表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/56

2.43

黒い城は、以前と同じ姿でそこにあった。


尖塔は空を裂き、

城壁は夜を飲み込むように沈んでいる。


違うのは、近づく側の足取りだけだった。


四人は無言で歩く。


石畳に靴音が落ちるたび、わずかに反響する。

静かすぎる。


エルナが、城門を見上げる。


「……待ってる」


問いではなく、確信だった。


レイナが目を細める。


風が流れる。


その風が、不自然に止まった。


精霊が息をひそめた感覚。


「囲まれてる」


レイナの声は、落ち着いている。


ミラが杖を軽く回す。

金属芯の入った鈍い音。


「上、塔の影。右側の崩れた城壁裏にもいるわね」


エルナはすでに剣に手をかけている。


数は多い。


だが、無秩序ではない。


気配が揃っている。


「統制されてる……」


魔族の兵が姿を現す。


重装の前衛。

中距離に魔力持ち。

そして、姿をほとんど見せない暗殺部隊。


黒装束。

以前と同じ、隙を見せたらやられるのが分かる。


城門が、低く軋む。


開く気配はない。


レイナが弓を構える。


「何かいつもこんな感じだね。みんな大丈夫?」


エルナも余裕ある感じだ。


「問題ない。いつも通りやるだけだ」


視線が、ほんの一瞬だけ後ろをかすめる。


守られるような弱い仲間はここにはいない。


全員が前に出られる。


ミラが小さく笑う。


「回復は任せて。倒れたら起こす」


「倒れない」


エルナは言い切る。


その言葉に、三人はうなずく。


次の瞬間。


地面が爆ぜた。


影が落ちる。


暗殺部隊が来る。


音はない。


刃だけが空気を裂く。


エルナは振り返らない。


半歩踏み込み、体を沈める。


背後に回った影の喉を、逆手の短刀で払う。


返す動作で、肘打ち。


骨の砕ける音。


倒れる前に、もう次が来る。


レイナの矢が走る。


放った瞬間、風の精霊が乗る。


軌道が曲がる。


屋根の上の狙撃を、正確に射抜く。


続けざまに三射。


矢は“狙う”というより、“探す”ように飛ぶ。


隠れた気配を引きずり出す。


ミラは一歩引く。


支援魔法が展開する。


淡い光がエルナの脚に絡む。


加速。


反応速度が一段上がる。


同時に、鈍器が振り抜かれる。


重装兵の顎を、横から叩き砕く。


骨ではない。魔力障壁を。


衝撃を通すための打撃。


魔族の兵が一斉に押し寄せる。


数で潰す気だ。


「押される?」


レイナが問う。


「まだ」


エルナは剣を抜く。


銀光が走る。


正面の三体を、まとめて断つ。


だが数は減らない。


城壁の影から、さらに出てくる。


ミラが小さく息を吐く。


「これは……歓迎というより、足止めね」


エルナも気づいている。


本命は、奥にいる。


ここで消耗させる算段。


レイナが弓を下げる。


両手を広げる。


「少し派手にいくわよ」


風が巻く。


精霊が集まる。


渦が生まれ、前方を押し広げる。


魔族の隊列が乱れる。


「今!」


エルナが突っ込む。


斬撃。蹴り。体術。


流れるように切り替わる。


今までの全ての経験が役に立つ。


一つの動きに縛られない。


だが。


空気が、歪んだ。


足元に、黒い紋様が広がる。


レイナの瞳が揺れる。


「――アレン!」


地面から伸びる魔法陣。


転移系。


その中心にいるのは――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ