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世界を✕✕まで。  作者: 八束 燕
プロローグ
6/10

五話

あの華奢な女の子が隊長なのか。

世の中見た目じゃ分からないな……。


来た道をゆったりと戻りながら、会話を続ける。

「そういえば、俺の呼び名、決めてくれたんだよな?」

「何になったんだっけ?」


「あぁ!連翹レンギョウだよ!この辺りに植えてある街路樹の名前からとってみたんだ〜」

「響きが格好良くて良い感じじゃない?」


この男センスあるな…!普通にかっこいいと思ってしまった。

「連翹か!いいな!!」

「ありがとな!」


モノクルの男は少し驚いたように目を瞠った後、少し照れたように、

「どぉいたしまして!」

はにかみながら応えてくれた。


歩きながらそんな会話をしていると、

俺の腕の中に居た黒い毛玉がソワソワし始める。

「名前……。いいですね!」

キラキラとした目で俺のことを見上げる。

「ぼくも、欲しいなぁ…!」


そうだよな、うん。

「黒いからクロとかどうだ?」


「ぇっ…。」

両耳がしゅん…と数センチだけ重力に負ける。


「流石に安直過ぎだと思うよ……。」

モノクルの青年は子猫には同情の目を、俺には少し引いているような目線を交互に送る。


え、分かりやすくて良くないか??

だめか……?

お気に召して頂けなかったようなので、他のを考えようと改めて子猫を見つめる。


黒くてふわふわな少し長めの毛。長毛とまではいかないまでも猫の中では長めの部類だろう。

三角の耳はたまにピコっと上下する。

ふと、疑問が頭に浮かんだ。

「そういえばお前さん、オスなのか?メスなのか??」


「ぼくは、おとこのこですよ〜!」

とのんびり応えた。


「男の子かぁ。なら俺と一緒だな!」


「いっしょですね〜。」

俺らはニコニコしながら顔を合わせる。

歩きながらさらに観察をしてみる。

光に当たると黄金に輝いて見える眼は嬉しそうに細められている。

あ、でも改めて見ると黄っていうより橙に近く感じる。

夕焼けを少し切り取って溶かし込んだような柔らかく暖い色合いだ。

まるで────


「……琥珀コハク。」


「!!」

呟いた瞬間。

耳がピンとなり、細められていた眼は見開かれた。

ぱあぁぁ!と表情が明るくなり、

「それがいいです!」

と声を上げた。その勢いに思わず歩いていた足が止まる。


「じゃ、今日からお前はコハクだ!よろしくなコハク!」


「はい!よろしくお願いします!」

無事に名前が決定した。気に入って貰えたようで何よりだ。


横で様子を見ていた青年が

「───。」

何か小さく呟いたような気がしたが、俺には聞き取れなかった。


「ん?今何か言ったか?」


「あぁ…隊長が見えるとこまで戻ってきたよって伝えたかったんだぁ〜。」

ほら、と前方を指さしながら目線を向ける。


指された方を見ると、団子屋の店先に長椅子に座って団子を頬張っている隊長と呼ばれる少女と、行儀よく座っている綺麗な毛並みの大きな白い狼が並んでいた。


「あ!隊長ずる〜い!」

僕も食べたいんだけどぉ!と言いながら隣にいた青年は足早に駆けて行った。

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