよ」


(……)


それぞれが、


いつもの場所へ戻っていく。


【ハル】


(……)


廊下を歩く。


さっきまでの賑やかさが、


少し遠くに感じる。


(……)


気づけば、


隣に彼がいた。


「さっきは、ありがとう」――ハル


(……)


言葉にすると、


少しだけ恥ずかしい。


「いや、大したことじゃない」――アラタ


(……)


やっぱり、


いつも通りだ。


でも、


それが少しだけ、


心地いい。


「石神くんって、


教え方、分かりやすいね」


(……)


少しだけ、


話を続けてみる。


「そうか?」


(……)


短い返事。


それでも、


ちゃんと聞いてくれているのが分かる。


(……)


この距離。


無理をしなくても、


続いていく感じ。


(……)


悪くない。


【アラタ】


スタートのホイッスルが鳴る。


(……)


リズムを崩すな。


無駄な動きは省く。


(……)


呼吸は一定。


視線は前。


(……)


練習通りにやればいい。


(……)


結果は、


ついてくる。


(……)


気づけば、


一番に戻っていた。



【ハル】


「よくやった、ハル。この試合、勝ったね」――アカリ


「ありがとう、アカリ」


(……)


それでも、


視線は自然と彼の方へ向かう。


(……)


石神くん。


正確に、


無駄のない動き。


思わず、


追いかけてしまう。


「ハル、大丈夫?」――アカリ


「見て。


一番にゴールしたよ」


(……)


やっぱり、


違う。


他の誰とも。


(……)


石神くんは、


すべてにおいて、


どこか特別だ。


(……)


胸の奥で、


またあのリズムが鳴る。


(……)


――どうすればいいんだろう。


この気持ちを。


どうやって、


伝えればいいんだろう。


(……)


今、


君はここにいるのに。


(……)


もう、


気づいているよね。


(……)


この気持ちの意味を。


(……)


だから、


少しだけ待つよ。


(……)


大丈夫。


「……素敵なメロディーだね、ハル」――ユナ


「……声に出てた?」


「うん、ちょっとだけ」――ユナ


(……)


「私って、バカ」


【里美】


(……)


最近、


彼の変化がはっきりしてきた。


(……)


表情。


間の取り方。


そして、


人との距離。


(……)


以前の新太は、


すべてを一定に保っていた。


まるで、


外界から影響を受けないように。


(……)


でも今は違う。


(……)


誰かが、


彼の内側に入り込んでいる。


(……)


花田ハル。


(……)


無意識のうちに、


彼のバランスを崩し、


そして、


整えようとしている。


(……)


興味深い。


(……)


この変化が、


彼をどこへ導くのか。


あの出来事が起きてから、


アラタには、


明らかな変化が見られる。


(……)


表情。


間の取り方。


そして、


人との距離。


(……)


以前とは、


確実に違う。


バブル編・完


..................................................................................................................................................



【英語教師】


「さて、みんな。今日はここまで」


(……)


「来週までに、


二人一組でグループワークを提出してね」


「ペアは私が決めるわ」


(……)


「石神と花田」


(……)


「えっ……なんで石神と?」――ハル


「レベルが同じだからよ」――教師




【図書室】


(……)


静かな空間。


向かい合って座っている。


「シンタ、君の英語……


ちょっと専門的すぎるかも」――ハル


(……)


「ああ、そうか?」――アラタ


「うん。


だから、少し設定を変えない?」


(……)


設定?


「イギリス人とアメリカ人の会話にするの」


(……)


なるほど。


「でも、話し方は逆にする」


「あなたがアメリカ英語。


私はイギリス英語」


(……)


少し不自然だな。


「その方が、


少しコメディっぽくなるでしょ?」


(……)


「普通の会話には見えなくなるし、


作品としても面白くなる」――ハル


(……)


理にかなっている。


「いいと思う」――アラタ


(……)


「それに……」


ハルは少しだけ視線を落とした。


「その方が、


変に注目されないでしょ?」


(……)


やはり、


そういうことか。


【アラタ】


(……)


人気を維持したい彼女と、


平穏を保ちたい僕。


(……)


利害は一致している。


(……)


不自然な設定。


だが、


意図としては合理的だ。


(……)


花田ハル。


思っていた以上に、


戦略的だ。


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